国税庁は7月3日に、平成29年分の路線価を公表しました。路線価は、土地の評価額を算出するにあたって、1平方メートル あたりの価格を決めたものです。
平成29年1月1日から12月31日までの相続や贈与の場合にこの価格で評価し課税するというものですが、売買等の取引でも参考とされる価格です。(路線価は、実勢取引価格の約80%の価格に設定されているようです)
今年、日本で一番高い路線価は、東京都中央区銀座5丁目銀座中央通りで、1平方メートルあたり、4,032万円で、昨年の3,200万円から26%の上昇となりました。 この場所は32年連続で全国首位となったほか、過去路線価の最高額であった平成4年分の3,650万円も超えた価格となりました。平成4年分の価格は前年までのバブル経済の影響を受けたもので、バブル期を超えた価格がついたことになります。
他の地区の最高価格をみますと、大阪国税局では、大阪府北区角田町(御堂筋)の1,176万円(前年1,016万円)で15.7%の上昇、名古屋国税局では、名古屋市中村区名駅1丁目(名駅通り)の880万円(前年840万円)で4.8%の上昇でした。
東京の価格は、大阪の3.4倍、名古屋の4.5倍であり、かつ、東京国税局管内の税務署の最高額で大阪を超える署は6署、ほぼ同じところは2署あります。 やはり東京の土地の価格はダントツに高額だといえます。
しかし、都市部以外では緩やかな上昇か停滞、むしろ下落しているところが数多くあり、不動産の格差はますます広がっている模様です。 東京の土地が値上がりしている理由として、2020年開催の東京オリンピック関連の需要や低金利が続き不動産向け融資が高水準であった事等の要因が挙げられます。結果として投機的な要因もあるように感じます。
しかし日本の人口減からくるマーケットの縮小から、今後土地の需要は限られると見られ、高騰した不動産はバブル崩壊の時と同じ道をたどることがあることも警戒しておく必要があります。
また路線価は、土地等の価格算定のために用いられるものですので、非公開会社の株価算定(純資産方式の場合)においても、会社が保有する土地があればその価格を評価額として算定を行います。 つまり昨年と今年と全く同じ資産を所有していたとしても、土地の値上がり部分は株価にも影響することとなります。
事業承継のうち、財産を承継する場合は、自社の株式対策は必須です。贈与する場合、子供に売却する場合、いろいろな手法を組み合わせて行うことになりますが、このように土地価格の上昇という伏兵もありますので、計画を毎年見直して着実に実行することが大切だと考えます。
なお、自社株の承継については、7/14の記事にもう少し詳しく記載がありますので、是非ご参考にしてください。
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
- 1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
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