鈴木修会長の経営承継~スズキの今後は吉か凶か?

事業承継

終戦後、ここまで日本経済を発展させた立役者の経営者たちが、次々と高齢化してきている。スズキの鈴木修会長兼社長(以下、修会長)もその一人だ。

そういった経営者たちは通常60歳代に入ると後継体制を考え始め、遅くとも70歳までには社長を後継者に任せ自分自身は会長に就任するケースが多い。70歳代、まして80歳代に入っても社長を譲らないケースは、後継者としての適任者が見つからないか、何らかの特殊事情があるようだ。

修会長のケースは、後継候補者が若かったことから60歳代では承継できなかったようであり、この特殊事情に当てはまる。しかも、後継者と目していた経済産業省出身で娘婿の小野浩孝専務執行役員が52歳の若さで急逝したことから、78歳という高齢で社長に復帰せざるを得なかったという、もう一つの特殊事情もある。

その修会長も、終に81歳になった。本年4月1日の記者会見が面白い。「私一人で会社全体を見てきたといううぬぼれがあったが、一人でコントロールできる組織ではなくなっていることに気づいた」と言うのだ。

続けて、「これまでタイミングを逸してきたが、ここらへんで権限委譲をやってみようと思った」と。「大震災の影響で落ち込んだ業績を上向かせるのは私の責任。ここで後継に道を譲るのは『敵前逃亡』だ」と息巻く。81歳とは思えない元気さだ。

今回、修会長が採った後継体制は、自分を除く4人の取締役(うち一人は修氏の長男)による合議組織だ。ここでは、各部門の検討課題を集約し、経営全般の方向性を討議するという。

その中核的な役割を担うのが長男の鈴木取締役が室長に就任する経営企画室である。明らかに、当初後継者と目してこなかった長男を後継者としてほぼ決定したに違いない。彼を中心とする、集団指導体制を引くことに決着したようだ。

事業承継にはいろいろなケースがある。後継者の突然の急逝だってある訳だ。しかし、何があろうとも、事業だけは継続していかなければならない。そこに知恵がいる。ここまで大きくなったスズキが、一体どんな知恵を出して経営を承継していくのか、正に見どころである。

<参考記事>
「スズキ、4取締役で合議組織」
2011年4月2日(土)日本経済新聞 朝刊

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー公認会計士・税理士 西浦 道明
1972年 一橋大学卒。81年 株式会社アタックスを丸山弘昭と共同創業後、90年 今井会計合同事務所(1946年創業)と経営統合し、アタックスグループを結成。「社長の最良の相談相手」をモットーに、中堅中小企業の事業承継、株式公開、企業再生、事業再編、組織改革、M&Aなど、幅広い業務に従事。
現在、アタックスグループのトップとして、 公認会計士、税理士、 中小企業診断士、社会保険労務士、その他スタッフ総勢約160名を率いる。
西浦道明の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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