東芝の不適切会計を調査してきた第三者委員会がまとめた調査報告書の要約版が7月20日に公表されました。
歴代3社長が現場に圧力をかけるなどして、「経営判断として」不適切な会計処理が行われたと断定。
「経営トップらを含めた組織的な関与があった」と責任を厳しく指摘しています。
約7年間に行われた利益操作は1562億円にものぼります。報告書によれば、同社の数値目標設定時には、「チャレンジ」と呼ぶ過大な収益目標と損益改善要求を経営トップが社員に課していました。
企業が高い数値目標にチャレンジし続けることは企業の健全な成長のために必要ですが、この目標は、あくまで社員個々の主体的な取り組みによって達成されるべきものであり、そのためには、社員が納得できる目標である必要があります。
これに対し、同社の数値目標は組織の上層部から社員に強制的に割り当てるノルマとよばれるものであり、社員を、短期的な利益を稼ぐための道具と考える経営者に多く見られる目標設定方法です。
また、目標の進捗確認の場において、同社の前社長は中間決算の最終月末にあたる2012年9月27日の社内会議で、パソコン事業部に「残り3日で120億円の営業利益の改善」を強く求め、翌28日には結果を報告するよう求めたようです。
このような理不尽な要求が、社員が不適切な会計に手を染めた元凶です。
本来、営業利益の改善は相応に時間のかかる複数要因によって実現されるものですので、社員が熟考した正しい過程を経て(ラッキーヒットではなく)改善されることが不可欠となります。
同社の経営陣の発想は、利益額等の量の達成のみを目標とした短期的思考であり、社員の成長に基づいた再現可能な良質な利益を中長期的に追求するという観点が欠けていたように感じます。
「遠きをはかる者は富み 近くをはかる者は貧す」という二宮尊徳翁の箴言通り、企業においても、中長期的な利益を社員の成長とともに向上させていく方策を考え、実行していく企業のみが富を実現できるのです。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役 錦見 直樹
- 1987年 富山大学卒。月次決算制度を中心とした業績管理制度の構築や経理に関する業務改善指導を中心としたコンサルティング業務に従事。グループ7社を有す中小企業の経理・経営企画部門出向中に培った豊富な経理実務経験を武器に、経営者、経理責任者の参謀役として活躍中。
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