管理職になりたがらない3つの要因とは?~動機づけの施策~

人材育成

2024年11月26日に行われた厚生労働省労働政策審議会にて、“従業員101名以上の企業に女性の管理職比率の公表を義務付ける方針”が示されました。

我々の元には、「管理職になりたがらない社員が多いが、どうすべきか?」という企業からのご相談が多数寄せられています。

実際に、管理職になりたいと答えた人の割合は、17.2%と低い水準となっています。

出所:パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査 2024」

かつては、組織で働く社員にとって、管理職に昇進することが人生の成功と考えられていましたが、現代では多様な価値観を持つ人材が増え、必ずしも全員が管理職を目指すわけではありません。

本稿では、管理職になりたがらない理由と、その対応策を考察します。

管理職になりたがらない理由

筆者が様々な企業を支援する中で、期待される若手人材に対してヒアリングを行った結果、以下の3点が、主な理由であると明らかになりました。

理由① ワークライフバランスに対する懸念

管理職になると責任が増え、その結果として長時間労働になりがちとイメージする人が多いようです。仕事とプライベートを両立させたいと考えている社員にとっては、この懸念は大きいと言えるでしょう。

また、労働時間だけでなく、組織の目標達成や部下のマネジメントに対するプレッシャーにより心身ともに疲弊してしまい、公私共に充実感が低下してしまうことを避けたいと考えている人もいます。

 

理由② 年収が減る可能性に対する懸念

管理職に昇進すると労働基準法第41条の管理監督者に該当し、残業代の対象外が当然と考えている企業が一般的です。
※労働基準法第41条の管理監督者性の要件・要素は想定以上に厳しいものですが、本題から逸れてしまうため本稿では触れません。

管理職昇進前の階層で、長時間労働により残業代支給額が大きくなると、管理職になることで年収が下がってしまうとことが現実に発生します。

より責任やプレッシャーが強くなるにも関わらず年収が下がってしまうのであれば、管理職になりたくないと考えるのも当然です。

 

理由③ やりがいが低下する懸念

管理職は大きな権限を持ち、組織や部下のマネジメントを行います。つまり、管理職昇進前の階層のように各業務の主担当者として専門性を活かすような役割ではなくなります。

具体的に、決裁事項に関する決断や組織内外のトラブル対応など仕事は多岐に渡りますが、環境や業務に関わる問題解決や、人間関係の調整に重点が置かれることが一般的です。

そのため、専門性を高めたい、お客様から直接感謝されたいと考えている社員にとっては、やりがいの低下に繋がる恐れがあります。

また、それと合わせて、部下のマネジメントに多くの時間を費やす必要があります。

信頼関係の構築、評価、育成、動機付けなどを行うにあたり、人間関係構築能力やコミュニケーション能力が求められますが、経験が不足し自信のない社員にとっては、これらの業務が煩わしく映ってしまうかもしれません。

 

管理職になりたがらない理由を整理しましたが、一言でいうと、本人にとって管理職になるメリットが感じられないということです。

どのように対応すべきか

人が動機づけられる過程として、

①努力の結果、成功できそうな期待
②成功の結果が報酬に結び付くであろうという期待
③報酬そのものがどれほど本人にとって魅力的か(成功は、結果や成果、パフォーマンスと読み替えていただくと分かりやすいと思います)

という3つの要素が連鎖していることが重要です。

本稿のテーマにあてはめると、以下の通り整理ができます。

 

管理職に昇進して努力した結果、成功できそうなのかという懸念

まずは、管理職になると役割が変わるため、成功が何かイメージできていないことが挙げられるでしょう。また、今まで培ってきた専門性を活かしきれないポジションであるため、成功するためにどれほど努力が必要なのかが見えないということも考えられるでしょう。

人事制度においてキャリアパスを策定することもありますが、やはり一定程度抽象的な文言になってしまうため、本人が具体的にイメージすることは難しいと思います。

従って、管理職として活躍している諸先輩方から、管理職とはどのような働き方なのかを説明いただくのも効果的と考えます。

 

成功の結果が報酬に結び付くのかという懸念

努力して成功しても、評価されないという不安が挙げられるでしょう。例えば、現場の管理職が部下に対して「管理職ならやって当たり前だよ」や「管理職は評価が厳しい」などと発言していると上記のような管理職は割に合わないという認識になっている恐れがあります。

また、評価されたとしても、上位のポストも埋まっており、それ以上の昇格や昇進が望めないということもあり得ます。

評価制度を見直すことで、成果を明確化すると共に、評価者(当該管理職を評価する上司)が管理職の働きぶりを正しく確認できるような体制を取る必要があります。

また、昇格昇進・降格降職基準を見直すことで、必要に応じて管理職ポストの新陳代謝を促すような仕組みが必要となります。

 

成功の結果、手に入れる報酬そのものが魅力的でないという懸念

成功し評価された結果、高い地位や権限を得られるものの、人によっては長時間労働や年収低下、やりがい低下に繋がると認識している恐れがあります。また、現状の報酬制度は、金銭的報酬に留まっているケースが多いと感じます。

従って、非金銭的報酬も含めたトータルリワードの観点で制度見直しが必要です。

また、併せて管理職として活躍している方から、管理職になってどんな良いことがあったのかを説明いただくことで、本人が気づいていない新たな精神的報酬感を示すことも効果的です。

管理職になりたいという動機付けを促そうと思うと、制度の一部を見直すことや教育研修を実施するだけでは効果が不十分です。

上記で整理した要素の連鎖を意識しながら、対応していく必要があります。

中長期的に組織を維持するためには、管理職の育成、確保が要になると思いますので、上述した内容に基づき自社でどのような対応ができるかをご検討ください。

さいごに

アタックス・ヒューマン・コンサルティングでは独自の行動変容理論であるヒトキラ(人が輝き、会社が変わる)メソッドに基づき、人事改革全般のサポートをしています。

貴社内で管理職に対する動機づけや人事についてお悩みがある場合は、是非無料相談をご活用ください

筆者紹介

株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 社会保険労務士 吉崎 英利
1989年7月生まれ、山口県出身。社会保険労務士事務所勤務を経て、アタックスに入社。前職では、社会保険手続や、就業規則改訂支援、労務相談等に従事。現在は、人事制度構築や就業規則改訂などの支援業務を通して、社長の最良の相談相手となるべく精進中。趣味は筋トレ。

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