田辺三菱製薬の製造子会社が医療用医薬品の品質試験の一部を実施しないまま出荷するという不祥事が発覚した。田辺三菱製薬はご存知のとおり、田辺製薬など4社が事業統合して出来た会社である。
安全性の面から問題であることは言うまでもないが、ここでは、記事でも指摘している「4社合併後も子会社間の人事交流はほとんどなく、経営のチェック機能が働きにくかったことが背景のひとつ」という点から取り上げてみたい。
例えばライバル企業同士が合併するとしよう。この合併で企業規模は拡大し、売上も利益も増加する、あるいは経費削減も期待できるだろう。利益を1社1億円出していれば、合併後の会社は2億円の会社になるというわけだ。
短期的にはこの通りだが、経営統合の真の目的は、経営資源の効率化・合理化をはかること、市場での競争力あるいはシェアを高めることにあるはずだ。そのためには、中長期的な視点を持ちながら経営統合の目的を実現するための成功要因を見極める必要がある。その要因の一つと考えられるのが「組織風土の融合」である。
ある調査によれば、経営統合後において最も達成できていない項目が「組織風土の融合」であり、「組織風土の融合」が未達成の場合には統合の成功確率が低くなるという結果が出ている。推測になるが、田辺三菱製薬も既成のセクショナリズムを打破できず、もっとも重要な「組織風土の融合」が進まなかったのではないだろうか。
今後、市場規模の縮小や競争の激化で、中堅中小企業においても経営統合により生き残りを目指すケースが増加するのではないかと思う。また、事業継承を目的とする経営統合もありえるだろう。いずれにしてもその目的を完遂するための成功要因を押さえていくことが重要になる。
<参考記事>
「田辺三菱子会社、一部試験実施せず」2011年1月27日(木)日本経済新聞 朝刊
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 磯竹 克人
- 1987年 名古屋市立大学卒。税務・会計の業務を中心に数多くのクライアントに対する指導実績を持ち、親切で丁寧な指導が厚い信頼を得ている。現在は、事業再構築支援、事業承継支援、資本政策支援などを中心にクライアントの問題解決にあたっている。
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