8月17日、内閣府によると2020年4月~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で、1月~3月期から7.8%、年率換算で27.8%減ったと発表しました。
これは、リーマン・ショック後の2009年1月~3月期の年率17.8%を超える戦後最大の落ち込みです。
日本のGDPは、昨年10月の消費税引き上げからすでに減少に転じていたのは事実です。
新型コロナウイルスが、それに追い打ちをかけるように消費を落ち込ませ、内需、外需ともに総崩れとなりました。
依然、感染者数は高止まりしており、今後も感染防止と経済活動両立の模索は続きます。
弊社が、20年以上開催しているアタックス・ビジネス・セミナーもこの間、中止・延期が相次ぎました。
更に再開後も、感染防止対策のために定員数を削減した影響もあり、過去最大の落ち込みです。
何よりも、顧問先、お客様企業の「社員教育」が約半年近く止まり、遅れてしまったことは大変申し訳なく残念な限りです。
今こそ社員教育のチャンス!
米国のリーダーシップ研究の調査機関であるロミンガー社が発表した、
幹部が育つ条件「経験が70%、薫陶が20%、研修が10%」
は有名です。
この結果を見ると、“経験”が人を成長させる重要な要素であることがわかります。
一方、研修は10%しかないのだからたいして重要ではない、ととらえるのは間違いです。
研修の10%がないと100%にならないからです。
例えば、週休2日の企業で、1日8時間労働の場合、年間の所定労働時間は、約2000時間です。
その10%ということは、年間200時間。
1ヶ月だと16.7時間、1日8時間労働として、毎月約2日間、社員研修を行うという計算です。
果たして、どれだけの企業が、毎月2日間、終日を社員研修の時間にあてているでしょうか。
私が知り得る限り、ほんの1~2社しかありません。
しかし、新型コロナウイルスは、図らずも企業の変革スピードを加速させました。
その一つとしてあげられるのが、求められる人財像の変化です。
対面からリモートへ
時間軸から成果軸へ
大きな流れのなかで、社員にも、管理職にも、経営者にも、これまでとは異なる新しい教育ニーズが生まれています。
つまり、新型コロナウイルスの流行が過ぎ去るのをじっと待っているだけでは、その先の企業存続と成長は無いということです。
有事になると真っ先にコストカットとなる代表格が教育コストですが、
「今こそ社員教育のチャンス」
と逆に精力的に教育に乗り出している企業もあります。
見えない敵に翻弄された半年間でしたが、そろそろ企業にとって永遠の命題である、社員教育に再び目を向けるときではないでしょうか。
社員教育に重要な4つのテーマとは
産労総合研究所が調査した、「2019年度に実施する職種別・目的別教育」によると、回答企業があげた重点教育テーマ上位4項目は次の通りです。
・メンタルヘルス・ハラスメント教育
・キャリアデザイン・ライフプラン教育
・選抜型幹部候補者教育
この結果は新型コロナウイルスの発生とは無関係です。
しかし、コロナ後の時代に求められる重要な教育ばかりです。
OJT指導員教育
特に今年は、新入社員研修が新型コロナウイルスの影響で中止、縮小されることによって、導入教育もそこそこに現場配属となった新人が多かったと思います。
例年と比較してスタートに遅れをとった今年の新入社員の成長を左右するのは、現場のOJTです。
正しく導くためにも「OJT指導員」の力量を高める教育は不可欠です。
メンタルヘルス・ハラスメント教育
「メンタルヘルス・ハラスメント教育」については、パワハラ防止法が大企業には2020年6月から、中小企業には2022年4月から施行されます。
健全な組織風土は、ハラスメントのない職場づくりからです。
コンプライアンス教育の一環として、全社員が学ぶべき教育テーマです。
キャリアデザイン・ライフプラン教育
次に、「キャリアプラン・ライフプラン教育」は、人生100年時代の仕事人生をどのように生きるのか、自己責任で自らのキャリアを描くことの大切さを理解する教育です。
以前は、定年が迫った社員を集めて行うライフプラン教育が盛んでしたが、最近は20代~30代の若手社員に対して、社内のステージが変わる節目にキャリア形成セミナーを開催している会社が増えてきました。
選抜型幹部候補者教育
最後に、「選抜型幹部候補者教育」です。
10年先の会社を担う若手社員20代後半から30代前半を現場から選抜し、ジュニアボード(青年重役)を組成することからスタートします。
経営戦略、財務戦略、組織戦略、マーケティング戦略、人事組織戦略を学ぶだけでなく、実際に自社の経営計画の策定から役員の前でのプレゼンまで行います。
これは未来幹部人財を育てることが狙いであり、中小企業においても実施する企業が確実に増えてきています。
困難に打ち勝つ人材教育
これらの教育の積み重ねが、環境変化に負けない強靭な組織を作る土台となるのです。
“社員教育を止めるな!”
2020年下期に向けて、未来を切り開く社員教育を是非ともご計画ください。
前述でご紹介した4つの教育テーマは、個別にオリジナルのプログラムを企画し、弊社の講師を派遣致します。
教育や人事の関する漠然とした課題や悩みでも結構です。
こちらから気軽にご相談ください。
筆者紹介
- アタックスグループパートナー
- 株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 代表取締役
- 中小企業診断士 北村 信貴子
- 1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
- 北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。