最近、次の質問を受けることが多くなっています。
「アベノミクスの恩恵により、上場企業を中心として賃上げ、採用人員数の増加が多くなっているようですが、中小企業の実態はどのような状況ですか?」
筆者が担当している顧問先の状況は、「新入社員の初任給をあげなければ、必要な採用数の確保が困難であり、そのため、既存社員のベースアップをせざるを得ない」「従業員の高齢化が進んでおり、新卒または中途採用の補充をせざるを得ない」といった、やむを得ない理由によって、検討している企業は多くなっていますが、総じて賃上げおよび採用に関しては、慎重な企業が多い状況です。
この理由は、将来の業績への不安があり、賃上げおよび人員数の増加に対する支払原資の確保に確信が持てないことにあります。
支払原資の確保は、理論的には、社員の稼ぎ高の伸びと人件費の伸びが連動していることが必要となり、この社員の稼ぎ高は、一人当たり付加価値((売上高-変動費)÷従業員数で算出)で表すことができます。
優良企業の一人当たり付加価値は、業種を問わず、年間1千万円程度であり、この一人当たり付加価値に対する人件費への分配率は50%程度となっており、人件費に対して2倍程度の稼ぎ高があることを意味しています。
この数値は優良企業の共通の特徴であり、この場合、社員の稼ぎ高と人件費のバランスが適正に保たれています。
このバランスを一定に保つためには、賃上げおよび人員数の増加によって、人件費は増加しますので、付加価値を向上させるしか、支払原資の確保はできないことになります。
中長期的に企業を成長させるには、賃上げおよび採用は行わざるを得ないため、これを実現するには、自社の付加価値向上を常に考えそれを実現し続ける「強い会社になる」ことが必要です。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役 錦見 直樹
- 1987年 富山大学卒。月次決算制度を中心とした業績管理制度の構築や経理に関する業務改善指導を中心としたコンサルティング業務に従事。グループ7社を有す中小企業の経理・経営企画部門出向中に培った豊富な経理実務経験を武器に、経営者、経理責任者の参謀役として活躍中。
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