「収益性の分析(その1)~売上高総利益率」からのつづきです。
(2)売上高営業利益率
売上高営業利益率は、「売上高」に対する、会社の本業から得られた「営業利益」の比率を表しており、売上高営業利益率が高いということは「営業活動が効率よく行われている」ことを示します。
営業利益は、売上総利益から営業活動に使われる「販売費」と「一般管理費」を差し引いたものですから、販売費と一般管理費を削減すれば営業利益が増え、売上高営業利益率は高くなります。
販売費は販売員の給料、旅費交通費、販売手数料、広告宣伝費といった売上を上げるのに必要な費用ですから、抜本的に営業の仕組みや販売戦略を変革させないことには、簡単に削減することは難しいかもしれません。
他方、一般管理費は主に本社で発生する間接費ですから、売上とは比例しない固定費と言えます。
損益分岐点の解説のところでも説明しましたが、これまで会社では聖域と言われていた本社の間接費をいかに削減するかという問題は現在、最も重要な経営改革のテーマの一つです。
これからの経営は固定費を圧縮したローコスト経営が基本です。
(3)売上高経常利益率
売上高経常利益率は「経常利益」が分子です。
経常利益は、会社の本業で獲得された営業利益に、本業以外の金融取引、投資活動で発生した支払利息、受取利息、受取配当金といった営業外損益を加えたものです。
経常利益は会社が経営をしていく過程で経常的に生み出される利益ですから、臨時的に発生する土地の売却による利益(特別利益)あるいは不良の子会社を処分した投資有価証券の売却損(特別損失)などは含まれません。
つまり、売上高経常利益率は、本業以外も含めた「会社の通常の状態での収益力」を表していると言えます。
(4)付加価値率
=(売上-変動費)÷売上高×100
付加価値率は「付加価値」が分子です。
「付加価値」は、売上から商品仕入原価、材料費、外注加工費といった変動費を差し引いた残りです。
変動損益計算書で示される「限界利益」と実務の上では同じです。
なお、「付加価値」は、自社が生み出した価値を見る目的の表現で、
一方、「限界利益」は、変動費を引いた残りで固定費をまかなえるかという採算性を見る表現です。
が、結果として、売上から変動費を差し引いたものになりますので、目的は違えど実務上では同じと考えていいでしょう。
付加価値率は、売上を上げると直接的にどれくらい儲かるかを示しており、「商品力の強さ」を表すものと言えます。
卸売業や小売業では売上総利益=付加価値ですが、
製造業や建設業の場合は、売上原価のなかに固定費も混在していますので、売上総利益<付加価値 になります。
ナンバーワンよりもオンリーワンとよく言われますが、自分のところにしかないオリジナリティーのある商品や製品を扱っている会社は付加価値率が高く、収益性も高い優良企業と言えます。
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筆者紹介
- アタックスグループ 代表パートナー 公認会計士・税理士 丸山 弘昭
- 数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
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