中小企業が取り組むべき『働きがい』の提供 ~大人材不足時代の経営!

人材育成

日経電子版に“NEO-COMPANY”と題した特集記事が取り上げられました。
記事は大まかに次のようなものでした。

現在の人材市場、これからの人材市場を考えれば中小企業こそ一生懸命に取り組むべきテーマだと感じます。

  • 働きがい×働きやすさの二軸、プラチナ/モーレツ/ホワイト/ブラックの四象限に上場企業を分類
  • ホワイト企業群はモーレツ企業群に売上高や時価総額の成長性で劣っていたという分析の提示
  • 「働きがいを高めてプラチナ企業を目指すべき」との提言

会社は志のある人材に働きがいを提供すべき

思えばこの一年、私のX(旧Twitter)のタイムラインには「若者は自らブラックに働くべし」という論調のポストがとても多かったと、振り返って感じるところです。

ワークライフバランスという言葉を数年間浴び続けている間に人材市場は構造的で長期的な売り手市場局面に突入し、企業の内外、老若問わず『会社は志のある人材に働きがいを提供せよ』という課題を突きつけられています。

私たちは自ら率先して自社の働きがいの『定義』『設計』『提示』『提供』を行い、その巧拙を社内外の人材から評価されるという認識を新たにすべきでしょう。

これからの中小企業は、顧客と人材の二正面市場作戦を長期に戦い抜いていかなくてはなりません。

働きがいをどのように高めるか

では中小企業が人材の『働きがい』をどのように高めることができるかについて考えてみましょう。

  • 報酬という名の金銭的インセンティブ
  • 表彰や処遇などの非金銭的インセンティブ
  • 価値の創造、他者貢献、意義、使命
  • 成長意欲に応えるストレッチ環境

前2つは施策として手掛けやすい一方で働き手への心理アプローチであり、効果はあまり持続しないでしょう。

コストも伴うので、事業の高付加価値化とセットでなければ実現も難しいでしょう。

後2つは手掛けることのハードルがとても高い一方で働き手の認知を高める本質的な取り組みであり、これに成功すれば社員の自律的成長のきっかけとなり得るものだと思います。

中小企業と中核人材の現状

次に働きがいを提供していく中小企業とその中核人材はどのような状況でしょうか。

私自身や周辺の状況を振り返り、中小企業全体の雰囲気を勝手に推察してみたいと思います。

昔は上長や先輩から効果的、体系的な教育を施されるような環境は社会全体になかった。

現場に立ち、前に進み、時折一段上がり、ときに半歩下がり。

これが唯一と言っていい社員の学習機会だった。

長期で見れば多くの社員の入退社が起こり、当時の事業に最適であった人材のみが残って組織の中核を形成した、あるいは残った人材によって組織が定義されてきた。

中核世代の一部は自分の来た道を振り返って成長論を後付けなりに整理、若手世代に向けて自身オリジナルの成長法則を教えている人もいる。

そうかと言えば管理だけして何も教えていない人もいる。

ここに来て政策やマスコミが持ち出してきた『自己肯定感』『学び直し』や『脱学習』というワードに戸惑いを感じながら、会社としては何らかの取り組みの必要性を感じている。

多くの中小企業がこのような状態ではないでしょうか。

働きがいの提供をどう考えるか

それでは最後に中小企業は『働きがい』の提供をどう考えて行けば良いかを考えてみます。

あくまでも私なりの考えですので、より良い考え方や実践があればいずれどこかでご教示いただければ嬉しく思います。

将来世代を3等分して考える

まず、将来世代を3等分するところから始めてみましょう。

1/3は現在の役割が上手くこなせないと悩み、働きがいを感じづらくなっている層です。

次の1/3は現在の役割を上手くこなせるがゆえに、自己効力感や他者貢献を高めるためのストレッチを求めている層です。

残りの1/3はその中間層と言ったところでしょうか。

停滞している社員

最初の1/3人材は現在の役割のところでスタック、空転しています。

若手にとって『自分が停滞している』と感じる状況は辛いものです。

停滞の真因には目を向けず将来の役割だけを見てバリューを出そうとして、状態をこじらせがちです。

その真因は技術レベルの問題なのか、タスク処理の特性なのか、コミュニケーション能力の問題か。

いずれにしても会社としては『停滞』という絡まりをほどくための支援を初期に集中的にすべきでしょう。

現在の役割がストレスなくこなせるようになるだけで、成長実感や働きがいは確実に高まるものと思います。

高い目標設定を望む社員

二番目の1/3人材は現在の役割を上手にこなします。

すでに将来の役割に目が向いているので、本人はストレッチの利いた環境、適したロールモデルなどを期待しています。

もし現実がそれに応えていなければ本人はストレスを感じることでしょう。

これを固定化してしまうと働きがいは確実に低下し、離職リスクが高じていきます。

ここに自身の事業・業務のやり方や成長法則を高らかに掲げる熱量の高い上司、あるいはタスク型上司、マイクロマネジメントタイプの上司が組み合わさり、一対一のクローズドな環境が重なると『上司ガチャ』などの不幸も起こりがちです。

将来世代がキャリアを形成する要素は多岐にわたりますし、一人ひとり状態は違うものです。

たった一人の先達の過去の成功体験だけでそのすべてをカバーすることはできないと、会社や中核人材が認識すれば良いのです。

会社はこの層に対して、適切なストレッチ環境とそこに立ち向かうための知見を、部署や事業という縦ラインを柔軟に超えて積極的に与えていくべきです。

上司部下との組み合わせ、部署内事業内では実現できなければ組織全体でカバーし、ときには失敗を許容する体験の場で解決すれば良いのですから。

この層には適切なストレッチ環境を提供することが、働きがいを高めてもらうための上質な施策だと思います。

どちらにも分けられない中間層

最後に中間の1/3人材です。

この層は現在の役割に悩む1/3、将来の役割への変化に悩む1/3を活性化することができれば、その両方から触発されてきっとこちらも活性化してくるでしょう。

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役 廣瀬 明
1968年生まれ。企業再生、財務・事業デューデリジェンス業務、M&A、株式公開のサポート等に従事。中堅中小企業への豊富な支援業務を通じて培った知識と経験を活かし、プロジェクトマネージャーとして活躍中。
廣瀬明の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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