筆者は人事制度構築や人材開発のご支援をするコンサルタントです。
近年、「学び直し」に関する話題が増えてきています。しかし、「リカレント」や「リスキリング」など、耳慣れない言葉とセットで紹介されることが多く、不要に学び直しのハードルが上がっているように感じてなりません。
今回は、人材育成の一つとして学び直しを考える際に、知っておきたい言葉の定義や、参考にして頂きたい視点をお伝えしたいと思います。
「リカレント」と「リスキリング」の違いとは?
まず、学び直しとして多用される「リカレント」と「リスキリング」についてご説明します。
「リカレント」とは?
リカレント教育(recurrent education)とは、主に学校教育を終えた後の社会人が大学等の教育機関を利用した教育のことを指します。
職業能力向上につながる高度な知識や技術、生活上の教養や豊かさのために必要な教育を生涯に渡って繰り返し学習することを意味します。
これには、企業内教育により就業しながら必要な知識や技能を習得する教育訓練を行うOJT、仕事を一時的に離れて行う教育訓練(Off-JT)も含まれます。
(Wikipediaから抜粋、一部加筆)
難しいですね。平たくまとめますと、リカレントとは「学校に入りなおすレベルの生涯学習」です。
技術系の職業訓練やMBA取得などがイメージしやすいですが、それでも中堅中小企業にとっては、費用の捻出や社員の時間確保(つまり仕事との調整)が必要な学び直しです。
「リスキリング」とは?
一方、リスキリングですが、Wikipediaの様なまとめ定義は今のところ存在せず、様々な機関が様々に考えています。筆者が考える定義は以下の通りです。
リスキリングとは、環境変化や社会の進歩に合わせて、知識・技術のアップデートを図ることです。また、手法については、大学や教育機関での学び直しは含まない点がリカレントとは異なります。
昔、身に着けた知識・技術が陳腐化していないか確認し、現状に合わせてレベルアップするということですね。例えばエクセルのバージョンアップで追加された関数を学ぶということでもリスキリングと言えるでしょう。
しかし、報道等では、DX、AI、といった高度なICTの用語とセットで紹介されることが多く、とっつきにくさに繋がっています。
「今更、学校に入りなおすのもなぁ」や「DXってよくわからないし」など、学び直したいのに、躊躇している方がいらっしゃるのではないでしょうか。
“学び直し”の具体的な進め方
筆者としては、リカレントとかリスキリングという表現に惑わされて「お勉強」がスタートになっているような感じがします。
逆に「現状の仕事をアップデートするために必要な知識・技術は何だろうか」の視点に立てば、自らの働きやすさや生産性向上、ひいては会社の利益に直結しやすく、学び直しのモチベーションになりやすいのではないでしょうか。
学び直しの具体的な進め方としては、以下のステップを参考にしてください
- 仕事の棚卸し(箇条書きで仕事を書き出すだけでも良いです。業務分掌などあれば、活用しましょう)
- 仕事のやり方が長年変わっていないものは何か探す
- 2の内で、やり方を変えれば生産性を上げられそうな仕事を絞り込む
- 3で絞り込んだ仕事について、何を学びなおせば、生産性が上がるか考える
ポイントは1~4のステップに時間をかけないことです。
棚卸しの網羅性や、絞り込みの判断基準を考えて、精緻に取り組むよりも、さっさと生産性を上げる取り組みとして学び直しを始めた方が、メリットが大きいです。
“学び直し”は仕事視点で考える!
先日、JALの学び直しについて報道がありました。全社員を対象としてDXなどをメニューに盛り込んだ教育プログラムを導入するとのことです。
誤解してほしくないのは、筆者はこのような取り組みを否定しているわけではありません(中堅中小企業にとってハードルが高い取り組みだとは思いますが)。
単なるお勉強に留まった学び直しは、実りが少ないと思っているだけです。JALの教育プログラムも、学び直しのあとに、業務の見直しや新サービスの開発が予定されているようです。
仕事視点で学び直しを考えることが、外してはならないポイントだと考えます。
折しも、岸田首相が10月の所信表明演説でリスキリングに5兆円の投資を行うことを盛り込みました。今後、助成金等の拡充も進むでしょう。ぜひ、皆様方も学び直しを考えてみてください。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 取締役副社長 永田 健二
- 1999年 静岡大学卒。中期経営計画策定支援、組織風土分析支援、人事制度構築支援、人事制度運用支援などに従事。新入社員研修、中堅社員研修、管理者研修、各種個別研修など研修講師としても活躍中。
- 永田健二の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。