海外赴任者が現地で悩まないための2つの会計知識とは?

会計

春は人事異動の季節ですね。新たな赴任先として「海外子会社」の辞令を受け取った方もいらっしゃるのではないでしょうか?海外赴任は生活に慣れるだけでも大変ですので、しっかりとした準備が必要です。

赴任後の悩みは様々ですが、最も頭を痛めるものの一つに赴任先の「財務管理」があります。 日本で経理業務を経験していない赴任者が多いせいか、赴任後に苦労される方が多いようです。 とはいえ、赴任に備えて、今から経理を経験するというような悠長なことはいっていられませんので、海外子会社で最低限必要な財務管理にポイントを絞って理解しておくことが、赴任前の有効な対応策の一つではないかと思います。

では、子会社の財務管理を円滑に行うためのポイントとはいったい何でしょうか?筆者は以下のように考えます。

・変動損益計算書を理解すること
・勘定科目内訳書を使えること

1つ目の変動損益計算書は、費用を、売上高に比例して増減する変動費と、売上高に比例せず一定額の支出がある固定費に区分した損益計算書です。 売上高から変動費を引いて、限界利益という利益を計算し、限界利益から固定費を引いて営業利益を求めます。

変動損益計算書を使うメリットは以下の2点です。

・限界利益率がわかる(限界利益額÷売上高)
・損益分岐点売上高がわかる(固定費÷限界利益率)

限界利益率は、とても大切な指標です。限界利益率が悪化すると、固定費を賄う限界利益額も減少しますので、赤字の危機となります。 この場合、対策として固定費の削減を検討すべきですが、すぐに削減できないこともあるため、日頃から限界利益率の推移には気を付ける必要があります。悪化したら、すぐにその原因を突き詰め、対策を打つことが必要です。

また、損益分岐点売上高は、黒字でも赤字でもない、利益額がゼロになる売上高ですので、子会社の経営を任された赴任者としては、最低必達売上高として、常に頭に入れておく必要があります。

2つ目の勘定科目内訳書を使う目的は、不正対策を含む「財産防衛」です。 子会社には、売掛金・在庫・固定資産などの資産がありますが、これらは最終的には、キャッシュとして回収する必要があります。 したがって、売掛金や在庫の詳細内容、つまり内訳を毎月チェックし、内訳書に記載されているものが、本当にあるのか、確認します。

実際にあるならいつキャッシュになるのかを見極めます。 また、記載されている在庫などが無いなら、なぜないのかを突き止めます。海外の子会社では、在庫や売掛金が実際には存在しないことが珍しくないので内訳書のチェックはとても重要です。

チェックが厳しい、という雰囲気は不正を働きにくくする作用があります。 最低でもこの2つの知識を身に付けて赴任していただくと、財務管理での悩みは相当に減ると思います。

アタックスでは、この2つの知識を身に付ける研修や、海外赴任時の税務処理サポートなどを支援しています。赴任先で悩まないためにも、是非活用ください。お問い合わせはこちらから

筆者紹介

株式会社アタックス 海外サポート室 室長 諸戸 和晃
大手住宅会社勤務を経てアタックス入社。株式公開、企業再生、M&A支援等のコンサルティング業務に従事。2011年より2年間北京赴任。赴任中は北京中央財経大学への留学、中国系会計事務所「中税咨询集团」(北京)で業務。帰国後、海外サポート室の室長として、中堅中小企業の海外進出に関する支援業務に注力している。
諸戸和晃の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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