中小企業基盤整備機構によれば、全国の事業引継ぎ支援センターによせられた中堅・中小企業の事業承継の相談件数は累積で1万7千件にのぼり、成立した件数も800件となったそうです。
事業引継ぎ支援センターとは、中堅・中小企業の事業承継問題の相談にのる公的機関であり、成立した事業承継のうち70%は親族外承継です。
この数字を見ると、積極的にM&Aを推進している機関と言えます。
昨今、経営者の高齢化や後継者不在に伴い、中堅・中小企業でもM&Aが活発に行われています。
一般的にM&Aは、事業規模の拡大や新規事業分野への進出の際に活用されます。
自ら事業を立ち上げるよりもM&Aの方が迅速で時間を買うことができるからです。
しかし、事業承継を目的としたM&Aには、上記に加えて、M&Aを通して双方の事業自体が効率化されるのか、つまり買い手と売り手の間でシナジー効果が発揮できるのかも重要なポイントになります。
中小企業庁より公表された2018年度版中小企業白書では、M&Aを実施した企業としていない企業とで労働生産性の成長率を比較しています。
その結果、M&Aを実施した企業の方がしていない企業に比べて労働生産性が5%程度高いという結果がでています。
中堅・中小企業のM&Aにおいてもシナジー効果が発揮され、事業の効率性向上に効果がでているのです。
M&Aのシナジー効果による効率化は、M&A前に行われるデューデリジェンスという調査を実施して、その効果を予め検討・予測しておくことが一般的です。
このデューデリジェンスは対象となる事業の実態やリスクを把握することが主な目的ですが、M&A後を見越してシナジー効果の有無を判断するためにもM&Aには必要不可欠な手続きであるといえます。
そのデューデリジェンスの中で、効率性向上を目的としたシナジー効果の有無を次の3つの視点で検討します。
(1) 売上高拡大の視点
双方のもつ市場と製品サービス、技術力、保有資産の相互補完の可能性
(2) 変動費率削減の視点
仕入ルートの共通化や量的拡大等による「規模の経済」効果の可能性
(3) 固定費削減・共有化の視点
共通している経費の削減や従業員、バックオフィス機能の共有化等の 「範囲の経済」効果の可能性
中堅・中小企業にとっても事業戦略・事業承継を検討する上でM&Aはごく当たり前に考慮すべき手法の一つになってきています。M&Aを活用して事業拡大を検討される際には、是非、シナジー効果による事業の効率化の視点で検討してみてはいかがでしょうか。
アタックスグループでは、M&Aでいかにシナジー効果による効率化を実現させるのかという視点で中堅・中小企業の皆様のM&Aをサポートしております。M&Aに関するご相談がございましたらお気軽にこちらからご相談ください。
筆者紹介
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株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役社長
中小企業診断士 池ヶ谷 穣次 - 1993年 静岡県立大学卒。MBA。中堅中小企業の経営管理制度・管理会計制度構築サポート、事業再生サポート、財務・事業デューデリジェンス業務、M&Aサポート、株式公開支援、月次決算支援業務等に従事。システムエンジニア時代に得たシステム思考を応用し、経営者・経理責任者の参謀役として活躍中。
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