帝国データバンクから11月13日、「全国 後継者不在企業動向調査(2018年)」の結果が発表されました。
調査は2018年10月時点の同社の企業概要データベース及び信用調査報告書ファイルをもとに、2016年以降の事業承継の実態について分析可能な約27万6,000社(全国・全業種)を対象に後継者の決定状況など後継者問題と事業承継動向について行われたものです。
その結果、2018年の企業の後継者不在率は66.4%で、2017年11月の前年調査時の66.5%からはほぼ横ばいの結果となりました。 昨年10月に経済産業省が公表した試算では、現状のままで推移した場合、2025年までに約650万人の雇用と約22兆円分のGDPが失われる可能性があるとのことです。
※未来投資会議構造改革徹底推進会合(第1回、平成29年10月12日)資料
また、この状況を受けて、昨年、中小企業庁より「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)」というプランが策定されており、様々な支援策が講じられています。
なぜ事業承継は進まないのか?
こうした危機感とは裏腹に、先ほどの「全国後継者不在企業動向調査」結果を見ると、事業承継の準備は遅々として進んでいないようです。その背景には、次のような現経営者の認識があるためと言われています。
(1) 日々の経営で精いっぱい
(2) 何から始めればよいかわからない
(3) 誰に相談すればよいかわからない
この理由をご覧になって、皆さんはどう思われたでしょうか?
私自身、「気が付けば日々が過ぎてしまっていた」70代~80代の老経営者の方々によくお会いします。 そうした方々は、一様に非常にお元気で、事業承継に関する危機感がなかなか経営者本人に醸成されない、ということも共通しています。
ただ、やはり私は「後継者のために、もしくは頑張ってくれている従業員のために次のステージを用意する」ことは現経営者の最大最後の責任であると考えます。
もっといえば後継者候補の方や、従業員の皆様への最低限の礼儀作法、と考えてもよいかもしれません。
事業承継はどのように進めればよいのか?
昨年、中小企業庁が策定した「事業承継マニュアル」では、事業承継を実行するまでを下記「5つのステップ」に分けて説明しています。
◆ステップ1:
事業承継に向けた準備の必要性の認識
◆ステップ2:
経営状況・経営課題等の把握(見える化)
◆ステップ3:
事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
◆ステップ4:
親族内・従業員承継の場合には、事業承継計画策定
社外承継の場合には、マッチング実施
◆ステップ5:
親族内・従業員承継の場合には、事業承継の実行
社外承継の場合には、M&A等の実行 といった具合です。
中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル」
仮に親族内・従業員承継の場合、後継者の選定期間、そして育成期間を含めれば事業承継には10年超の期間が必要だと考えられます。 もちろんM&A等にも事業価値を高めるための事業の磨き上げに相応の期間を要します。 現経営者の引退年齢を70歳前後と考えると、60歳頃には事業承継の準備を始めておくのがよいのでしょう。
アタックスグループでは、事業承継計画書の策定や自社株などの事業用財産の承継のほか、事業承継に関する様々なお悩みに対し、課題整理から解決のためのご支援を行っています。
こちらからお気軽にご相談ください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員
税理士 浦井 耕 - TFP(現山田)コンサルティンググループ、中小会計事務所を経て株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングへ入社。ハンズオンによる管理制度構築支援や多数の企業再生支援に従事。2011年の東日本大震災以降は特に宮城県内の被災企業の再生支援を多く手掛ける。
- 浦井 耕の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。