帝国データバンク社発表の最新のデータでは、後継者不在による事業継続の断念などが要因となった後継者難倒産は2019年に460件(前年比14.7%増)発生しました。
これまで最多であった2013年の411件を6年ぶりに更新しており、事業承継問題の深刻化していることを示唆しています。
このような状況にあるのは、現経営者が日々の経営で精一杯で事業承継について考える余裕がない、または、事業承継について何をどの順番で検討したら良いのか分からないといったことも背景にあるのだと思います。
後継者を決定して終わりではなく、後継者の育成や、諸々の承継準備にも時間がかかることを考えると、承継のハードルは年々上がっていくことになります。
一般的に、事業承継は、現社長から後継者に事業を引き継ぐことを指します。
稀に、事業承継を単なる株の譲渡や相続と捉えている方がいらっしゃいますが、それは大きな間違いです。
本来の事業承継とは
事業承継は、「会社の経営」とともに、その基盤である「自社株」を後継者に承継することです。
自社株や預金、土地といった財産の相続の側面は当然ありますが、それ以上に、たとえば経営理念など目に見えないものや、取引先や従業員に対する責任など、「経営」そのものを幅広く引き継ぐことになります。
つまり、事業承継は、「経営の承継」と「財産の承継」が密接に関係しているなかで、バランスよく検討しながら進めていかなければなりません。
中堅中小企業の場合、多くは会社の所有と経営が一体であり、社長本人に大きく依存しています。
しかも、これまで事業承継に関する議論の多くは、財産や税務的な実務・手続き的な「財産の承継」でした。
「経営の承継」については、あまり論じられていないように感じています。
そこで、経営を承継する上で特に重要なこと2つについて触れておきたいと思います。
後継者の選定と育成
第1に、後継者の選定と育成です。
後継者には社長としての資質と覚悟のあるベストな人財を選ぶ必要があります。
とは言っても、最初からすべてを兼ね備えている後継者はごく僅かです。後継者に高い経営力が身に付くよう育成しなければなりません。
特に創業者の想いや、創業者の持つ高い熱量を承継し、後継者が当事者意識を高めて事業に当たることが重要です。
極端に言うと、後継者は事業を生むためのエネルギーや苦しみを自らが経験していないことが多いため、二代目以降の後継者は事業を他人事として軽く考えてしまう危険性があります。
これでは、事業に対して受け身の姿勢となってしまい、仕事の責任を回避してしまいがちです。
そうならないためにも、経営承継を、組織を常に変化する環境に適合させるべくイノベーションを起こすチャンスとしていかなければなりません。
事業承継のプロセスを通じて、本業内での新事業立ち上げや事業ドメインの再構築など、後継者自らが、熱量をもって取り組める場を準備する。こうした取組みによって、当事者意識を高めていくことも後継者育成においては重要です。
会社の環境整備を行う
第2に、事業承継を行うための環境整備です。
現社長だからこそ今の経営スタイルが成り立っている、という会社が多いのも現実です。
したがって、承継後の経営の仕組み(例えば、経営理念やビジョンの擦り合わせ、ビジネスモデルの変革、ミドルアップダウン経営への移行など)を意識して整備していかなければなりません。
このことは、会社の事業そのものがどのステージにあるのかによって影響されます。
例えば、会社の事業が成長期にある場合、承継プロセスに時間を要してしまうと市場シェアを取りこぼしてしまうかもしれません。
あるいは、会社の事業が衰退期にある場合、成長期や安定期と異なり、後継者は、企業存続のために、早々に前経営者の方針を転換するような大きなエネルギーが求められるかもしれません。
このように、一括りに事業承継といっても、承継を控えた組織が置かれている状況に応じて、対応策も変わってくることを、承継する側、される側双方で認識しておく必要があります。
アタックスグループでは、後継社長の育成機関として「アタックス社長塾」を開講しております。環境変化の激しいこの時代をたくましく生き抜くために、後継者が必ず身につけるべき要素を長年にわたる経営伴走の経験をもとに体系化し、成功のセオリーとして完成させました。
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