VUCA時代の事業承継!~後継社長に必要な力とはズバリ「やり切る力」

事業承継

私は「アタックス社長塾」という後継者育成を専門とする部門の企画・運営を行っており、年間およそ50名の「強くて愛される会社」を目指す経営人財と触れ合っています。

受講者が入塾する上で、一番課題を持っている分野は「財務・会計」であり「数字で経営を語りたい」という動機が大きいのですが、それと同レベルで高い関心をもっているのが「社員力」です。

直近の講座アンケートを見ても「人事制度」「教育・育成」「評価制度」など社員力向上のための様々な「仕組み」に関する言葉が多くみられました。

そこで、今回は社員力を発揮するための「仕組み」とその活用において重要なポイントを解説します。

後継者は「仕組み」で対応する

経営者の平均年齢について中小企業白書(2021年度版)を確認すると、2019年には過去最高齢を更新し、経営者の平均年齢は62.16歳となっています。

しかも、一貫して上昇しています。

また、経営者年齢のピーク(最も多い層)については、2000年が「50歳~54歳」だったのに対し、20年後の2020年は「60歳~64歳」「65歳~69歳」「70歳~74歳」の幅広い年代にわたって緩やかな山がみられます。

ここから、単純に経営者が高齢化したのではなく、経営者の事業承継や休業・廃業、M&Aなどによる経営者の交代・引退が、ある程度行われた様子が伺えます。

しかしながら、平均年齢の一貫した上昇を踏まえると、事業承継を実施した企業と実施していない企業とで二極化していることが推察されます。

そのような中で、事業承継を実施した企業の経営者(以下、交代前経営者)の平均年齢を見ると、同族承継では68.9歳、同族承継以外では63.2歳といわゆる「団塊の世代」に続く世代にあたります。

この世代は、日本の高度経済成長の流れに乗って強いリーダーシップやカリスマ性を持って会社を引っ張ることで成長させることができた時代といえます。

特にオーナー企業の場合は良くも悪くも「トップダウン経営」の傾向にあります。

しかし、現代はVUCAの時代、変化が激しく不確実性の高い時代です。

このような時代に事業を譲り受けることになる経営者(以下、交代後経営者)は次のような悩みを抱えます。

「先代と同じようにトップダウンで行けば良いのか…。」
「しかし、自分は先代のようなカリスマ性はない…。」
「社員についてきてもらうためには、社員の声にはしっかり耳を傾けたほうが良いと聞く…。」
「幹部は自分よりも先代の言うことを聞くのではないか…。」

そして、その解の一つが、「仕組み」で組織を動かし、社員を動かすことにあります。

交代後経営者は、自分の経営に対する考え方や想いを「仕組み」に落とし込み、会社を動かすことが必要です。

一番重要なことは「やり切ること」

ところが、一つ注意しなければならないことがあります。

それは、「仕組み」を導入することが「目的化」してしまうということです。

「目的」はあくまでも社員力を発揮させること、そして経営成果を上げることです。

その「手段」として「仕組み」があるわけで、交代後経営者は「どのように運用するか」ということをしっかりと考え、イメージしておく必要があります。

そのために重要なことは「やり切る力」です。

社員が自主的に「トイレ掃除」を行っている企業のことを耳にされた方もあると思います。

この事例の本質的なところは、掃除することを決めたら徹底的に「やり切る」組織風土が、この企業に根付いているということです。

一度「仕組み」を導入して成果が出なかったからといって別の「仕組み」を導入するのではなく、やり切ってみたか、あるいはやり切れる組織風土が自社にあるのか、ということを確認してみてください。

「後継者育成」においては、交代後経営者の経営知識の習得や自社事業の技術・ノウハウについて学ぶことは重要ですが、交代後経営者自身の「やり切る力」を磨くことを忘れてはなりません。

しっかりと「やり切る力」を持っておかなければ、事業を永続させることは難しくなるからです。
(「やり切る力」がない人ほど、「他責」になる傾向があります。)

今回は、「後継者育成で見落としがちな重要なこと」として「やり切る力」の重要性について話をしました。

尚、「アタックス社長塾」では、中堅中小企業の経営者が知っておくべき経営知識の習得はもちろん、長期安定利益を築くための計画策定を研修や個別伴走コンサルティングサービスを通して実践しています。

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筆者紹介

アタックス社長塾 プログラムディレクター 中小企業診断士 長谷川 博紀
大学院修了後、大手化粧品メーカーにて商品開発をはじめ経営企画や戦略策定業務などに従事。また、現場の販売員への指導育成にも携わり、有力販売店へと育成した実績を持つ。 2018年に アタックスに入社。アタックス参画後は、主に後継経営者育成のための「アタックス社長塾」のプログラム・ディレクターとして、複数の現場経験を活かし、幅広く経営者の育成支援を行っている。大阪市立大学大学院 工学研究科修了。

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