新入社員をどのように育成するか?~恐る恐る金の卵に接する上司へ

人材育成

2024年度がスタートしました。

今年は例年に比べて桜の期間が長く、美しい桜を見上げながら入社式を迎えた新社会人が多かったのではないかと思います。

学生生活から社会人生活への第一歩は人生の大きな節目であり、一日も早く職場に慣れ、戦力となって活躍されることを祈っています。

今の新卒社員は「金の卵」のような存在

2024年は、中小企業の賃上げが、32年ぶりに4%超の高水準となりました。

中小賃上げ4.42%、32年ぶり高水準 非正規にも広がる
出典:2024年3月15日日経新聞電子版

【ご参考】厚生労働省調査 賃上げ率推移(2023年までの民間主要企業の賃上げ率)

出典:内閣官房ホームページ

その最大の要因は初任給の引き上げであり、人手不足が常態化するなか人材獲得競争が激化しています。

今や、新卒社員は「金の卵」です。

完全な売り手市場のなか苦労して獲得した新入社員。

新入社員研修を終えて、現場研修、本配属へと進む段階にあるこれからが、育成の本番といってもよいでしょう。

令和時代の新卒社員の特徴

弊社は、30年以上集合型の新入社員研修を開催しています。

コロナ禍の2年間はやむなくオンラインでの研修となりましたが、2023年から対面研修が再開し、2024年も多くの新入社員に参加いただきました。

高校生時代、大学生時代というもっともエネルギーに満ちた活動の機会をコロナによって奪われ、窮屈で不安な生活を余儀なくされた世代。

想像できないほどの体験の機会損失があったことは容易に推察できます。

学校行事の中止、オンライン授業、マスク、黙食、ソーシャルディスタンス。

これらが与えた負の影響が社会人生活でどのように表出するかは数年先になって初めて証明されるでしょう。

更にそこに重なるのが、多様性を尊重する時代変化です。

世の中はダイバーシティー&インクルージョンの名のもと、“個の尊重”に重きを置いた指導に移行しています。

これが、指導の難しさに繋がっています。

多くの企業が新人の扱いや指導方法に課題を抱えている

先日、企業の若手社員・新入社員の合同トレーニングに登壇する機会がありました。

2024年入社は、企業グループ全体のトレーニングに参加し1週間みっちり社会人の基本動作を学ぶプログラムを受け、翌週は所属会社に戻って2021年、2022年、2023年入社と一緒に学ぶというスタイルです。

私が講師として期待されたテーマは、「わかる」から「できる」でした。

前週インプットした内容をアウトプットし、現場での具体的な場面を想定した行動の仕方、考え方を体感するというワーク主体のプログラムです。

新卒社員、先輩社員の態度を見て開口一番私が伝えたことは、“型の大切さ”でした。

挨拶、お辞儀、身だしなみ、言葉遣い、名刺交換、電話応対、指示の受け方、報連相等々。

「社会人として必要な基本動作が身についていない人、つまり、我流で“型”の無い人は“型無し”です」と。

前の週で学んでおくべき基本動作を、しつこく繰り返し指導することに、「よくぞ言ってくれた」と思ったか、「厳しくて冷や冷やした」と感じたか。

先方のコメントは前者でしたが、今、多くの企業が、何をどのように、どの程度伝えていくか、どこまでを強制してどこまでを本人の自主性に任せるかについて、恐る恐る迷いながら指導しているように感じています。

新人の成長を加速させるために実践すべきこと

それでは、今後、職場において新入社員をどのように育成していけばよいのでしょうか。

今からでも遅くはありません。

以下を実践してください。

横文字が難しく感じますが、要は搭乗する乗船するという意味のオンボーディング。

まさに会社という船に乗り、新しい組織文化に馴染み、自分の居場所を確立していきながら力を発揮していく手助けをするプログラムの作成です。

今や、新入社員だけでなく、中途入社の社員にとっても重要なプログラムとして位置づけられています。

会社の理念、目標から勤怠管理や各種届け出の仕方、業務を進める上での携帯、PCの取扱いといったビジネスツール、入社後の学びのプログラムやどのような期間で何を習得していくのかなどのOJT(オンザジョブトレーニング)計画。

