大手企業の平成24年春の採用計画は、大卒が前年に比べ13.7%増であり、2桁増は4年ぶりとなるようだ。これは特定の業種に限ったものではなく、製造・非製造とも8割の業種で採用を増やしている。
リーマンショック以後の採用絞込み、団塊世代(昭和22年~24年生)の大量退職に備えることはもちろんのこと、海外展開や新技術を担う人材のニーズも相当強いものと想定され、企業は新たな成長への布石を打ち始めている。
実際、企業収益の海外依存は、主要企業の所在地別利益によると、平成23年3月期ではアジア地域で稼いだ利益が日本国内の利益を上回り過去最高となっており、企業の採用に対する積極姿勢は、将来を見据えた人事戦略の一環といえる。
定期採用は、年次別の人数格差が生じないように平準化する目的があるものの、自社の成長分野への意思を明確にし、それに沿った人材を採用する必要がある。
確かに、採用するにあたって人物を知ることには限界があるので、人柄・頭のキレ・やる気等で判断し、入社してから育てることは現実的である。しかしこれは「使いやすい人材」を採用することに重点が置かれるという危険性がある。
協調性の名の下に敷かれたレールの上を上手に走れる者が活躍できる場は、今後、日本経済とともに縮小していくであろう。海外進出や技術革新の進展に伴い、日本企業であっても、外国人や自由気まま?で有能な技術者、起業家精神あふれる者が企業のキーパーソンとなっていくことが想定される。「使いやすい人材」ではなく、「自ら動く人財」を採用し、育てていくことが人事の重要事項と思われる。
自ら考えチャレンジしていく者こそ、これからの企業価値創造に必要であり、そのために企業は、各々の価値観の統一に欠かせない「企業の意思」を明確にし、企業と社員の信頼とベクトルを合わせられる者をしっかり見極め育てていくことが重要な課題である。
<参考記事>
「大卒採用13.7%増」
2011年6月20日(月)日本経済新聞 朝刊
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
- 1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
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