経営者の悩みの種!「人件費」の決め方について

人材育成

今年は、自動車業界や輸出産業を中心に多くの大企業がベースアップ(基本給の底上げ、いわゆるベア)を行い、そうした報道が新聞紙上を賑わせました。

しかし、中堅・中小企業では定期昇給は実行しても、ベアにまで踏み切ったところは殆どなかったようです。

社員のことを考えれば、昨年、消費税率が上昇し、低い昇給率では可処分所得の目減りをカバー出来ないので、積極的にベアを検討して欲しいところですが、一方で、会社のことを考えれば、固定費の上昇に直結しますので、慎重に進めて欲しいと思います。

人件費を決める3つのバランス

筆者は人事コンサルタントとして報酬改革を進める際に「人件費総額はどの様に決めれば良いだろうか?」と質問されることがよくあります。

会社の置かれている状況などによって具体的な検討内容は変わるのですが、一般論として、次の様に回答します。
「人件費予算と、生産体制(業務推進体制)と、給与の世間水準の3つのバランスを考えて、決めなければいけません」

これをもう少し詳しく記述すると、次の通りとなります。

●人件費予算
 ・・・必要利益を得るために経営計画上許容できる額(経営者視点)
●生産体制
 ・・・業務を適切に遂行する為に必要な社員数の確保(管理者視点)
●世間水準
 ・・・安心して生活できる魅力的な報酬水準(社員視点)

世間水準と貴社の報酬水準を比較して、安心して生活できるか、魅力的な報酬になっているかをチェックし、必要な昇給は実行すべきですし、ベアの検討もして欲しいところです。

しかし、昇給やベアを行った結果、人件費予算を超えてしまい赤字になってしまっては最終的に社員の安心には繋がりません。

また、経営計画を達成する為には、ベアで一人当たり報酬額を引き上げるよりも、人数を増やした方が良いかも知れません。

3つのバランスを考慮しながら人件費は決定していく必要があるのです。

ベア検討は賞与や退職金への影響も

ところで、ベアを検討する際には、賞与や退職金への影響についてもチェックが必要です。

賞与や退職金の計算式に、基本給を組み込んでいる会社はたくさんあります。

「ベアを行って月給が上がることは想定していても、賞与や退職金まで上昇するのは想定外だった」
という声を聴くこともあります。

ベアが他の報酬に影響しないよう、
「別テーブル」
「第2基本給」

などを使って基本給に影響されない仕組みに改訂しておくことも必要です。

人件費予算や適正な社員数はどの様に設定すべきか、魅力的な報酬水準としてどこまで支給額を増やせるか、またどの様な支給ルールにするか、具体的に検討することはたくさんありますが、人件費に関する様々な取り決めは、経営者の重要な仕事です。

改めて自社を点検し、経営的にも健全で、かつ組織の活力につながる見直しを実行してください。

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筆者紹介

株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 取締役 永田 健二
1999年 静岡大学卒。中期経営計画策定支援、組織風土分析支援、人事制度構築支援、人事制度運用支援などに従事。新入社員研修、中堅社員研修、管理者研修、各種個別研修など研修講師としても活躍中。
永田健二の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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