海外M&Aの波が中堅中小企業にも!~専門家活用のススメ

会計

最近、新聞紙上で「上場企業A社、米国△△企業を〇億円で買収」という記事を当たり前のようによく見ます。

このようなクロスボーダーのM&A(国境をまたいで事業を買ったり、売ったりすることを指す)は、上場企業の専売特許と思われている方が多いのではないでしょうか?
実はそんなことはないのです。

私どもアタックスのように主に中堅中小企業をクライアントとしているコンサルティングファームにおいても、海外関係のM&Aは増えてきています。

多い時には同時に3本のクロスボーダーのM&Aをサポートしたこともあります。

中堅中小企業による事業買収で海外が絡むケースとしては、海外の会社を直接買収するというよりも、買収対象の日本の会社が海外に主要工場や主要販売子会社を保有しているというケースが一般的です。

日本の会社を買収したつもりが、親会社以上に大きな子会社が海外にある、というのもよくあるケースです。

日本の親会社の売上が5億円に対し、海外子会社の第三者(親会社等以外)への売上が8億円というケースもありました。

ところで、中堅中小企業の場合、意外と親会社も海外子会社のことを把握していません。

M&Aに際し現地調査に行ったとき、架空在庫だったり、あるべき資産がなかったりと、様々な問題が発覚するケースが多々あるのです。

従って、海外事業のM&Aに関しては、徹底的に調査をすべきです。

例えば香港では、会計監査がすべての会社に義務付けられています。

あるM&A案件で売主の社長は、同社の中国子会社は、ルール通り会計監査人の監査証明をとっているから、問題はないという主張を堂々とされていました。

その会計監査報告書を入手して読んでみますと、「この決算書は適正に表示されている。」という文言はどこにもありませんでした。
(監査用語では、決算書が正しく作成されているという意味が、この「適正に表示されている」に該当します。)

それどころか、売掛金が本当に存在することが立証できず、「この決算書が適正に表示されているかどうかわからない」旨の記載がありました。

親会社は、このような事実を把握しておらず、その後、買い手企業から相当厳しい追加調査を受けることになりました。

これは極端な例かもしれませんが、日本では中堅中小企業は、会計監査を受ける状況がほとんどないため、会計監査に慣れていません。

従って、公認会計士による監査を受けているから当社は大丈夫、と短絡的に思ってしまい、先ほどのような問題にぶつかることも少なくないのです。

日本と海外では、会計制度、人事に関する考え方、商習慣等が全く違います。むしろ、日本の常識は通用しないと思った方がいいかもしれません。

事業買収後、海外子会社を経営できるのか、また他にどのような問題点があるのか、事前に十分に検討することが重要です。

アタックスグループは、皆様のお役に立てるよう、海外サポート室が中心となって海外のネットワークを広げています。海外にある会社の調査も対応可能です。お気軽にご相談ください。

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー 公認会計士・税理士 林 公一
1987年 横浜市立大学卒。KPMG NewYork、KPMG Corporate Finance株式会社を経て、アタックスに参画。KPMG勤務時代には、年間20社程度の日系米国子会社の監査を担当、また、数多くの事業評価、株式公開業務、M&A業務に携わる。現在は、過去の経験を活かしながら、中堅中小企業のよき相談相手として、事業承継や後継者・幹部社員育成のサポートに注力。
林公一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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