世界中の経済を揺るがし、人類の生命と文化的な生活を一瞬のうちに蒸発させた憎き新型コロナウイルス。
その存在を激しく憎む一方で、生存のために変異株へと自らを変化させて生き延びようとする、そのしぶとさと適応力に「敵もさる者」といわざるを得ません。
一体いつになったら、人類が新型コロナウイルスを克服したといえる日が来るのでしょうか?
一方で、今や世界中でワクチン接種が進み、各国がその効果に手応えを感じている状況にあるのは朗報です。
国内においても、地方自治体はもとより、企業では職場接種が始まるなど加速度的に接種率が上がっています。
この調子でいくと、今月の緊急事態宣言の解除に続いて、オリンピック開催に向けた段取りが、本格化していくことでしょう。
更に、今月10日の米連邦準備理事会(FRB)が発表した内容によると、米国の3月末の家計(非営利団体含む)の金融資産は109兆ドルと、2020年末より4%増え、過去最高を更新したと報告しています。
株高で富裕層を中心に資産の価値が膨らんだほか、コロナ対策として現金給付の恩恵を受けた中低所得者の資産も増えて、消費回復の原動力になっているようです。
それに伴って、米国の消費支出は、3月4月と過去最多を更新。米国経済の本格的な再開と、強い消費が予想され、それが世界経済をも牽引していくことに期待が高まっています。
変化の激しい時代に勝つためには
このようななか、企業も個人も、ビジネスが新たな局面を迎えつつあることを自覚することが必要です。
新型コロナウイルスがもたらした不可逆的な変化が、企業と個人に突きつけているもの、それは「自己変革」です。
日本では、新型コロナウイルスが発生する前から、「働き方改革関連法」が制定され、この5年間、毎年のように関連法が施行されました。
今後も重要な法律の施行が目白押しです。
いずれもこれまで常識とされてきた働き方や、労務管理の見直しを迫るものであり、国内外における企業競争力強化に不可欠な内容ばかりです。
そこに、コロナの出現が追い打ちをかけたわけです。
企業の自己変革と同レベルで重要なのが、社員一人ひとりの自己変革であり、それは「現役時代の長期化」と関連しています。
令和3年4月1日から改正高齢者雇用安定法において、70歳までの就業機会の確保について、企業として措置を制度化する努力義務が設けられました。
これは一見、現役世代の確保という意味で労働力不足を解消するものととらえがちですが、そんな簡単な話ではありません。
「不可逆的」、つまり元には戻らない時代において、現役時代の長期化がもたらす弊害は、「組織貢献できないベテラン社員が増える」ことにあります。
かつてのベテラン社員の組織貢献には、次のようなものがありました。
・社内外のネットワーク、顧客との密接な関係性
・経験をベースにした後進育成と後継管理職に対する側面支援
しかし、今後もこれらは通用するでしょうか?
次のように変化していると考えるべきだと思います。
・コンプライアンス(法令遵守)重視による、明朗で合理的な顧客関係性への変化
・マネジメントやコミュニケーションスキルの高度化による、経験値の価値低下 など
つまり、単に現役時代を長くするだけでは、企業成長にはつながらないということです。
そして、これは決して60歳以降のベテラン社員に限った話ではありません。
30代、40代、50代の社員にとっても重要なテーマです。
第4次産業革命の代表格であるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、今後更に加速・浸透することでしょう。
それによって、仕事そのものと求める人材スペックは劇的に変化します。
これは、今ある仕事が3年後、5年後あるとは限らないということであり、今保有する知識や技能が使い物にならなくなる可能性を示唆しています。
事実、これまで専権業務として固く守られてきた職域にも、DXの波が押し寄せています。
コロナ後、それが更に加速し、うまく自身を自己変革できた社員とそうでない社員とでは、更に格差が拡大していくことでしょう。
生産性向上に必要不可欠な「学び直し」
そこで、今注目すべきは、新聞を連日にぎわしている、「学び直し(リスキリング)」です。
記事によると学び直しと生産性には、一定の相関関係があると報じています。
経済協力開発機構(OECD)のデータでは、仕事に関する再教育に参加する人の割合が高い国ほど、時間あたり労働生産性が高いというものです。
北欧諸国は総じて参加率が高く、生産性も高くなっています。
その理由として、政労使(自治体・企業・労組)が連携した、職業訓練学校の存在や、カリキュラムの充実が挙げられています。
日本がここに到達するには、かなりのハードルがありそうですが、少なくとも企業と個人において、それぞれが主体的に、学び直しに取り組むことはできるはずです。
「コロナ後、私は社員として生き残れるか?」
を自問してください。
企業は、会社に依存する社員ではなく、自らの仕事人生を、自己責任で切り拓いていく社員を育成してください。
まさにキャリアオーナーシップをもった社員を育成し、意欲をもって自己を高める社員を積極的に支援する教育システムを構築していくことが、これからの企業の最重要課題であり、競争戦略であると思います。
是非ともご参加ください。
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筆者紹介
- アタックスグループ パートナー
- 株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 代表取締役
- 中小企業診断士 北村 信貴子
- 1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
- 北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。