人事評価制度の運用と面談のタイミングなど、多岐にわたります。

「うちは、新卒はたまにしか来ないので必要ない」などと思ってはいけません。

この内容こそが、「成長の見える化」であり、「指導の見える化」なのです。

そして、そのなかに、会社としてこれだけは守って欲しいという仕事の“型”や、あるべき社員像、行動指針を明記することも忘れてはいけません。

これを総務が主体となり現場の管理職と一緒になって作成する。

毎年見直し、入社の都度入社した社員に、不足情報を聞き出して書き加えていく。

これを繰り返していくと、自社オリジナルのオンボーディングプログラムが出来上がります。

社員育成は「急がば回れ」。

覚えて欲しいことを明文化して残していくことが大切です。

前述の企業例のように、先輩社員と一緒に学ぶ機会をつくることも有効です。

今回は、先輩社員自身がコロナによって新入社員研修を受講できなかったという事情を考慮したものですが、それとは別に、年次の異なる社員同士、一緒に学ぶことで社内人脈をつくることもできました。

更に、現場での具体的な対応の仕方や失敗談を先輩から聞くことで、新入社員の不安を軽減させる効果もありました。

まさにコロナ禍の影響が残る今こそ、有効であると実感しています。

今後、新入社員研修を十分に受けていない社員が、先輩として教える立場になりつつあります。

今一度、若手中心に基本動作を見直す必要があると思います。

直属の上司だけに育成責任を負わせるのではなく、皆で育成していく、そして育成する側も成長できるような教育訓練を行うことが大切です。

新入社員は、簡単な仕事から徐々に仕事を覚えていくことになりますが、そこでぶつかるのは、指示されたことが理解できない、指示通りできないという壁です。

一つひとつ成功体験を積ませることで、仕事への自信とやりがいを持たせることが大切であり、今こそ、この指導者訓に立ち返りましょう。

もともとは上杉鷹山の言葉といわれていますが、山本五十六の指導者訓として有名です。

新入社員にとって成長とは、「できることを増やす」ことであり、それは毎日の上司の指示命令と本人の報連相によって、積み上げられていくものです。

教える側が相手をよく観察して、適切にフィードバックする。

仕事の出来栄えがいいのかダメなのか、ダメならどこをどうすればいいのか、相手が分かるようにやってみせる、やらせてみる。

この手間を惜しんではいけません。

新入社員の育成を任された上司、先輩の皆様へ

新入社員を預かった上司や先輩は、この半年間は育成のための時間を捻出して、指導にあたってください。

貴方の指導者としての熱量と時間量こそが、新入社員の成長を決定づけます。

前述で紹介した合同トレーニングや各種施策についてプログラムを聞きたい相談したい、講師を依頼したい方は、人事コンサルタントが対応します。

お気軽にご相談ください!

関連セミナーのご案内

また、関連するオンライン研修を以下のように開催します。ぜひともご活用ください!

【OJT指導者訓練講座】
2024/08/20(火) 13:00~16:30

【ビジネス基礎研修】
2024/05/10(金) 9:30~16:30
2024/09/24(火) 9:30~16:30

【マナー&コミュニケーション講座】
2024/12/06(金) 13:00~16:30

【実戦マネージャー短期養成コース】
▼7月開講
第1講:2024/07/12(金) 9:30~16:30
第2講:2024/07/26(金) 9:30~16:30
第3講:2024/08/08(木) 9:30~16:30

▼10月開講
第1講:2024/10/23(水) 9:30~16:30
第2講:2024/11/05(火) 9:30~16:30
第3講:2024/11/20(水) 9:30~16:30

【部下の本音を引き出す傾聴入門講座】
2024/06/11(火) 13:00~16:30
2024/12/20(金) 13:00~16:30

筆者紹介

アタックスグループ シニアパートナー
中小企業診断士 産業カウンセラー 北村 信貴子
大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に人事制度構築・運用と人材育成業務に従事。現在は、マネジメントの傍ら後継者・幹部育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に注力している。金融機関での講演、セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく、迫力ある指導に定評がある。
北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました