先月、3月8日の「国際女性デー」にちなんだイベントで、“本気で取組む女性活躍推進”と題したセミナーに登壇しました。
そこで開口一番伝えたのは、世界経済フォーラムが発表した、ジェンダー・ギャップ指数2022です。
「ジェンダー・ギャップ指数2022」日本の順位は?
日本の総合順位は、146カ国中、116位(スコア0.650※)と前回とほぼ横ばいの順位。
※0が完全不平等、1が完全平等を示す。
しかし、よくよく中身をみると「教育」は1位(スコア1.000)、「健康」は63位(スコア0.973)と世界トップクラスです。
一方、「経済参画」は121位(スコア0.564)、「政治参画」は139位(スコア0.061)という低水準。
ここから言えるのは、日本の女性は、世界と比べて教育されており健康体であるということ、それに比べて社会参画、政治参画が極端に少ない傾向にあるということです。
教育水準や健康状態が優れており、ポテンシャルは十二分にあるのに、企業の女性活躍推進が進まないのはなぜか?
その理由の一つに、変化対応できない現場マネジメントがあります。
今回は、時代の変化と現場マネジメントの改革について考えたいと思います。
毎年のように行われている法改正
ここ数年、労働法関連の改正は目まぐるしく、企業では規程改訂ラッシュが続いています。
特に影響が大きいのは、残業時間の上限規制や、中小企業の60時間超の割増率50%猶予措置の廃止、育児・介護休業法の改正や、70歳まで就業機会の確保の努力義務などです。
これらの法改正によって、現場は更なる効率化と生産性向上を迫られています。
しかし、現場マネージャーは、労務管理に費やす時間が増え、部下の残業時間抑制のために、上司がその分仕事を引き受けることで過重労働を引き起こしています。
とても効率化や生産性向上にまで手が回らないというのが現実です。
“モノカルチャー”から“ダイバーシティー”へ
“モノカルチャー”とは
一方、職場を構成する社員も大きく変化しています。
“モノカルチャー”とは、単一文化と呼ばれ、一昔前の職場は、正社員中心、男性中心の職場がほとんどでした。
組織の多くが「同質の集まり」であり、当時の現場マネジメントは、今よりもずっとシンプルで楽だったと思います。
男同士、正社員同士、分かり合えるからです。
“ダイバーシティー”とは
しかし、現代はどうでしょうか。
“ダイバーシティー”という言葉の通り、職場は多様性に満ちています。
あらゆる属性と雇用形態の社員が一堂に介するのが、現代の職場です。
まさに、「異質の集まり」です。
この集団は、「分かり合おうとしなければ分かり合えない」、つまり、能動的に働きかけなければ、分かり合えないという特性を持っています。
現場マネージャーの職場メンバーに対する指導も単純ではなくなり、「個別管理」により、一層手間と時間がかかります。
これらの2つの事象からも現代の現場マネジメントがいかに複雑かつ高度化しているかが分かります。
女性活躍推進に取組む前に、まずは、現場マネージャーが仕事の仕方、部下との向き合い方の変化を理解し、マネジメントそのものを改革することが先決です。
現場マネジメント改革“3つの矢”
それでは、現場マネジメントの改革のために何をすべきでしょうか。
スパン・オブ・コントロールの点検
一つ目は、「スパン・オブ・コントロール」の点検です。
これは、一人の上司が管理できる部下の数のことを指します。
私がこの考え方を学んだ時代は、一人の上司に部下7~8人が適切と言われていました。
しかし、今は、前述の環境変化から、4~5人が最適と言われています。
法改正や組織の構成員が変化しているのに、変わらずに大勢の部下を抱えている現場マネージャー、これでは適切な部下管理は不可能です。
そこに、必要だからと「目標面談」、「フィードバック面談」「キャリア面談」、「1on1」を無理やり導入しても、機能するはずがありません。
尚、点検の際は、業務特性、部下のレベルによって最適な部下の数が異なることに留意してください。
現業職など、定型業務を担うライン従事者であれば、一人の上司が管理できる人数は10名を超えても可能でしょう。
一方、営業職など、非定型業務を担い、商材、商圏、顧客が異なる場合は、人数を4~5名に絞らないときめ細かな指導は不可能です。
又、部下が自走できるプロ集団であれば、大勢でも管理可能ですが、新人・未経験者の多い組織は、一人の上司が管理する部下の人数は絞った方がいいでしょう。
いずれにしても一人で多くの部下を抱えている場合、この組織がすべきことは次世代リーダーの早期育成です。
適切な組織編成になるよう中間層を引き上げていくことが大切です。
現場マネージャーのジョブの明確化
二つ目の改革は、現場マネージャーのジョブの明確化です。
大手企業を中心に、ジョブ型への制度変更が新聞を賑わしていますが、中小企業でジョブ型を最初に真剣に考えるべきは、現場マネージャー含む管理職層だと思います。
多くの企業は、管理職の職務内容が明確のようで実は明確ではありません。
女性社員が管理職になりたがらない理由に、「役割が不明確」、「長時間労働を強いられる」が上位を占めます。
私は、まず現場マネージャーの仕事の洗い出しと、本来やるべき仕事、やらなくても良い仕事の切り分けを行い、職務記述書を整備すべきだと思います。
ポイントは、「やりたいことを勝手にやらせない」、「やるべきことをやってもらう」です。
管理職の仕事をスリム化し標準化していくことが、経営者がすべき一番の仕事だと思います。
評価制度の運用強化と教育投資
三つ目は、評価制度の運用強化と教育投資です。
評価制度は単なる査定のツールではなく、社員の能力開発を目的としたものと考える企業が増えています。
しかし、本当にそのように運用しているでしょうか。
時間が無い中で、総務の示す提出期限に間に合うように急いで査定し、事務的に面談していませんか?
私は、管理職層の職務のなかに、評価制度の運用に関する業務をしっかり明記すべきだと思います。
目標設定、中間フォローアップ、評価、フィードバックこれらの一連の運用を更に強化することが、部下本人が正しく組織貢献を理解し、成長課題を認識することにつながります。
女性社員の能力開発や登用にも、評価制度の運用の巧拙が、大きく影響します。
評価制度を導入して、5年以上経過している企業は、評価すべき項目や運用実態を点検してください。
そして、改めて制度運用強化のための、運用教育を行うべきです。
現場マネジメントの改革こそが重要な経営課題であり、その先に、現実的な女性活躍推進が見えてきます。
女性活躍推進に関するご相談、現場マネジメントの改革に関するご相談は、アタックス・ヒューマン・コンサルティングまでお問合せください。いつでも無料相談を承ります。
管理職向け講座のご案内
以下の講座は、現場マネジメント改革のための教育投資としてご活用ください。
ベテラン管理職の学び直し、新任管理職にとって必須の講座です。
<実戦マネージャー短期養成コース>
4/24(水) 第1講:管理職の役割と組織運営の基本
5/9(木) 第2講:部下との面談が劇的に変わる3つのスキル
5/23(木) 第3講:人を動かす対人関係構築力を身につける
筆者紹介
- アタックスグループ パートナー
- 株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 代表取締役
- 中小企業診断士 北村 信貴子
- 1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
- 北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。