先日、長いお付き合いをしている会社の後継者A氏とお会いしました。その会社は製造業の中堅企業で、最近は業績が芳しくない状況です。この時期に経営を引き継ぐのは大変ご苦労なことです。
A氏は、ものづくりに関しては立派に技術等を引き継がれているのですが、会計面は関与されていなかったこともあり不案内でした。そこで、「財務の視点で経営を見る」ことができるよう、弊社が財務顧問として伴走するご提案をするためにお会いしたわけです。
その時、A氏は、「確かに月次決算をきちんと行い、数字を見ながらの経営は大切だと思いますし、数字を読むことは経営者には重要なスキルだと認識しています。 ただ、我が社の様な下請けに業績を改善する手段があるのか疑問です。」と言われました。 下請の立場で発注する大企業に対して値上げの交渉ができるわけはなく、決められた材料や工程の品質を落とすことは不可能です。残るは固定費の削減に取り組むしか打ち手はありません。
このような環境下で「業績を改善するために月次決算を見ながら議論しましょう」と言われても「よし、社長としてがんばるぞ!」という気持ちになれないのは理解できます。
しかし、我々もそこで「そうですね~」と同意していては「社長の最良の相談相手」というビジョンが泣くことになります。同席した弊社コンサル部門の役員Bがこのように質問しました。
「確かに決められた価格や製造方法の範囲で業績を改善することは簡単なことではありません。ところで、貴社は受注時に見積もりを出されると思います。その見積価格から交渉が始まると思いますが、最終的に決定した価格は利益が出る価格ですか、赤字になる価格ですか?」
それに対してA氏は
「もちろん黒字になる価格で受注します。 でも、最終的には厳しい業績になってしまいます。」
皆様はどう受け止められたでしょうか?このようなケースはレアケースではなく、様々な業種で頻繁ではないにしろ見られる現象です。 つまり、利益がでる価格で売ったはずなのに、決算を締めてみたら思ったほど利益は出ていなかった、という事象です。
Bが続けて発言します。
「利益が出る予定の受注金額だったにもかかわらず最終的に利益が残らないのは、見積もり通りのものづくりができなかったか、そもそも見積もりが間違っていたかのどちらかですが、その原因の分析ができていないことが貴社の問題ではありませんか?財務の視点で経営を見るということは、管理会計を使ってどこで見積もり通りにできなかったのかを明らかにすることです。問題個所を明らかにして、そこに手を打ち業績を改善することに繋げるのです。」
A氏は、見積り通りにものづくりができていれば黒字になるのに、結果は違っていることを深く追求してこなかったと反省され、今後、管理会計を使った業績管理を幹部の皆さんと進めていくことを決められました。もちろん、弊社のBが伴走することは言うまでもありません。
ご紹介した事例は、中堅中小企業の製造業にはぜひ取り組んで頂きたい内容です。当初の見積通りのものづくりができない原因、例えば不良が多い、段取り替えの時間がかかりすぎている等を数字で発見し、改善の手を打ちその効果を測定するといったPDCAをきちんと回す業績管理は経営の必需品です。
また、製造業だけでなく建設業や卸売業でも同様の問題が必ず潜んでいます。 皆様の会社でも「管理会計による業績管理」を徹底的に活用し、今以上の業績を上げていただくようお願いいたします。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス戦略会計社 代表取締役会長 片岡 正輝
- 1952年生まれ。アタックス税理士法人の前身である公認会計士今井冨夫事務所に入社。現在は、アタックスグループの統括マネージャーとして、広範囲な知識と豊かな経験という両輪を武器に、経営・財務・会計業務を中心に計画経営の推進、経営再構築、事業承継等のコンサルティング業務に従事、経営者の参謀役として絶大なる信頼を得ている。
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