コロナが5類に移行し、攻めに転じる会社が多くなってきました。
2023年の業況判断DIを需要分野別にみると、2022年に比べて、乗用車関連、食生活関連で上昇する見通しですが、一方、建設関連、設備投資関連、電機・電子関連、衣生活関連は低下する見通しで、業種によって状況が異なります。
業績達成のカギは”現場管理者が社長と同じ意識を持つこと”
上昇気流に乗っていたとしても、いつかどこかのタイミングで気流が下降してしまう可能性は十分にあります。
どのような状況であっても、会社は存続のために乗り切らねばならず、その意識は社長だけでなく、現場の管理者が同じ意識を持つ必要があります。
社長は経営の最終責任を負っており、経営数値に対しても当然注視していることでしょう。
また、現場の管理者の方々も、日常的に管理している数値があると思います。
しかし、その数値に対してどこまで責任を負う意識をもっているかが問われます。
その意識の有無によって、業績の達成可能性が決まると言っても過言ではないからです。
社長が頭ごなしに「責任を持て!」と言ったところで、なかなか伝わらないものです。
少なくとも納得できる責任数値を与えて、意識を高める必要があります。
「責任会計」とは
そこで登場するのが「責任会計」です。
「責任会計」と言うと、何か難しい事のように見えますが、「管理者が対象となる範囲の業績数値に責任を持つ」という考え方です。
これだけ聞いても訳が解らないと思いますので、責任会計を導入するための考え方とイメージを説明します。
「責任会計」を導入するための考え方とイメージ
(1)対象範囲を決める
ここで言う対象範囲は、あくまで「会計」を論点とするので、損益計算書と貸借対照表です。
これらの指標に基づき、各管理者がどこを責任の対象範囲とするのかを明確化します。
ここでの留意点はできるだけ“モレ”をなくすことです。
よくある例が以下のとおりです。
- 売上高は当たり前として、コストはどこまで対象範囲とすべきか。
材料費・外注費と言った変動費だけでなく、製造固定費の労務費・経費を考慮しているか? - 人件費・広告宣伝費・支払利息等の管理共通経費を考慮しているか?
- 売掛金の回収・買掛金の支払・在庫を考慮しているか?
言い出せばきりがないですが、要するに日常的に使用している各管理者の業績管理資料の総和が、全社の損益計算書になるかどうか?ならなければ、どこかにモレがあると言うことです。
少なくとも全部署を繋ぎ合わせて損益計算書が出来上がるか否かを検証し、モレを発見していただきたいです。
(2)目標数値を組み立てること
管理者は、目標数値の策定時期にあたって、憂鬱な気持ちになりながら立案していることと思います。
トップダウンで目標数値を決められていることもありますが、その目標水準が合理的かつ実現可能な水準であるかを改めて確認してください。
道筋を持たない目標数値は形骸化します。
「これをやれば行ける!」と言う確信を持てるか、そこまで考え抜いているかを再確認していただきたいです。
(3)管理者だけでなく、スタッフにも理解させること
管理部署毎に目標数値を表すにあたって、その目標に対するタスク(何を)、担当者(誰が)、スケジュール(いつまでに)を決めていますか?
数値目標を立案すること自体が目的でなく、達成するためにスタッフレベルまでブレークダウンできるかが勝負です。
特に下降気流にある業種の会社は、こういった一人一人の取組み如何で達成可能性が大きく変わります。
(4)実績測定・評価すること
目標数値の立案後、その実績測定を必要とします。
実績測定できない目標数値だと検証できないので、できるだけ実績測定できる目標数値を意識して下さい。
また、実績測定は、管理者で責任をもつことを前提としますが、どうしても不可抗力が良くも悪くも働きます。
良い時は過剰に評価し過ぎず、悪い時はフォローを心がけるべきです。
例えば、ヒットやホームランの失点は投手陣にとって管理可能な失点ですが、野手のエラーに関して言えば、管理不能な失点と言えます。
野球では、投手の能力を図る指標として、「自責点」という数字を算出します。
野球にも「責任会計」のノウハウが込められています。
最後に
最後に、既に「責任会計」を実践している企業もあると思います。
しかし、
(2)達成に向けての道筋は立っているか
(3)スタッフにも浸透しているか
(4)過剰過少に評価していないか
を見直してください。
また、その内容は、管理者だけでなく、スタッフにも共有し、一丸で取組める意思をもたせること、また目標数値と同じモノサシで測ることができる実績を集計し、良し悪しを的確に見極めることです。
会社経営には、現場管理者とスタッフがどこまで責任感をもって取り組めるかが勝負を決します。
「責任会計」は、無二の策ではないですが、強力な武器の一つになることは間違いありません。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 鷲見直樹
- 1995年同志社大学卒。大手鉄道会社を経て、株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングに入社。中堅中小企業に対する事業再生支援、中期経営計画支援、M&A支援、並びに経営顧問業務に従事。経営者だけでなく従業員を巻き込んだ対話を重視する実務に沿った指導に定評がある。「必ずやりきる」ことをモットーとしている。
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