事業承継の最新動向と成功への道

事業承継の最新動向と成功への道 事業承継

企業の永続性と成長を確保する上で極めて重要な課題である「事業承継」について取り上げます。

近年、中小企業庁の報告でも指摘されているように、経営者の高齢化は依然として深刻であり、事業承継を円滑に進め、生産性・経営力の向上に繋げるための取り組みが不可欠となっています。

多様化する事業承継のカタチ

従来の親族内承継に加え、近年では様々な事業承継の手法が登場しています。

以前、私の時流解説「加速する”脱オーナー化”事業承継の新たな出口戦略事例」でご紹介した事例もその一つです。

これは、「会社の永続」を最優先事項とし、社員に経営を託すという考え方です。

具体的には以下の通りです。

  • 事例1:役員持株会や従業員持株会による全株式の所有
  • 事例2:オーナー家と持株会による部分的な所有、残りを信頼できる第三者が所有
  • 事例3:所有と経営の分離

さらに近年注目されているのが、サーチファンドを活用した事業承継です。

これは、経営者を目指す個人(サーチャー)が投資家の支援を受け、事業承継を希望する企業を買収し、経営者として企業を成長させる仕組みです。

従来のM&Aとは異なり、「企業」ではなく「人」に投資する点が特徴です。

買収前からサーチャーが経営に関与することで、事業承継ニーズへの柔軟な対応が可能となります。

山口銀行をはじめ、十六銀行や愛媛銀行など地方銀行によるサーチファンドへの出資も増加しており、今後の広がりが期待されます。

中小企業M&Aのリスクと対策

M&Aは事業承継の有力な選択肢となりますが、一方で、後継者不在の中小企業を狙った悪質なM&Aも増加しています。

売買代金不払い、連帯保証の未承継、財務内容の虚偽表示など、その手口は巧妙化しており、注意が必要です。

こうした状況を受け、中小企業庁は「中小M&Aガイドライン」を改訂し、手数料の透明化、広告規律の厳格化、利益相反の禁止などを明記しました。

M&Aを検討する際には、ガイドラインの内容を理解し、信頼できる専門家の助言を得ることが重要です。

M&A

事業承継の二軸と時間軸

事業承継を考える際には、「社長という地位の承継」と「経営権としての株式の承継」という二つの軸で検討する必要があります。

さらに、時間軸も考慮した検討も不可欠です。

例えば、後継者がまだ若い場合には一時的に番頭格の社員に経営を委託する、MBOに際してファンドに一時的に株式を保有してもらう、といった選択肢も考えられます。

親族内承継における重要ポイント

親族内承継を選択する場合、自社株の納税が全額猶予される納税猶予の特例措置について、適用を受けるための承継計画の提出期限(令和8年3月31日)があと約1年と迫っていることにも注意が必要です。

また、親族内承継においては、自社株対策(株価対策、シェア対策)に加え、相続対策(納税資金対策、遺産分割対策、財産圧縮対策)も併せて検討することが必須となります。

具体的には、下記の対策を総合的に検討することが重要です。

  • 株価対策:
    株価引き下げによる相続税負担の軽減
  • シェア対策:
    安定した経営を維持するための株式の集約や承継
  • 納税資金対策:
    相続税の納税資金の確保
  • 遺産分割対策:
    相続人間でのトラブル防止のための分割方法の検討
  • 財産圧縮対策:
    相続財産の評価額を圧縮するなど相続税の軽減策の検討

最適な事業承継の形を目指して

事業承継を取り巻く環境は常に変化しています。

定番であった親族内承継にとどまらず、M&Aの活発化、新たなスキームの登場など、最新の情報や手法を常に把握しておく必要があります。

自社にとって最適な事業承継の形は、企業の規模、業種、家族構成、後継者の状況などによって異なります。

来るべき将来を見据え、多角的な視点から検討し、持続的な成長・発展を目指していくことが重要です。

事業継承

本年も、皆様の事業承継を全力でサポートさせていただきます。共に円滑な事業承継を実現し、明るい未来を築いていきましょう。

本年4月に理想的な社長交代を描いた事業承継に関する新刊を出版します。出版に際し、「令和時代の成功する事業承継」というテーマでセミナーを行います。

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▼令和時代の成功する事業承継
2025/05/13(火) 13:00~16:00

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筆者紹介

村井克行

アタックスグループ 代表パートナー
アタックス税理士法人 代表社員 税理士 村井 克行
1987年 南山大学卒。「会計税務の知の集結と事例の体系化」を確立すべく立ち上げた「ナレッジセンター室長」を務めた後、現在は、組織再編や相続対策など、最新の税法・会社法の知識を生かした永続企業のための総合的な支援業務に従事。誠実で緻密な仕事ぶりは多くのオーナー経営者から高い評価を得ている。
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