なぜ、若手営業が辞めるのか?~令和時代の若手営業パーソンとの向き合い方

人材育成

「また人が辞めた・・・」
「ただでさえ人手不足なのに」
「特に、若手社員の離職が目立つ」

皆さんの会社には、こうしたお悩みはないでしょうか。

私は、企業の現場に入り込み目標達成に向けた支援をおこなうコンサルタントです。
対象は、主に営業部門。組織全体の営業力を高め、事業目標を達成する―そのためのコンサルティングを実施しています。

同時に、最近では「若手社員の離職」について、経営者・経営幹部の方から悩みを打ち明けられる場面も増えてきました。

「2018年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」によると、新卒入社予定者1人あたりの採用コストは、53万4,000円。かつ、採用活動において企業は、金銭的なコストのみならず「時間」や「労力」も投資しています。

実際、現場では「『ようやく一人で営業に出られるようになった』と思った時に辞めてしまうくらいなら、早いうちに辞めてもらった方がよかった」と口にする経営者もいます。

しかし、ゴールは採用することではありません。

例えると、夫婦関係と同じです。
結婚するときは、結婚はゴールではなく、二人で円満に生活していくために結婚をしたはずです。

ですが、時間の経過とともに、二人の生活の中で問題が発生し、なかなか解消されない・・・。だから、「離婚」の道を選ぶのです。

若手社員の退職の意思は、会社に「離婚」を申し出たようなものといえます。

では、入社した後、若手営業が離脱しないようにするために、企業としてどのようなアプローチが必要なのでしょうか。

若手社員が抱く不満とは

ここでご紹介するのは、「ハーズバーグの二要因理論」です。

これは、アメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが提唱した、職務満足および職務不満足を引き起こす要因に関する理論です。

人間の仕事における満足度は、ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるわけではありません。

つまり、「仕事における満足」に関わる要因と「仕事における不満足」に関わる要因は、別のものであるという考え方です。

この満足に関わる要因を「(1)動機づけ要因」、不満足に関わる要因を「(2)衛生要因」といいます。

順に見ていきましょう。
まず、「(1)動機づけ要因」についてです。

例えば、
・達成すること
・承認されること
・仕事そのもの
・責任
・昇進
などです。

一方、「(2)衛生要因」には、
・給与
・仕事上の人間関係
・会社の方針、管理
・職場環境
・福利厚生
といったものが挙げられます。

さらに、「(2)衛生要因」のうち、「給与」「会社の方針」を取り上げて深堀りしてみます。

はじめに、「給与」について取り上げます。

決して安くない給料にも関わらず、「『給料が安い』と言って若手社員が辞める」という声をよく聞きます。

この背景にあるのは、若者の2.7人に1人が抱えている借金問題です。

2019年3月、独立行政法人日本学生支援機構が発表した奨学金事業の概況によると、学生の2.7人に1人が貸与奨学金を利用しているといいます。

言い換えると、37%の学生が若い時に返すべき借金を抱えているのです。このことから、若手社員の『給料が安い』との言葉にも頷けるかもしれません。

また、「会社の方針」についても同様です。

就職先の決め手と入社後のギャップ

ここでは、「新卒学生が、就職先を決める際にどのようなポイントを見ているのか」を見てみましょう。

ディスコの「2019年卒採用マーケットの分析(就職・採用戦線総括)」によると、就職先企業を最終的に決めた理由のトップは、「社会貢献度が高い(32.1%)」でした。

背景にあるのは、リーマンショックや東日本大震災の発生によって、全般的に働くことに関する意識に変化があるといわれています。

ここでご紹介したいのが、トヨタ自動車の豊田章男社長も学ぶ、「年輪経営」を推進する伊那食品工業の塚越会長が、自著の中で述べている次の言葉です。

忘れてはならないのは、人というものは特に若い人は、心の底では正義感を持っているということです。

会社や経営者が、反社会的なことをしていれば、社員のモチベーションは確実に落ちます。

反対に、自分たちのやっていることが、「世のため、人のため」になると確信できれば、どんなに苦しくても頑張って働こうと思うものです。

(塚越寛 著 リストラなしの「年輪経営」より)

「社会貢献度が高い会社で働きたい」「世のため、人のために仕事をしたい」、入社前にそんな思いを抱いた若手社員ですが、

入社後の実情は、目先の営業目標ばかりに追いかけられ、お客様のため・社会のためといった言葉はほとんど社内で飛び交いません。

「顧客第一主義」との方針はあるものの、現場ではないがしろにされ形骸化している。そんなギャップを、若手営業社員が感じているおそれがあります。

その不満足が積み重なった時、彼ら彼女らが選ぶ道としては、・・・
ということがあるかもしれません。

最近の若者の傾向は「いいね」

次に、「(1)動機づけ要因」を見てみましょう。

いくつかある要因のうち、最近の若者の傾向として押さえておきたいのは、「承認」です。

2019年卒の学生向けに、株式会社i-plug(アイプラグ)は「『働き方』に関する意識調査」を実施しました。

「入社後の活躍・評価についてどう思いますか?」という問いに対し、トップの回答は「自分が活躍でき、社内外から評価される仕事ならば、自分の『やりたい仕事でなくても良い』」。選んだのは45.8%、約半数の学生がこう答えています。

つまり、この調査からは「他者から認められたいという『承認欲求』の高まり」が見えてくるのです。

背景にあるのは、身近にSNSがあり、他者から「いいね!」をもらうことがあたりまえになっている環境です。

一方、営業社員の視点から見た「承認」、つまり評価項目は、その大半が受注をはじめとする「結果」にフォーカスされる傾向にあります。

営業として、与えられた目標を達成することはもちろんあたりまえのことです。なぜなら、それが営業の役割だからです。

しかし、中堅社員にいわゆる「優良顧客」が割り振りされており、若手社員は自らお客様を獲得しなければならず、成果を出すにはタイムラグを要する。

そんな中、隣に座る先輩社員を見ると「打ち出の小槌」「棚ボタ案件」と称される、お客様からの引き合いでもって目標を達成している・・・その姿を見て、ジレンマを感じる若手社員もいるのではないでしょうか。

会社が若手営業に期待する役割・成果は当然にあります。同時に、会社と社員は「夫婦関係」でもあるのです。

今回ご紹介した最新の若者の傾向を踏まえ、「営業社員が辞めずに続けられる」ための“場づくり”を考えてみてはいかがでしょうか。

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筆者紹介

岩山真子

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ コンサルタント 岩山 真子
大手賃貸不動産業のFC加盟会社での法人営業部を経て、アタックスへ入社。前職では、新規立ち上げ部署として上場企業をはじめとする3,000社に対しアウトバウンドセールスを行い、部署での提携社数は550社に上る(FC加盟店350店舗において全国1位)。また、個人としては入社後歴代最速で社長賞を受賞。平成生まれの若手コンサルタント。「経験年数の少ない若手社員こそポテンシャルを秘めている」という信条から、若手社員でも成果を残せる営業手法を広め続けている。

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