ESG会計とは?社長が知るべき会計トレンド~会計基準が経営に与える力を事例紹介

会計

世界企業が挑むESG会計とは

欧米韓の世界的企業8社(※)が2022年にも、環境、社会への影響を企業間で比較できるようにする新たな会計基準を導入するとの報道がありました。

※以下8社
・欧州化学最大手のドイツのBASF
・自動車部品世界最大手のドイツのボッシュ
・ドイツ銀行
・セメント世界大手のスイスのラファージュホルシム
・製薬大手のスイスのノバルティス
・たばこ大手のアメリカのフィリップ・モリス・インターナショナル
・ITサービス最大手のドイツのSAP
・韓国大手財閥のSKグループ

これらの企業がNPO法人「バリュー・バランシング・アライアンス」を設立し、大手監査法人4社も協力して枠組み作りを急いでいるとのことです。

昨今、ESG投資という言葉をよく耳にされるかと思います。

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとったもので、従来の財務情報だけでなく、これらの要素も考慮して投資先を決定することをいいます。

ESG

企業に社会的責任の遂行を求める機運の高まりを受け、短期的な利益ではなく企業の持続可能性に焦点を当てて投資をするという考え方であり、日本でも機関投資家を中心にこの考え方が広がってきています。

今回の報道は、いわば「ESG会計」とも言えるものです。

各企業のESGを踏まえたパフォーマンスを統一ルールで定量化することで、持続可能性の高い経営を行っている企業を正しく評価していく仕組みを作ろうとしているのです。

この会計基準が整備されると、例えば工場を建設する際、より高いパフォーマンスを出すために二酸化炭素の排出量の少ないエネルギーを使おう、といった行動が生まれてくることが期待されています。

このように、会計というパフォーマンスを評価するツールは、人の意思決定や行動を変える力があります。

ESG会計がもたらす効果

前述に関連して、更に身近な事例をご紹介します。
例えば、毎年その年の流行に合わせた洋服を見込生産で製造・販売するケースで考えてみます。

このようなビジネスモデルの場合、仕入れた洋服のすべてを適正な価格で販売することは非常に困難です。

そこで、売れない商品を少しでも減らし、それでも売れ残る場合に費用を適切に回収するためには、以下の三点を考慮する必要があります。

・需要予測の精度を高めることで少しでも売れ残るものを減らす。
・在庫の処分ルール(例えば、入荷から何年経過した在庫は○%価格を引き下げても処分する、など)を定めて、少しでも損失を減らす。
・それでも生じる在庫ロスは、期間費用として販売価格に上乗せすることで全顧客に応分に負担してもらう。

そして、これらの行動によってうまれた結果を正しく損益に反映する方法として、「棚卸資産の簿価切り下げ」という会計処理方法があります。

取扱商品の特性や過去実績を踏まえ、入荷後○○年経過した在庫は○○%簿価を減額するといったルールを設け、毎年棚卸資産の価値の減少を費用として認識する会計処理です。

こうして毎年発生する滞留在庫の価値の減少を期間費用として認識してパフォーマンスを正しく評価すれば、損失を減らすために少しでも滞留在庫を減らそうとする行動がうまれます。

また、このビジネスモデルを採用することによって避けられない在庫ロスの費用を正しく把握し販売価格に上乗せして回収することが可能となります。

会社のパフォーマンスを正しく評価することは、そこで働く方々の行動を正しく導いていくことにつながります。
従って、パフォーマンスを適切に評価することは非常に重要です。

一度、今現在の財務諸表が、貴社のパフォーマンスを適切に評価しているかどうか見直してみてはいかがでしょうか?

アタックスグループの業績管理は、単に採算(業績)を測定するためのものではありません。「経営の仕組み」と考えています。
会社の数字(会計)を経営に役立てたいとお考えの方は、こちらからお気軽にご相談ください。
 

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筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 中小企業診断士 伊原 和也
1996年 武蔵大学卒。大手ノンバンクを経てアタックス入社。中堅中小企業を中心に企業再生支援、M&A支援、中期経営計画策定支援および株式公開支援等を中心にプロジェクトマネージャーとして活躍中。
伊原和也の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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