「仕事はあるのに人手が足りなくて経営が立ち行かない」
このような企業が、今後増えていくのではないかと懸念しています。
それを裏付けるかのように、「有効求人倍率が23年8ヶ月振りに1.24倍の高水準」とのデータが発表されました。
日本はとうの昔1995年に生産年齢人口(15歳~64歳)がピークアウトしており、今後も少子高齢化が深刻さを増すことは、既に織り込み済みです。
しかし、そこに最近の好況感が加わったことで、新卒採用は完全に売り手市場に転じました。その影響で中小企業の採用環境が厳しさを増しています。
「いい人材を採用する」ことは、会社の未来を決定づける重要なファクターであり、採用努力は絶対に必要です。
しかし一方で、今いる社員をいかに鍛え育て上げるかを、社長自らもっともっと真剣に考えることが必要ではないかと感じています。
11月に入り、新入社員が入社して丸7ヶ月が経過しました。
その会社に“教育力”が備わっているかどうかを確かめるなら、今の時期の新入社員を見れば明白です。
一部の企業で目の当たりにするのは、新入社員研修で目を輝かせ、溌剌と受講していた姿から一転し、マナーや態度・意欲に磨きがかかっているどころか、後退している残念な姿です。
これが事実だとすれば、それはまさしく職場の上司や先輩の指導の結果であり、いくら良い素材を採ったとしても、育成の仕組みの無い会社に、社員の成長はありません。
では、一体どうしたらよいのでしょうか。
最初にすべきことは、「OJTに対する幻想を捨てる」ことではないかと思います。
OJTは、職場内訓練と呼ばれ、職場の先輩、上司が、実務を通じて指導していく方法です。特に中小企業では、社員教育の中核をなしてきたといってもよいと思います。
実務に直結しているため即戦力を育てるには適しており、育成の設備やコストも抑えることができるなど、OJTには多くのメリットがあることは確かですが、「OJTの限界」についても知っておかなくてはなりません。
その限界は2つです。
一つ目は、「OJT指導者が知っていることしか教えられない」
二つ目は、「OJT指導者が育ってきた方法でしか育てられない」
です。
つまり、指導する側の力量が極めて重要であるということです。
競争があまり激しくなく、ビジネスのスピードが緩やかな時代は、経験則で培ったものを教えていれば十分でした。
しかし、今の時代はそれだけでは通用しません。
指導者に求められる難易度が格段にあがり、時間的余裕もない中で、指導者に何の道具(仕組み)も知恵(教育)も与えずに、OJTを任せている状態、これを変えていくことが大切です。
「今いる社員を鍛え育て上げるためにすべきこと」
それは、「仕組み」で指導者を助けることと、「OFFJT教育」で指導者の力量を上げることだと思います。
「社員一人ひとりがその立場に相応しい目標を設定する仕組み」
「社員一人ひとりの仕事の成果を測定する仕組み」
「その結果を本人と面談してフィードバックする仕組み」
このような仕組みを整え回すことで、育成がルーティン化されていくことが理想です。
同時に、指導者である上司には、仕組みが適切に回せるよう、目標設定、評価、面談スキルをOFFJTで体得する機会が不可欠です。
来年度に向けて様々な計画が進むこの時期、「人が育つ“仕組み”と“教育”」について、真剣に議論することからスタートしてください。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス 執行役員 中小企業診断士 北村 信貴子
- 1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー、BCS認定ビジネスコーチ。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
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