「〇〇部長、そのコミュニケーションスタイル、いつのバージョンですか?」
「変えていないよ。昔からこのスタイルだ。」
「それは古すぎて使い物になりません。最新のソフトをインストールしてください。」
「・・・」
これはパソコンの話ではありません。幹部向け教育研修での例え話です。
一昔前の、職場のほとんどが男性中心で正社員という時代に比べ、現代は正社員、パート社員、子育て中の時短社員、定年後の嘱託社員、アルバイト社員と、雇用形態が実に様々です。
更に最近は女性の社会進出も目覚ましく、平均すると職場の42.6%(平成25年厚労省)に達しています。
今後は、外国人の働き手も増え、障害者雇用に対する社会的要請も高まるなど、単なる働き方の違いにとどまらず、様々な人材が様々な働き方で構成されている職場があたりまえ、という時代になるでしょう。
しかし、これが現場のマネジメントやコミュニケーションを一層難しくしています。
モノカルチャー(単一文化)時代の現場のマネージャーは、マネジメントやコミュニケーションが比較的楽だったと推察します。同質の集合体は共通項が多く、「暗黙に分かりあえる」からです。
そして何よりも、経済環境が好調で、毎年給料が上がり、ポストが用意できた時代は、マネジメントやコミュニケーションが稚拙であっても、さほど問題になりませんでした。
しかし、現代はまったく環境が異なります。
技術やノウハウが拮抗するなかで企業が一歩抜きん出るには、社員一人ひとりの知恵と行動がものをいいます。
いかに社員の能力を引出し、存分に力を発揮してもらえるかにかかっているのです。
その一方でコンプライアンス(法令遵守)の縛りがいっそう厳しくなっており、そこを無視したマネジメントは許されません。 つまり、「時代が変わった」ということです。
マネジメントやコミュニケーションに求められるレベル(バージョン)が上がったといってもよいでしょう。
「うちは、古くからこのソフトです。たとえ世間がバージョンアップしても、お金をかけて新しいソフトは買いません。うちは古いままでいきます。」
これが本物のパソコンの話であれば、こんなことを言う社長はいないでしょう。
しかし、幹部社員のマネジメントやコミュニケーションのバージョンについてはどうでしょうか。
特に経験の長い幹部社員ほど、昔のソフトをいまだに使っているのが実情ではないでしょうか。
しかし、新たなソフトが登場したのであれば、それをインストールするのは至極当然です。
改めて、今の時代に求められるマネジメントとコミュニケーションを定義するならば、組織をゴールに向かって率いる思考と行動であり、部下一人ひとりの特性を見抜き、思い切り活躍できる環境と機会を整える力量といえるでしょう。
そしてそこに不可欠なのは、「対話力」だと思います。
一人ひとりの「個の力」を引き出し、それを「組織の力」へと高めるには、部下を知らなくてはなりません。いえ「人間」というものを知らなければならないと思います。
「人間理解」なくしてこれからのマネジメントは成立しないし、部下と向き合うためのスキルを備えなければ、我流では到底通用しません。
新年度を迎え、この1年間の教育計画を策定中の企業、既に年間の教育計画が決まり、実行に向けて動き出した企業もあるでしょう。
教育の優先順位は企業ごとに異なりますが、時代にあった力量を備えた幹部社員を育てるための教育投資を是非とも優先してください。
それが、強い組織、強い会社をつくる一番の近道です。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス 執行役員 中小企業診断士 北村 信貴子
- 1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー、BCS認定ビジネスコーチ。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
- 北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。