話し方の本などを読むと、よく「話し上手は聴き上手」という言葉を目にします。
また、テレビなどでもこの言葉を聞かれたことがあると思います。
では、この言葉には、どういう意味があるのでしょうか?
「話し上手は聴き上手」の意味とは?
辞書を引いてみると、
「本当に話がうまい人は、他人の話を聞くのもうまい。」
と書いてあります。
何気なく読むと、なるほど、と思います。
しかし、この言葉の意味を理解しようとすれば、この説明だけでは、何となくわかったような、わからないような気持ちにもなります。
私は、この言葉を、次のように解釈しています。
話しがうまいと思ってもらうには、聞き手が、話し手の話に、納得し、共感してもらうことが必要です。
そのためには、話し手は、聞き手が考えていることや感じていることに沿って話をしなければなりません。
つまり、聞き手の感情や思考をつかんで、それに沿って話をすることが、話し上手の前提になるわけです。
聞き手の感情や思考をつかむには、当然ながら、まず聞き手の話を聴くしかありません。
まず、相手の話を相手の立場に立って聴いて、相手が何を考え、何を感じているのか、しっかりつかむ。そして、つかんだ相手の感情や思考に沿って話をする。
そうすることで、話し上手になれる、と私は思うのです。
しかしながら、相手の話を聞くということは、実際はなかなか難しいようです。
人間は本来、話したい、という欲望がありますし、相手の考えよりも自分の考えを優先して考えがちだからです。それは日常会話でも端的に表れます。
話し上手な人の会話例
Aさん:「ゴールデンウィークに、北海道に行ってきたんですよ。」
Bさん:「おっ!北海道ですか!いいですね~
でも、まだ寒かったんじゃないですか?」
Aさん:「いやぁ、そうでもなかったですよ。東京より少し寒いくらいかな。」
Bさん:「そうですか~。外国からの観光客がかなり多かったんでしょうね~。」
Aさん:「ええ。海外からの観光客の人を見ない所はなかったですね。」
上の会話は、話が噛み合っていて、Bさんは聴き上手のように思われるかも知れません。
でも、実は、Aさんは北海道で見た景色が素晴らしかった、という話をしたかったとしたら、どうでしょうか?
上の例では、Aさんは景色の話ができていません。従って、Bさんは聴き上手とは言えませんね。
これは、Bさんが次々に質問という形で話をしてしまっていることに原因があります。
聴き上手になるためには、話の方向性が見えるまで、自分の考えで話を進めないことが肝心です。
Aさん:「ゴールデンウィークに、北海道に行ってきたんですよ。」
Bさん:「北海道に行ってきたんですか!いいですね~どうでしたか?」
Aさん:「いやぁ、実によかったですよ。景色がとても素晴らしかったんです!」
Bさん:「ほぉ、そうですか~。景色が素晴らしかったんですね。」
Aさん:「そう!特にね、~~~」
Aさんがどんな話をしたいのか、ある程度わかるまでは、Bさんは、殆どオウム返しのような会話でよいのです。
オウム返しは、相手の話を聴いていないように思われますが、話をしたい相手には全く気にならないものです。
この例では、話を聴くだけで終わっていますが、Bさんは、オウム返しなどで相手の考えや感情をつかんでから、自分の話をすれば話が噛み合います。
まず相手の話を、相手の立場に立って聴き切り、それから自分の話をする。
これはビジネスなどで相手を説得する場合でも重要なことです。
ぜひ、話をする際には、まず、相手の話をしっかり聴くことを意識してみてください。
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筆者紹介
- 株式会社日本話し方センター 代表取締役社長 中小企業診断士
横田 章剛 - 1983年 神戸大学卒。メガバンクで、国内・海外の勘定系システムの開発、ガバナンス業務、銀行決算・銀行税務の取り纏めなどに従事。2007年 アタックスに入社し、グループ全体の経営企画、総務、経理、法務等の間接部門を統括。2016年、日本話し方センターの代表取締役社長に就任。研修等で話し方の指導に従事。