最近、女性のリーダークラスを対象とした教育研修を依頼される機会が増えてきました。今や、職場における女性社員の比率が全国平均で42.7%を占める時代ですから珍しいことではありません。業種・職種にもよりますが、女性が大活躍している職場が本当に多くなってきたというのが実感です。
教育研修で、経営者が女性リーダーに学んでもらいたい主なテーマは、「マネジメントの基本」や「部下指導スキルの基本」などです。しかし、このテーマをレクチャーする前に必ずといっていいほど「仕事人生三毛作時代」という言葉を伝えています。
平均寿命が延び、100歳以上が5万人を超え、日本は他の先進国に先駆けて超高齢化社会を迎えます。60歳が仕事人生の区切りであった時代は昔のこと。80歳まで経済的にも肉体的にも自立した生活を自己責任で確立しなければならない時代が目の前にきています。
それは、仕事人生を、
20歳~40歳までの、第1ステージ
40歳~60歳までの、第2ステージ
60歳~80歳までの、第3ステージととらえ、
自らのキャリアを自己責任で創り上げていくことが求められることを意味しています。
第3ステージに入っても社会から必要とされ続けるには、たゆまぬ自己研鑽が必要であること言うまでもありません。
特に第1ステージの内に、「私はこの仕事のプロになる」というものを定め、確かな土台と真の実力を身につけることが必要です。明るい兆しが見えてきたといっても決して楽観視できない経済情勢や、長年に渡る賃金水準の下落データを目の当たりにし、自身のキャリアを真剣に考える女性が増えてきているのも事実です。
しかしまだまだ漫然と仕事をし、人任せの仕事人生に甘んじている女性社員がいることも事実です。研修で出会う多くの女性に伝えているのは、 「今一度、自らの仕事人生を真剣に考え、 積極的に市場価値を高める努力をして下さい」ということです。
一方、経営者側も政府の掲げるポジティブ・アクションによって、女性社員の役員登用、全管理者に占める女性管理者の割合を高める目標を設定するだけでなく、キャリアの道筋をしっかりと示すべきです。
その上で本人に選択を迫り、その選択に応じた教育機会を与えることが大切です。これらを実現するには、単なる総合職・一般職というこれまでの選択肢にとどまらず、女性特有の様々なライフイベントを前提としたきめ細かなものでなければなりません。
結婚・出産・育児を経ても管理職を目指すことのできる道筋、いったんキャリアを緩めてコース変更をしても、再び変更できるような柔軟な運用などです。
また単に本人に選択させるだけでなく、上司からみた本人の適性や、本人が気づいていない能力を見極め、控えめで尻込みする女性には、「期待とサポートを伝えて引き上げる」という働きかけが求められます。
つまり、女性社員本人の自覚と、経営者・上司の双方が互いに努力してはじめて、真の女性活用が実現するのです。
筆者紹介
- 株式会社アタックス 執行役員 中小企業診断士 北村 信貴子
- 1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー、BCS認定ビジネスコーチ。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
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