成長性の指標とは
成長性の指標では量的な指標と質的な指標が考えられますが、中小企業では量的な成長性指標よりも、質的な成長性指標がこれからは重要となってくるでしょう。
今後日本は、経済全体としては量的拡大は望めませんが、個々の会社は医療、福祉、環境、情報技術をはじめこれからの時代のトレンドと消費者のニーズに合ったさまざまな分野で経営活動を行うことで持続的に成長することができます。
成長性指標としては次のものが存在します。
(2)営業利益増加率
(3)一人当たり付加価値増加率
(4)自己資本増加率
(1)売上高増加率
会社の量的な成長を示す最も代表的な指標です。
かつての高度成長期においては、経済成長率や会社の属する市場の成長率以上に伸びていないと成長性のある会社とはみなされませんでした。
しかし、今の時代は、売上の成長を経営目標の第一に考えるのではいけません。
もちろん、売上高の成長をめざすことはいつの時代でも大切なことです。
ポイントは、「売掛金・受取手形の増加」「在庫の増加」「運転資金を確保するための借入金の増加」といった売上とともに増える傾向にある項目の動きや、利益率が低下していないか? という点に十分注意しながらバランスのとれた成長をめざすことです。
ひたすら売上を伸ばすことだけを目標とする規模追求型の経営は、人口減少社会、内需減少時代の今日では大変危険です。
経営者は、これからの経営の基本は「売上よりも利益」「売上よりもキャッシュ」であることを肝に命じておくことです。
(2)営業利益増加率
営業利益は会社が本業の営業活動で稼ぎ出した利益です。
本業でしっかり利益を稼ぎ出すことが、これからの経営の基本です。
「営業利益増加率」は、本業での会社の成長性をみる指標です。
(3)一人当たり付加価値増加率
=(当期一人当たり付加価値-前期一人当たり付加価値)÷前期一人当たり付加価値×100
「一人当たり付加価値増加率」は、従業員一人当たりの利益を稼ぐ力が、前期に比べてどれほど増加しているかを表しています。
人的経営資源の質的な成長性指標として、これからは最も着目すべき指標と言えます。
(4)自己資本増加率
文字通り、自己資本の増加率を示す指標です。
自己資本は、
・増資によって株主から資金を調達するか
・会社が利益を稼ぎ、税金、配当などを支払った後に残った剰余金(内部留保)
によって増えていきます。
会社の経営活動の結果生み出された利益による内部留保によって自己資本が増えていくのは、きわめて健全な経営ということができます。
一人当たり付加価値成長率とともに、重要な質的成長性指標と言えます。
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筆者紹介
- 丸山 弘昭アタックスグループ 代表パートナー公認会計士・税理士
- アタックスグループ 代表パートナー 公認会計士・税理士 丸山 弘昭
- 数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
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