コロナ禍を経て、リモートワークが浸透してきましたが、米大手IT企業Amazonが全社員に対し、原則週5日出社に戻すなど、昨今は出社体制を見直す議論も出てきました。
出社回帰が進む理由
世界的に出社回帰が進んでいる理由は、主に以下の2つでしょう。
①企業文化の薄弱化
社員間のコミュニケーションによって創造性を高めようとする企業文化、理念をお持ちの会社では、リモートワークがそれを阻害すると考えます。
例えば、普段接触のない部署の人とすれ違いざまに会話をすることで、化学反応やイノベーションを生み出す可能性があるのですが、リモートでは、その機会が少なくなってしまいます。
②生産性の低下
「出社して顔を突き合わせていれば、不明点について気軽に確認できるのに」といった、空間を共有できていないが故に生じる不満やタイムロスが、生産性を低下させるという考えです。
特に仕事のスタート段階、つまり「仕事の指示」において、指示者と受け手の間で理解のギャップが発生し、精度の低い成果になったり、そもそも方向性のずれた仕事になって手戻りが発生してしまうケースは一番避けたい事態です。
「指示の5段階」とは
今回は、指示の工夫として、どの様な方法が有効か、深堀りしてみたいと思います。
当たり前のことですが、相手の理解度に合わせて情報量をコントロールするということが、王道かつ適切な工夫と考えます。
筆者は指示の出し方に関する研修講師をすることもありますが、その際にご紹介するのが「指示の5段階」という考え方です。
第一段階 仕事のタイトルのみの指示
第二段階 目的も加えた指示
第三段階 5W3Hに分解した指示
第四段階 仕事の段取りまで加えた指示
第五段階 完成形のイメージ図の用意や実演まで行う指示
仕事を詳細に分解して指示をすれば、指示者と受け手の理解ギャップは少なくなるでしょう。
ただ、全ての仕事において詳細に分解していたら、時間がいくらあっても足りません。
指示の5段階は、第一段階から第五段階に数字が増えるにつれて、分解度を上げていく工夫です。
例えば、タイトルのみの指示をした後、「目的まで含めて復唱して」と、まだ話していない第二段階まで理解ができているか確認する使い方ができるので、受け手の理解力に合わせて情報量をコントロールしやすくなります。
目的が言えなかったら、目的を伝えたうえで「5W3Hで復唱してみて」と、順に段階を降りていくのです。
受け手に合わせた指示出しをすることが重要
第一段階は、いわゆる「○○をやっておいて」という指示です。
これだけで納期までに完遂してもらえるならば、指示者としては一番楽です。
ルーチン業務で、何度も経験している部下には、これで十分です。
むしろ詳細な指示書は受け手にとって読む時間が増えるだけで、かえってタイムロスです。
第二~四段階は、それぞれ5W3Hの応用です。5W3Hは、学生のときに勉強する以下の英単語の頭文字をまとめたものです。
指示内容を理解するための情報量として基本に据えるべき視点です。
WHY | 目的、理由、効果 |
---|---|
WHAT | 何を、目標 |
HOW MANY | どこまで、達成水準 |
WHO | 誰が、誰に |
WHEN | いつ頃、いつまでに |
WHERE | どこで、対象範囲 |
HOW | どのように、方法 |
HOW MUCH | コスト、費用 |
第二段階の目的は、5W3HのWHYです。
目的を理解すれば、それ以外の分解ができるということであれば、指示者がわざわざ言う必要はありません。
もちろん、5W3Hで復唱できなければ、指示者が第三段階に降りる必要があります。
第四段階の仕事の段取りは、HOWの分解です。
「準備→作業→確認→後片付け」で復唱できるか確認をしましょう。
ちなみに、作業だけの分解では、準備ができず結局仕事をスタートできないといった事態も発生するため、お勧めいたしません。
第四段階まで詳細に分解しても、何をしていいか分からないという受け手なら、第五段階として完成形の提示や実演が必要となります。
ここまで来ると指示をすることにかなりの時間が必要になってきます。
しかし、適切な成果を生み出し、部下が迷いなく仕事をするためには必要な時間です。
出社が当たり前の時代は、指示の受け手の顔つきや雰囲気で理解しているか、理解していないかを感じることができました。
リモートワークではそれが難しいので、指示の出し方にも工夫が必要でしょう。
また、指示の5段階は、指示者だけではなく、受け手にも共通言語化されていることが必要です。
指示の確認や相談が苦手、あるいは本当は分かっていないのに分かっていると早合点している部下に対しても、分解できるか、理解しているかを確認する工夫になりますので、参考にしてみてください。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 取締役社長 永田 健二
- 1999年 静岡大学卒。中期経営計画策定支援、組織風土分析支援、人事制度構築支援、人事制度運用支援などに従事。新入社員研修、中堅社員研修、管理者研修、各種個別研修など研修講師としても活躍中。
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