東京商工会議所において昨年7月から8月に実施した「事業承継の実態に関するアンケート調査」が今年の1月に公表されましたが、その中でとても興味深い結果を見つけました。
後継者が30代で事業を承継した企業の57%が、事業承継後に業績を好転させているのです。
ほぼ横ばいが33%ありますので、これを合わせると、実に90%が事業承継後の業績が横ばい以上です。
業績が悪くなった企業は10%しかありません。
アンケートの結果から見れば、後継者が30代のうちに事業承継することが会社や事業にとって最適になる可能性が高いと言えます。
そして、事業承継後に業績が良くなった企業では、承継後に、新たな販路開拓・取引先拡大、新商品開発・新サービスの開発、中期計画や事業計画の策定、経営理念等の明確化など新たな取り組みを行っています。
先代経営者のやり方から変えていない企業は圧倒的に少ないというわけです。
社長の平均年齢が59.5歳と過去最高を更新したとか、60代の経営者の約7割で後継者を決定していないとか、現社長に関する調査結果はよく目にします。
しかし、30代の後継経営者が新たな挑戦を行い、事業の状況を好転させているといった調査結果はあまり目にすることがありませんでした。
事業承継の準備に取り組みたい経営者や今まさに事業承継を進めようとしている経営者は、大いに参考にされると良いでしょう。
先日、私どものクライアントであるX社の取締役会に出席しました。
後継社長が事業を継いで3期目が過ぎようとしています。
今期の売上見込みや現在の受注状況が確認されましたが、売上予測、粗利益予測、受注見込み額ともに、ここ数年でもっとも好調な内容でした。
もちろん外部環境によるところもありますが、取締役会における後継社長のリーダーシップを含め、X社の第2創業が順調に推移している感触を受けました。
事業承継には、後継者の選定・育成から自社株承継や経営の仕組みの見直しなど、取り組まなければならないことがたくさんありますが、
次の2つのことを十分に頭に置いたうえで進めることが重要です。
第1に、現経営者ご自身のゴール設定です。
事業を永続させたいと考えるのであれば、自らがどのようなプロセスで退いていくのか、後継者にいつまでに社長のイスと自社株をバトンタッチするかということが重要です。これがゴール設定という意味です。
それらを曖昧にしたまま、成り行きに任せていては、最適な時期を逃すばかりか、いつまで経っても目途が付かないということになってしまいます。
第2に、後継者が成長する場の設定です。
30代の後継経営者が業績を好転させていることは、当然ながらいきなり出来るものではありません。
おそらくは、先代が、自ら教育するだけでなく、他社での修行や自社での段階的な業務経験を通じて後継者が成長できる環境づくりしたからこそ良い変革が可能だったのではないでしょうか。
後継者に成長の場を設定するのは現社長の大切な仕事です。
アタックス税理士法人では、自社株など様々な事業承継に関する課題解決のご支援を行っているほか、アタックスグループとして後継者育成のための「アタックス社長塾」を開催しています。
こちらからお気軽にご相談ください。
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 磯竹 克人
- 1987年 名古屋市立大学卒。税務・会計の業務を中心に数多くのクライアントに対する指導実績を持ち、親切で丁寧な指導が厚い信頼を得ている。現在は、事業再構築支援、事業承継支援、資本政策支援などを中心にクライアントの問題解決にあたっている。
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