12月14日に平成30年度税制改正大綱が公表され一週間が経ちました。この間、経営者のみなさまから「事業承継税制」について非常に多くのお問い合わせをいただいておりますので、「大廃業時代の歯止めとなるか?~2018年度税制改正の事業承継税制」でも触れましたが、本日は改めて事業承継税制の改正内容をお伝えしたいと思います。
中堅中小企業の経営者にとって、事業承継における自社株対策は常に頭痛の種ですね。 最近の景気回復から業績がよく、さらに都心部では土地の値上がり等で自社の株価が益々高額になっており、後継者がその株を贈与や相続で引き継ぐには相当高額な相続税(贈与税)を覚悟しなければなりません。
大綱では、「事業承継税制の特例の創設等」として、株式を引き継ぐにあたり相続税等の支払いをなくす(正しくは納税の猶予)制度を打ち出しています。 この事業承継税制は、平成21年から創設されている制度ですが、適用の要件が厳しく使い勝手の悪い法制でした。 数回改正を行って使いやすいものとなってきましたが、今回の改正は、「後継者が承継する自社株についての税金を全く払わない!?」といった、かなり思い切った内容となっています。
今回の改正では、猶予の幅と後継者の選択肢が広がり、納税猶予が外れるリスクと納税額の負担感が減少されています。 この特例は、平成39年12月までの10年間の特例措置ではありますが、その適用には、平成30年4月から平成35年3月までの5年間の間に事業承継計画を各都道府県に提出する必要があります。 この5年の間に、後継者の選定・教育を含め現状把握、課題等を検討し承継計画をどう進めていくかが重要なポイントとなります。 どのように活用すべきか、弊社も社長様及び後継者様と一緒に取り組みたいと考えます。
【主な改正の内容】
1.納税猶予対象株式
株式総数の2/3まで
↓
取得した全ての株式
2.納税猶予税額
対象株式に係る相続税の80%
↓
100%
3.雇用確保要件
一定期間(5年間)の雇用平均80%を下回ると打ち切り
↓
平均80%を下回っても継続できる。
(都道府県に理由記載の書類提出)
4.先代経営者の要件
代表者1名からの承継
↓
複数人(代表者以外含む)からの承継
5.後継者の人数
代表権者1名
↓
代表権者3名まで
6.株式の譲渡・合併・解散の場合の納税
一定の事由が発生した場合は、一部免除等
事業承継税制の利用にあたっての注意点については、「事業承継税制の落とし穴~適用は慎重に!」をご確認ください。
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筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
- 1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
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