「採用難」は勘違い?
リクルートワークス研究所は、1月18日に中途採用実態調査を公表し、以下のことを示しました。
- 2023年度上半期において、約6割の企業が必要な人数を確保できなかった
- 2024年度において、採用予定数を増やす企業の割合がさらに増加することで、より厳しい採用環境になる
株式会社ディスコの調査では、新卒採用においても同様のことが示されました。
- 2024年卒採用において、内定者充足率は 67.9%で、前年同期調査(71.3%)を下回った
- 2025年卒採用において、採用予定数を増やす企業の割合がさらに増加することで、より厳しい採用環境になる
採用難……こういった情報に触れると、そう感じてしまうでしょう。
「当社が採用できないのは仕方ない」と思うのも自然なことかもしれません。
しかし、はっきり申し上げましょう。
それは勘違いです。
実際にうまくいっている会社は、企業規模、業種や職種、エリア、条件の良し悪しには無関係で存在しているからです。
採用が上手くいっていない会社は「採用の基本」を知らない
採用コンサルタントの私の元には、切実なご相談が日々やってきます。
私はご相談を受ければ、必ず時間をとって対応するようにしています。
結果、これまで膨大な会社様のご相談をお受けしてきたわけですが、あることに気づいてしまいました。
それは、、、採用がうまくいっていない会社のほとんどが「採用の基本」をご存知ないということ。
ケーススタディ(K社の例)
次のケーススタディに取り組んでみてください。
ご自身が「採用の基本」を押さえられているかどうかをチェックすることができるからです。
K社は、従業員75名の卸売業。
採用活動を続けているが、ここ最近は応募者が少なくなっている。
内定を出しても辞退されることも多々あり、目標とする採用人数に達していない。
また、過去3年に入社した社員のうち、6割がすでに退職している。
この状況にて、あなたはどのような課題を設定し、採用活動に取り組みますか?
さて、あなたなら、どうするでしょうか。
どのような課題設定をするか
K社の採用がうまくいっていないのは明らかです。
では、どのような課題を設定し、採用活動に取り組んでいくべきでしょうか。
うまくいっていないならば、
(1)もれなく、適切に課題を設定する
(2)一つひとつの課題解決に取り組む
以上のことが必要です。
これは採用に限らないことです。
しかし、もしも「採用の基本」を押さえていなければ、どうでしょうか?
もれなく適切に課題を設定することすらままなりません。
想像してみください。
採用活動の改善を考える際に、課題設定の切り口にモレが生じていると、その切り口に関する課題がおざなりになってしまいますね。
そうするとどうでしょう。
解決すべき課題はそのまま放置され、どれだけ努力して取り組んでも成果に繋がらないということが起こってしまいます。
ゆえに、必要なのは、採用に関する最低限の知識であり、「採用の基本」を身につけておくべきなのです。
採用課題は3つに分解できる
ちなみに、採用課題は大きく3つに分解できることを覚えておきましょう。
2)候補者を見極めること
3)候補者を動機づけること
候補者を集めること
そもそも候補者を集めることが採用活動の成否に関わることです。
集められないことにはなんともなりません。
では、集めさえすればよいかというとそうではありません。
集めた人が全員自社にマッチするかどうかは定かでないからです。
候補者を見極めること
よって、集めた候補者が自社にマッチする人かどうかを適切に見極めることも採用活動の成否に関わる重要なことです。
では、集めて見極めることができれば、採用できるかというとそうでもありません。
会社は見極める側でもありますが、見極められる側でもあるのです。
つまり、選ぶ側でもあり、選ばれる側でもあるということです。
候補者を動機づけること
選ばれるには、「あなたは当社に合っています」「当社に入るべきです」「なぜなら…」と伝え、他社ではなく自社に入社する意思決定を促す必要があります。
これが動機づけです。
動機づけられるかどうかも採用活動の成否に関わることです。
この3つの候補者に対する活動がどれもすべて過不足なく実行することができてはじめて、採用することができるわけです。
一口に「採用活動がうまくいっていない」と嘆くのではなく、この3つの活動のうち、どの活動がうまくいっていないのか、そして改善の余地があるのかを把握して、取り組んでいかねばなりません。
採用力アップのための教育をしていますか?
このような知識があれば、解決の糸口が見つかるものの、知識がないがために、前に進めずにいるのではないでしょうか。
それは本当に本当にもったいないことです。
これまで膨大な数の会社様からご相談を受けてきて、私が実感していることです。
「リスキリング」という言葉が一般的に普及してきました。
※日本語で「学び直し」という意味です。
では、果たして、採用について一から勉強したことがある人はどれだけいるでしょうか。
採用力アップのための教育は、ほとんどの企業でされていません。
- 採用基準はどうやって作っていくのか
- 面接でどのようなことを質問すべきなのか
- 動機づけるには、どのようなアプローチの仕方があるのか
こういうことを知らないとしたら、リスキリングでなく、新しい学びの機会が必要と言えるでしょう。
本を1冊読んだからといってスキルが身についたとは言えません。
何となくだましだましやってきた会社も、冒頭のデータが示す通り、本気で取り組まなければ、採用が好転するようなことはありません。
今までの採用活動を振り返り、リスタートする
あらためてこのことを前提に、以下のステップでリスタートしてみることをお勧めします。
採用活動に近道はない!
「急がば回れ」という言葉があります。
早く着こうと思うなら、危険な近道より遠くても安全確実な方法をとったほうが早く目的を達することができるという意味です。
採用活動では、多くの会社が危険な近道を選んで、いつまでも目的を達することができないでいます。
効率的にショートカットできるやり方はありません。
あれば誰も苦労しません。
一見遠く見えても安全確実な方法をとり、それを習慣化した会社しか結果を出し続けることはできないのです。
他の人や会社がやらないことをやるから、異なった結果を出し続けられるのです。
「採用の基本」の学び方
私が推奨するのは、「採用の基本」を習得することです。
こちらに、さきほどのケーススタディを用いた動画があります。
しかるべき方にこの動画を観させて、「採用の基本」から学んでみる。
ここから始めてみてはいかがでしょうか。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 取締役 酒井 利昌
- 学習塾業界、人材サービス業界を経て、アタックスに入社。採用と教育支援の両軸で、年間200日以上、現場指導に従事。採用コンサルティングにおいては、営業・マーケティングノウハウを転用した独自メソッドを用い、携わった企業すべてを短期間で目標達成に導いている。著書に『いい人財が集まる会社の採用の思考法』(フォレスト出版)があり、2019年8月発刊以降、ロングセラーを記録している。
酒井利昌の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。