日本国内で、コロナ禍で事業に悪影響があったと答える企業は約80%におよんでいます。
資金繰りに不安を感じ、存続のために日々悩んでおられる経営者の方も多いと思います。
資金繰りの打ち手として、多くの会社が取り組んでおられる方法は、恐らく「銀行借入金」と「コストカット」ではないでしょうか。
しかし、いずれも限界があります。銀行の融資には限度がありますし、コスト削減も無理に行うと反って事業基盤を損なうことになります。
そこで、今回は資金対策の行き詰まりに対する突破口を探す糸口について解説します。
緊急時の資金づくり手順
資金確保の手順は次のとおりです。
こう言うと「なんだ。そんなことか、当たり前だね。」との印象を持つかもしれませんが、基本的に資金対策にウルトラCはありません。
自社の現状を正確に把握し、考えるべき論点を網羅的に洗い出すことを原則とします。
無いものから導き出すことは出来ません。有るものから導きだすしか選択肢はないのです。
①貸借対照表から探す
まず、貸借対照表から手元資金を増やす糸口を探してみましょう。
手順は以下の3パターンです。
・負債を増やす
・純資産を増やす
貸借対照表は、常に「資産=負債+純資産」でバランスします。
この3つの方法で、現金預金の面積を増やします。
「資産の減らし方」「負債の増やし方」「純資産の増やし方」の参考例は次のとおりです。
▼資産の減らし方
1. 債権回収・回収期間の早期化 (例)売掛金の回収、受取手形の取扱減、貸付金回収
2. 不要不急の資産の売却 (例)在庫処分、有価証券・会員権売却
3. 契約の見直し (例)前払の平準化、保険見直し、敷金一部回収
▼負債の増やし方
1. 負債を増やす (例)支払サイトの引延し、支払手形の利用、借入金の調達
2. 負債を維持する (例)銀行返済の猶予
▼純資産の増やし方
1. 資本金を増やす (例)スポンサーからの増資
2. 利益剰余金を減らさない (例)配当中止
3. 利益剰余金を増やす (例)損益計算書の利益を増やす(下記②参照)
②損益計算書から探す
次に、損益計算書から手元資金を増やす糸口を探してみましょう。
手順は以下の2パターンです。
・費用を減らす
損益計算書は、常に「費用+利益=収益」で表されます。
今回は、あくまで緊急対策としての増収策・コスト削減策の話です。よって、ここでもウルトラCはなく、有るものから発掘するしかないという視点です。
その意味で発掘する糸口としては、以下の例を挙げることが出来ます。
▼収益の増やし方
・既存事業以外で収入を得る (例)補助金の収受
▼費用の減らし方
・削減可能コストの網羅的に洗い出す (例)聖域コストの削減、赤字事業からの撤退
上記のうち、特にコスト削減は難しいと感じると思います。しかし、緊急時を乗り越えるには、今までの当たり前を見直す必要があります。
そのような切り込んだ話をするために、日頃から社内におけるコミュニケーションが重要です。
また、全社で俯瞰して見るだけでなく、事業別・部門別にブレイクダウンしながら深堀りすることで、より糸口を掴みやすくなります。
全社から事業別や部門別に分けて精査すると、違った景色が見えます。もしかすると、赤字の事業が見つかるかもしれません。
いずれにせよ、鳥の目・虫の目に視点を変えることで、新たな資金づくりの糸口を掴むことができます。
③メリハリをつけて実行する
最後に、あぶり出した資金づくりの糸口をもって何から手を付けるべきかを検討しますが、それは重要性×緊急性の視点に分けて決定します。
考え方のイメージは次のとおりです。
糸口を並列で見るのでなく、メリハリをつけます。
その手順としては、あぶり出した項目を下表で列挙した上で、その項目毎に〇×をつけ、上表で言う「優先的に実行」の部分を探します。
会社も人生も、長くやっていれば必ず厳しい局面に立たされます。今は苦しい局面ですが、反面、現状を改めて見直し、軌道修正する機会と考えることも出来ます。
要するに「断捨離」です。
断捨離は、往々にしてやらざるを得ない何らかの不可抗力を必要とするものです。
厳しい局面に対してふさぎ込んでいるのではなく、出来る事から一歩ずつ前進しましょう。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 鷲見直樹
- 1995年同志社大学卒。大手鉄道会社を経て、株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングに入社。中堅中小企業に対する事業再生支援、中期経営計画支援、M&A支援、並びに経営顧問業務に従事。経営者だけでなく従業員を巻き込んだ対話を重視する実務に沿った指導に定評がある。「必ずやりきる」ことをモットーとしている。
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