相続税対策による孫の養子縁組にかかる最高裁の判決が出ました。
当事者間に縁組をする意思がないとして、養子縁組の有効性が争われましたが、節税目的の養子縁組であっても直ちに無効とは言えないとする判断が下りました。
孫などと養子縁組すると、その孫は法定相続人になります。法定相続人が増えることで、相続税を計算する際の遺産にかかる基礎控除額が増加することなどにより、相続税の節税効果を得ることができます。 今回の最高裁判例を受けて、相続税対策の有効な手段のひとつとして、養子縁組が活用されるケースもさらに増えるのではないかと思います。
一方で、相続税は、中小企業における事業承継、とくに財産の承継と大いに関係してきます。 中小企業経営者にとって自社株は会社を経営するために必要不可欠なものですが、相続税の課税対象となる財産でもあります。 財務内容や業績好調の会社ほど自社株の評価は高くその他の財産と相まって、大きな相続税がかかることになります。
中小企業の事業承継を促進するため、ここ最近の税制は、これをバックアップする方向で見直しされてきました。 2017年度の税制改正においても、贈与税の納税猶予制度のハードルを下げるなど、自社株承継にかかるリスク軽減が講じられています。
ただ、中小企業経営者の財産の承継は総合的な視点で取り組まなければなりません。 相続対策として、遺産分割対策、納税資金対策、財産軽減対策、自社株対策として、シェア(持株割合)対策、株価対策となりますが、これらは相互に影響し合うところがあるからです。 そこで中小企業経営における財産の承継を進めるうえで、次のような手順・進め方を意識されることをお勧めします。
第1段階
自社株も含め、経営者の財産の全体像を把握します。この際、自社株の評価額や財産総額を試算するとともに、2次相続まで含めた相続税シミュレーションを行います。
第2段階
財産の全体像から読み取れる課題を抽出します。後継者と他の子どもらに財産をどう分割すべきか、納税資金は確保できるか、会社の経営に支障を及ぼす株主構成になっていないかなどです。
第3段階
抽出した課題をどう解決すべきか検討します。そして、この解決策の検討にあたっては、遺言書の作成や、養子縁組、納税猶予制度などさまざまな角度から最適な解決策を立てる必要があります。
第4段階
決定した解決策を実行していきます。各種手続きなどを進めていきますが、税制改正など新たな情報をもとに軌道修正する場合もあります。
いま中小企業経営者の年齢層のピークは66歳に達しています。それでいて、平均引退年齢は70歳前後です。勇退を考える時期になってから、財産の承継や相続のことを検討するのではなく、早めに取り組むことがとても重要になってきます。ぜひ、上記の手順・進め方を参考に、総合的・計画的な対策を検討いただければと思います。
アタックス税理士法人(東京・名古屋・大阪)では、税務顧問業務だけでなく、皆様の会社経営の重要テーマである財産承継も一緒に検討してまいります。
お気軽にこちらからご相談ください。
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 磯竹 克人
- 1987年 名古屋市立大学卒。税務・会計の業務を中心に数多くのクライアントに対する指導実績を持ち、親切で丁寧な指導が厚い信頼を得ている。現在は、事業再構築支援、事業承継支援、資本政策支援などを中心にクライアントの問題解決にあたっている。
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