味の素が、カルピス株を1000億円でアサヒホールディングに放出したという記事が新聞を飾りました。味の素の今期の業績は 過去最高益の業績であり、放出するカルピス事業も2011年3月期の営業利益は45億円、2012年3月期はさらに増益で56億円を確保しており、業績は大変堅調です。
イメージそれでは何故儲かっている事業をあえて放出するのでしょうか。それはカルピスの事業が、味の素単独の営業利益率や資本効率と比較して見劣りすることが上げられます。
(味の素の11年3月期の国内食品事業の営業利益率6%に対し、カルピス営業利益率は4%。自己資本利益率ROEも味の素の連結ベース5%に対し、カルピスは3%。)
味の素はグローバルカンパニーを目指しており、ROEも2014年3月期までに8%に高める計画とのこと。海外の食品企業と戦うために、より高い収益性を求めて選択と集中を図った結果といえます。
このように競争力を強化するためには、
【1】ライバル社と比較して、どこが強くどこが弱いのかを分析した上で
戦うフィールドを選択(海外、国内、地域限定)する。
【2】どの事業または商品、サービスで戦うのかを決定する。
【3】収益性をさらに高めるベストなコスト構造を作る。
といったことが重要です。この3点を意識して戦っている企業は、景気に左右さることなく、黒字を維持しています。
グローバル化が進展し、日本の産業構造が大きく変化しようとしている現在は、自社の方向性を今一度見直すことが必要であり、中堅中小企業の経営者の皆様も味の素のように、今までとは一味違うが方向性が明確な戦略を是非とも策定いただきたいと思います。
筆者紹介
- アタックスグループ 主席コンサルタント 川越 章
- 1978年 青山学院大学卒。General CFO (日本CFO協会及び米国財務プロフェッショナル協会認定資格)。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。80年 アタックス税理士法人の前身である今井会計会計事務所に入社。税務業務、経理支援、民事再生、企業の再建、企業の成長支援等の業務に従事。現在はクライアント企業の経理・財務の社外CFOとして、またアタックス社長塾にて後継者のコーチとしても活躍中。
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