承継までに後継者が積むべき3つの経験とは?

事業承継

後継者の育成は後回しにされやすがち

2023年はコーポレートガバナンス違反、コンプライアンス違反が、多くメディアに取り上げられた年でした。

ファミリー企業において後継者という立場を利用した誤ったマネジメントにより経営危機に陥ったケースもありました。

後継者の育成は時間がかかり成果も見えにくい取り組みのため後回しにされがちです。

先代経営者は「育ってほしい」と言い、後継者は「育ててほしい」と言います。

しかし、経営者に必要なスキルや知識は後継者自ら当然学ぶべきです。

インプットしたことをもとにアウトプットし続けて後継者が「自ら育つ」という覚悟が必要です。

そのためには経営者に必要な経験を積むことです。

つまり、後継者にとって経営承継の成功の鍵は、承継までの「経験の蓄積」にあります。

そこで、後継者が経験を積むべきポイントを3つに整理しお伝えします。

1つ目:現場経験

①複数部門の経験

後継者は、複数部門における現場経験を通じてさまざまな部門の実態をつかんでおく必要があります。

そうすることで組織全体を理解でき、社長になったときに、自社が本当に解決すべき経営課題を適切に設定することが可能になります。

②意思決定の経験

責任ある立場の部門長やチーム長として、意思決定する経験は、後継者にとって不可欠です。

できれば、早いうちから部長以上の立場で、いくつかの事業やプロジェクトの責任者を経験しておくことをお勧めします。

限られたリソースと時間の中で最適な決断を下すことは、社長の仕事そのものです。

決断の数だけ成長でき、決断することで経営者の「覚悟」が生まれてきます。

また、多くの意思決定を経験することで問題解決能力も向上し、戦略的な思考を身につけることができます

同時に、部門内外のコミュニケーションや協力・調整実務も学ぶことができ組織全体を俯瞰できる洞察力を養えます。

2つ目:人事経験

①人材採用の経験

労働者人口が減少し、採用は厳しさを増すばかりです。

そのような状況において、誰を同じバス(会社)に乗せるのかを考え、採用難の現実と向き合い、自らの責任でバスに乗せる人を採用していく経験は必ず積んでおくべきです。

「自社の魅力は何なのか?」「入社してくれる社員に対してわが社はどのような価値を提供できるのか?」「そもそもなぜ採用するのか?」を考え、応募者を募り、入社に向けて動機づけていくことは自社の存在意義や目指す姿を深く考える絶好の機会になります。

また、自ら採用した社員にもっと幸せになって欲しいという願望も強くなり後継者の主体性も高まり後継者自身の成長の原動力にもなります。

②人材育成の経験

後継者の人財育成は、実務的な能力育成よりも、部下の働きがいを高める育成経験が大事です。

育成能力が高い経営者になることで、ポジティブで成長志向の企業文化を創りだし、社員の自律性を引き出すことにも繋がります。

そのためには社員との対話を大事にし社員の価値観や強みを理解しながら、傾聴とフィードバックを繰り返し、社員が輝ける労働環境を整えることが重要です。

このような育成経験を積み社員との信頼関係性を強めることで、スムーズな経営承継が可能となります。

3つ目:経営計画の策定と計画を実行する経験

①経営計画の策定

経営者は方針や計画を立てて「あるべき姿=夢や目標」を社員に示す必要があります。

後継者は自らの責任で事業部の事業計画やプロジェクト計画、あるいは子会社の計画でも十分ですので経営計画を策定する経験は貴重です。

その際に求められることは、「なぜ、この経営計画をやるのか?」「経営計画に取り組むことで何が得られるのか?」「いつまでにどれくらいやるのか?」を考え、メンバーが納得するストーリーを描く事業構想力です。

そのためには後継者自身の内発的な動機から生まれる高い熱量をもって取り組める経営目標と経営課題を設定することが重要です。

②計画を実行する経験

必ず「経営計画策定」と「実行」をセットで考え、粘り強く実行しやり切ることが、後継者が積むべき最も重要な経験となります。

大事なのは、成功・失敗にかかわらず、やると決めたことを最後まであきらめずにやり抜く経験を積み上げることです。

このようなリーダーシップをとる背中を、必ず社員が見ています。 社長や役員も見ています。

この経験は先代社長では教えられないことであり後継者自身の意思で「果敢にチャレンジし自ら育つ」しかないのです。

最後に

筆者は、後継者を育成する「アタックス社長塾」を運営しており、参加者にはいつも次のように伝えています。

後継者とは「次に社長になることが決まっている人」ではなくて、「いつでも社長の代わりが務まる人」です。

後継者は、社長になるずっと前から、現社長の夢や目標を理解し、自らの夢と目標と統合し、「自分が社長ならどう意思決定するか」の訓練を重ねることが必要です。

本コラムをお読みのすべての後継者の皆さんには、これらのことを理解し、積むべき経験を積み将来へ繋いでいただければ幸いです。

アタックスグループでは、「強くて愛される会社」の考え方を体系的に学びながら、自社の「価値創造計画」を策定する経営者育成支援として、「アタックス社長塾」を開講しております。

一人でも多くの「強くて愛される会社」を志す経営者を増やしていくことが、我々アタックスグループの使命であると考えております。

ご関心のある方は、ぜひお問い合わせください。

筆者紹介

アタックスグループ アタックス社長塾 コンサルタント MBA(経営学修士)
小島 健嗣
1979年生まれ。名古屋商科大学ビジネススクール卒。税理士法人、商社勤務を経て、2013年アタックス税理士法人入社。2019年からアタックス社長塾に参画。前職の商社で財務責任者を務めた経験を活かし、経営を財務の面からサポートする社外CFOとして、「いかにすれば可能かを語れ」をモットーに、経営者の戦略的な意思決定を導くことに従事。現在は、中堅中小企業への豊富なコンサルティング業務を通じて培った知識と経験を活かし、アタックス社長塾サブディレクター兼伴走コンサルタントとして活躍中。

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