2007年以降、日本企業の事業承継では、親族内よりも第三者への承継が多くなっているそうです。
これは2014年度版の中小企業白書に掲載されている統計情報で、2012年では親族内承継が約40%、内部昇格・外部招へい・買収を合計した第三者への承継が約60%となっていると報じています。
ちなみに25年前は親族内承継が約65%であったことから、親族内承継が大幅に減少していることがわかり、それに代り内部昇格と外部招へいが増加しています。
また、同白書では、中規模企業の90%以上は後継者の育成に3年以上が必要、としており、外部招へいの場合においても社外の第三者の人材に自社での就労期間として3年以上を求める企業が全体の約75%に達していることも報じています。
つまり、企業の事業承継には相応な準備を要し、慎重に進める必要があると認識されているのです。
一方、第三者承継の一つの形態である買収では、スピードが求められることが多く、殆どのケースで相談が始まって概ね半年以内に完了します。
では、この買収の場合、本来、3年以上必要とされている事業承継の準備をどのようにしているのでしょうか。
買収の場合、一般的に、その準備期間において様々な切り口からデューデリジェンス(DD)という企業調査が行われます。
DDは、企業価値(買収価格)を検討するという目的もありますが、真の目的は事業リスクを徹底的に分析することです。
DDには、事業・財務・税務・法務・人事・IT・設備等の切り口があり、それぞれの事例に適した調査が選択して行われます。
これらの調査は専門性が高い場合、外部専門家を登用する場合もありますが、外部専門家と相談しながら企業が自力で調査する場合もあります。
DDで重要なのは、買収者が主体的に事業リスクを網羅的に把握し、何が経営課題なのか、その経営課題の解決策はどうあるべきなのかを事前に把握することであるといえるのです。
この事業リスクの把握は、買収に限らず親族内承継・内部昇格・外部招へいにおいても有効な取組みであるといえ、事業承継を円滑かつ早期に実現させる一つの手段になりえます。
事業承継に着手するときは、承継者および承継候補者がDDの視点で、事業リスクを再点検されてはいかがでしょうか。
アタックス流の事業承継については当社HPをご覧ください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役社長
中小企業診断士 池ヶ谷 穣次 - 1993年 静岡県立大学卒。MBA。中堅中小企業の経営管理制度・管理会計制度構築サポート、事業再生サポート、財務・事業デューデリジェンス業務、M&Aサポート、株式公開支援、月次決算支援業務等に従事。システムエンジニア時代に得たシステム思考を応用し、経営者・経理責任者の参謀役として活躍中。
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