- 若手社員の採用がうまくいかない
- 苦労して採用してもすぐに退職してしまう
- すぐに退職してしまうので、若手社員に教育投資しても無駄になってしまう
これら若手の採用や育成の悩みは、多くの中小企業に共通していますが、これに関して、リクルートワークス研究所が示唆に富んだ調査結果(※1、以下、レポート)をまとめています。
本稿では、このレポートを参考に“若手社員の離職対策”について掘り下げてみたいと思います。
レポートでは、若者の仕事観、就業上の不安など様々な視点で調査分析結果が報告されており、どれも参考になるデータばかりですが、その中でも「マネージャーの若手育成成功実感に関する調査」に注目してみました。
高い若手育成成功実感が若手社員を引き留める
「若手育成成功実感」とは、マネージャーが感じる「若手育成がうまくいっている・いっていない」実感です。
この比率が高いとマネージャー自身が若手育成に手ごたえを感じていることになり、このようなマネージャーの下に配属される若手は成長する可能性が高くなるとされています。
更にこのレポートでは、マネージャーの育成成功実感を高めることが、若手社員の離職防止対策になるとしています。
具体的には、
・会社の若手育成支援・制度がマネージャーの若手育成成功実感とどう関係するのか?
・「若手育成成功実感」が高いマネージャーはどのような属性を持つのか?
などが調査分析されています。
会社の若手育成支援・制度と「若手育成成功実感」の関係
レポートでは、会社の若手育成支援・制度がマネージャーの「若手育成成功実感」とどう関係しているか分析しています。
意外に思えるかもしれませんが、若手へOFF-JT機会があるほうが、マネージャーの「若手育成成功実感」が高くなり、また、その時間(量)が多いほうが、「若手育成実感」が高くなる関係が見られたとのことです。
このことから、企業による若手育成投資は、若手のためだけでなく、マネージャーの「若手育成成功実感」を高める可能性が高いとしています。
また、「若手育成成功実感」が高いマネージャーは、ワーク・エンゲージメントが高い傾向にあることから、若手社員への育成投資は、若手の成長からのみ回収されるのではなく、マネージャーの意欲向上からも回収できるのではないかとされ、若手社員が早期退職してしまっても、決して割の合わない投資ではないとしています。
「若手育成成功実感」が高いマネージャーはどのような属性を持つのか?
更にレポートでは、マネージャー自身の経験と「若手育成成功実感」の関係を分析しています。
それによると、様々な経験をしているマネージャーは、「若手育成成功実感」が向上する傾向があるとされています。
最も高い実感となったのは、「株式会社やNPO、法人等の設立・運営」の経験で、次いで「所属する企業・組織外の人との勉強会の主催及び参加」「大学、大学院、オンラインなどによるリスキリング」などです。
このような活動をするマネージャーは若手社員にとって、キャリア的にかっこいいロールモデルになっていると考えられ、これらの活動を間近に見ることで、若手社員のキャリア安全性を高め、結果、若手社員の成長が促され、マネージャーの「若手育成成功実感」が高まるとされています。
まとめ
これらのことから、筆者は、若手社員の離職防止対策として、
②マネージャーのキャリア開発投資
が有効と考えています。
つまり、若手社員への教育投資はもちろん、それだけでなく、マネージャーへの積極的な投資が若手社員の引き留めに有効だ、ということです。
社内に、キャリア的にかっこいいマネージャーが存在すると、若手社員のキャリア安全性が高まり、離職防止の効果があると思われます。
ロールモデルの必要性はこれまでも経験的に指摘されてきましたが、今回の調査で、「若手育成成功実感」という分析からも有効であるとされました。
若手社員の退職に悩む企業は、給与水準や福利厚生などの基礎的条件の向上や若手社員への教育投資だけでなく、「かっこいいマネージャーの育成」への投資も同時に検討していただければと思います。
※1 なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか 著:古屋星斗(日本経済新聞社)
アタックスグループが提供するプログラムのご案内
アタックスグループでは、「かっこいいマネージャーの育成」プログラムの一つとして、次世代幹部育成メニューを提供しています。
このプログラムは、次世代社員を社長の右腕として育成する効果とともに、若手社員引き留めの効果も期待できますので、是非、ご相談ください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス クラフトパーソンズ・センター 主席コンサルタント 諸戸 和晃
- 教育のスペシャリストとして財務研修コンサルで活躍。担当分野は、財務研修講師、財務コーチング、役員会指導、経営顧問、中国子会社管理。研修以外では主に、月次決算制度や原価計算制度、キャッシュフロー管理制度などの経営管理制度の構築や、未来決算書(数値シミュレーション)を使った経営計画策定支援に従事。月次決算をベースに企業の経営課題を発見・整理し、これまで多くの企業の経営のアドバイザーを務める。
- 諸戸和晃の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。