本気で取組もう!人的資本投資~今こそ、現場で戦うマネージャーへの投資を!

人材育成

「人的資本投資」とは

2024年1月スタートのアタックス・ビジネス・セミナーのテーマは、「本気で取組もう!人的資本投資」です。

最近、紙面を賑わす「人的資本投資」、これは、社員を事業のコストではなく、価値を生み出す投資対象としてとらえる考え方です。

人的資本への投資状況の開示が義務化

ご承知のとおり、2023年3月期決算以降から上場企業約4000社に人的資本への投資状況の開示が義務づけられました。

これまで、「ヒト」は経営資源の一つとして、「モノ」、「カネ」と同列に扱ってきました。

使用して老朽化し枯渇したら調達すればよい、という考え方です。

しかし、労働市場の急激な変化から、ヒトは簡単に調達できる資源ではなくなりました。

企業にとって「ヒト」は、大切な「人的資本」であり、積極的に投資し価値を高めるべき対象になったのです。

「中小企業には関係ない」は間違い!

「人的資本投資?それって上場企業に課せられた義務でしょ。中小企業には関係ない。」と考えるのは間違いです。

むしろ中小企業こそ、限られた人員を確実に成長させるための「人的資本投資」を本気で考えなくてはならないと思います。

「人的資本投資」情報の開示には、人材教育以外にも、ダイバーシティ、エンゲージメント、ジェンダー関連の「女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差」などが含まれます。

本稿では、「人材教育」とりわけ、中小企業において、今一番重要視すべき、現場マネージャーへの人的資本投資について取り上げたいと思います。

「モノカルチャー」だった時代

以前もご紹介しましたが、時代の変化を語るキーワードとして「モノカルチャーからダイバーシティへ」を講演ネタにしています。

「モノカルチャー」とは、「単一文化」を指します。

かつての日本の職場は、男性中心、正社員中心でした。「男どうし、正社員どうし」、管理職ももちろん男性ですから、分かり合える存在です。

小難しいマネジメントやコミュニケーションスキルなど、必要ありません。「同質の集まり」だからです。

変化が緩やかな時代は、経験の積み上げだけで管理職が務まりました。OJT(職場内訓練)が機能した時代です。

多様性が求められる時代へ

しかし、現在はどうでしょうか。

「ダイバーシティ」まさに、職場は多様な「属性」と「雇用形態」で構成されています。

これは、「異質の集まり」といってもよく、「分かり合おうとしなければ、分かり合えない」という特性をもっています。


更に、時代は変化スピードが速く、経験値の積み上げだけではそのスピードに追いつけません。

つまり、OJTだけでなく、OFF-JT(職場外訓練)によって、管理職の力量を上げていくことが必要不可欠です。

「働き方改革」のしわ寄せを受ける現場マネージャー

更にここ数年にわたる「働き方改革」が、現場マネジメントの難易度を上げています。

残業時間の規制、有給休暇取得義務化、産後パパ育休の創設などは、重要な施策ではあるものの、十分な人員を擁していない中小企業にとって、そのしわ寄せが現場マネージャーの激務につながっています。

業績責任を負い、部下成長責任を負い、コンプライアンス遵守も求められる。

この時代に「自分の経験で乗り越えよ」というのは余りにも酷すぎます。

今、中小企業において人的資本投資をすべき対象のプライオリティー第一位が、「現場マネージャー」であることは、間違いありません。

現場マネージャーにどのように人的資本投資すればよいか

では、どのように人的資本投資を考えていけばよいのでしょうか。

外部セミナーをとりあえず受講させればよいのでしょうか?

そうではありません。

コロナ禍による在宅勤務への移行と、グローバルな人材獲得に打ち勝つために、大企業を中心に「ジョブ型雇用」が話題になりました。

最近の調査では、その運用は試行錯誤と報じていますが、私は管理職層において、「ジョブ」を中核に置いた、業務の再設計が必要だと思います。

業務(ジョブ)が不明確なまま、「マネジメントしなさい」、「コミュニケーションをとりなさい」では、何ら効果がありません。

従って、人的資本投資の第一歩は、役割(業務)の明確化です。

人事評価制度も見直すべき

更に、管理職層が評価されるべき軸は何なのか、評価の仕組みそのものにも、メスを入れる必要があると思います。

その上で、管理職層に求める新たなスペックを習得するために有効な教育を選択します。

この一連の改革があって初めて教育が機能します。

更に進んだ企業は、これまでの「管理職」というポジションと組織のあり方そのものを、変革しようとしています。

ある企業では、マネジメント負荷を分散することを目的に、一人で行っていた管理職の業務を主と従で役割分担させる。

更に別の企業は、ヒエラルキー(階層)そのものを無くして、「管理する・される」という概念を取り払うなど、新しい取組みが出てきています。

これは究極の考え方であり、専門性の高い自立した社員の集合体でないと成立しないと思いますが、いずれにしても、組織の結節点である、現場マネージャーの「業務」、「評価・報酬」、「教育」について、優先して見直しを行い、必要な教育投資を直ちに行っていくことが、中小企業の「人的資本経営」の第一歩です。

「人的資本投資経営」「人事制度構築」「マネジメント教育」に関するご相談は、人事コンサルタントが無料相談を受け付けます。ご相談ください。

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筆者紹介

アタックスグループ シニアパートナー
中小企業診断士 産業カウンセラー 北村 信貴子
大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に人事制度構築・運用と人材育成業務に従事。現在は、マネジメントの傍ら後継者・幹部育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に注力している。金融機関での講演、セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく、迫力ある指導に定評がある。
北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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