2021年の経営者の平均年齢は、調査を開始した2009年以降で最高の62.77歳です。
毎年、経営者の平均年齢は上昇し続けている一方、後継者不在企業の割合は59.9%とここ数年は減少傾向にあります。(いずれも東京商工リサーチ調べ)
これらのことから事業承継を実施した企業と実施していない企業にハッキリ分かれてきていると見られます。
後継者の抱える悩みや葛藤
先日、日経ビジネスで事業承継に関する次のような記事がありました。
■若手アトツギ調査
事業承継「30代で」が8割 親の経営「危うい」
これは現経営者ではなく後継者を対象にした調査で、大変興味深い内容でしたので一部をご紹介いたします。
まず、「事業承継をするかどうかについて検討する上で重要なポイント」という質問に対し、最も多かった回答が「事業の将来性」でした。
次いで「家業以外のキャリアの選択肢との比較」、そして「自身の経営者としての資質」。
これらの回答からは、“たまたま”事業を営む家庭に生まれただけである、という認識のもと、自身の経営者の資質や適性についてシビアに見ている様子が伺えます。
また、「事業を引き継ぐにあたって苦労しそうな(した)こと」という質問については、最も多かった回答が「事業の将来性」で、次いで「自身の経営者としての資質」、「既存の社員の理解」となりました。
これらの結果から、後継者は事業承継をする前後に関わらず、自社の「事業の将来性」や「自身の経営者としての資質」に対して高い課題意識を持っていることが分かりました。
そこで、今回は、こうした後継者の課題意識について、頭を整理するための考え方をお伝えしたいと思います。
引き継いだ商品・サービスの「価値」とは?
私は、社長の後継者や右腕左腕となる経営幹部(候補)に対する経営塾「アタックス社長塾」を通して経営者の育成支援を行っています。
そこでは、経営者に必要な知識・ノウハウや思考・スキルの習得を目指しているのですが、プログラムの集大成として受講生に策定いただくのが「価値創造計画」という中長期経営計画です。
この計画の中で、自社の事業に対して「お客様」と「提供価値」を定義するのですが、この部分に受講生の多くが頭を悩ませています。
その理由は、先代から引き継いだ事業の多くは取引先と商品・サービスが確立されているからです。
新たに「価値を創造」しなければいけないと言われても何を変えれば……と戸惑うケースが多いのです。
さて、「お客様」と「提供価値」を考える際、注意しなければいけないポイントは、「価値とはお客様の主観で決まるものだ」ということです。
例として、設計から施工までを一気通貫で行う建築会社があるとします。
この会社の提供価値を考えるにあたり、自社の強みである「一気通貫」は価値とは言えません。
「一気通貫」であることが、お客様にとってどのように役に立つのか、あるいは嬉しいことなのか、といった心理的・物理的な側面で理解する必要があります。
通常であれば、設計はデザイナー・設計事務所に、そして施工は施工会社に発注し、進行も自分たちでチェックしていかなければいけないといった多くの手間が発生します。
しかし、それらを「一気通貫」で対応してもらえることは、お客様視点で見ると「楽」ですし、ミスを減らせることによる「安心感」もあります。
さらには「無駄なコストの削減」に繋がるといったことが考えられます。
これらの心理的・物理的にポジティブな要素が、この建築会社が事業活動を通してお客様に提供する「価値」になります。
繰り返しになりますが、「価値」は商品・サービスそのものについているものではありません。
お客様が主観的に見出すものです。
そのことを踏まえると、先代から引き継いだ事業に紐づく商品・サービスに対する「提供価値」は、時代背景に応じて変化するものと考えられます。
お客様のニーズも当然に変化していきますので、「事業の将来性」を考えるうえでも「お客様」と「提供価値」の再定義は必須です。
選ばれる会社にならないといけない
人口減少社会において、お客様からも求職者からも選ばれる会社であることが求められます。
商品・サービスの多様化に伴い差別化が難しくなっているため、機能面ではなく情緒面での違いが、会社を永続させるためのカギとなってきます。
そこで、私たちは「強くて愛される会社」という中堅中小企業にとって理想的なモデルを提唱しています。
「アタックス社長塾」では、受講される社長の後継者や右腕左腕となる経営幹部(候補)の方々に対して「強くて愛される会社」の実現に向けて経営知識やノウハウも含めた様々な情報、そして学びや熟考いただく場を提供しています。
「強くて」というのは財務的に強い、商品・サービスの競争力があって強い、そして社員力があって強いという3点で、「愛される」というのは会社に対して、社員から、取引先や協力会社から、お客様から、地域社会の方々から大事だと思ってもらえること。
これら2つの要素を実現できている会社を「強くて愛される会社」と定義しています。
特に、「愛される」という要素は、社員の心理的安全性を担保する上でも見逃せません。
「愛される」という観点は、これからの会社を担う社長の後継者や右腕左腕となる経営幹部(候補)の方々には「経営者の資質」として持っていただきたいと強く思います。
「アタックス社長塾」は、「強くて愛される会社」の「あり方」と「つくり方」を1年間かけてじっくりと学べる日本で唯一の学びの場です。
多様な経営者とディスカッションすることで、自社が目指す姿や課題を整理することが出来ます。
興味・関心をお持ちの経営者様は、アタックス社長塾HPを是非ご覧ください。
筆者紹介
- アタックス社長塾 プログラムディレクター 中小企業診断士 長谷川 博紀
- 大学院修了後、大手化粧品メーカーにて商品開発をはじめ経営企画や戦略策定業務などに従事。また、現場の販売員への指導育成にも携わり、有力販売店へと育成した実績を持つ。 2018年に アタックスに入社。アタックス参画後は、主に後継経営者育成のための「アタックス社長塾」のプログラム・ディレクターとして、複数の現場経験を活かし、幅広く経営者の育成支援を行っている。大阪市立大学大学院 工学研究科修了。