大胆な改革は危機感の共有から始まる~即対策できる組織へ!

会計

経営再建中の日本航空(JAL)が、今秋には再上場する予定であると発表されました。JALは、2010年初め会社更生法の適用を申請しましたが、京セラ創業者の稲盛和夫氏を会長に迎えることで経営再建が本格化しています。

稲盛氏が、会長としてJALで最初に手掛けたことは社員の意識改革であったそうです。

稲盛氏の会長就任後、ある経済誌のインタビューで「JALは立派な会社としてチヤホヤされてきた長い歴史があるものですから、知らず知らずのうちに幹部が傲慢になってしまっていた。そのために顧客を失った。それが倒産の一番の原因だったと考えています。まずは社員の意識を変えるところから手をつけました」と語っています。

そして一番力を入れたのは、「この会社は潰れたんですよ」と社員に自覚してもらうことであったそうです。 JALでは意識改革のために、役員・幹部社員を集めた勉強会を繰り返し行ったとのこと。それと同時に現場の従業員にも「幹部の我々がいくら頑張っても、たかが知れている。皆さんの力が必要です」と頭を下げて歩いたというのです。

思うに、JAL再建の基本は稲盛氏が京セラを創業し、立派な企業に育てあげた過程で生み出された‘京セラ経営哲学’にあるのではないでしょうか。京セラの経営理念の根本は「従業員の物心両面の幸福を追求すること」ですが、その為には従業員から最大の力を引き出すことが前提となります。

この手法が今では有名となった京セラの「アメーバ経営」です。
稲盛氏はアメーバ経営の目的を「(1)市場に直結した部門別損益制度の確立 (2)経営者意識を持つ人材の育成 (3)全員参加経営の実現」であると述べられています。

アメーバ経営を一言で説明すれば、アメーバという小集団毎の付加価値を時間当たり採算性として測定する仕組み。各アメーバは時間制付加価値を一円でも多くしたいと懸命に努力することが求められます。

JALでは経営再建の為に大幅なリストラ(不採算路線廃止・人員削減・給与カット等)を実施すると同時に、アメーバ経営を応用して、部門別採算制度を導入し、社内のコスト意識を高めています。現在では路線別の採算も日次で分かるようであり、赤字であれば即対策が打てることにもなります。

このたびJALはパイロット出身の植木義晴氏が社長に就任し新体制がスタートしました。稲盛イズムを踏襲し、再び危機に陥ることが無いよう経営の舵取りをして頂きたいものです。

余談ですが、京セラはアメーバ経営をコンサルティングする事業も行っています。筆者の顧問先でもコンサルティングを受け成果を出している会社があります。

社長に成果を聞いたところ、「(1)自分たちがどれだけ頑張ったかという意識改革になった (2)アメーバのリーダーをすることでその人自身が育つ (3)PDCAが自発的にできる人材が増えた」と言っておられました。

厳しい時代です。経営改革をしなければならない会社も多いです。経営者・経営幹部の危機感の共有と、小集団の自立を促す管理会計制度(=アメーバシステム)の導入による全員参加経営は、経営改革の基本となるでしょう。

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー公認会計士・税理士 丸山 弘昭
数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
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