予算管理の正しいやり方

会計

期初に1年間の月次予算を立て、毎月予算実績差異を分析・報告

上記を実施している会社は多いと思います。

ただし、それが形式的になっており、経営管理ツールとして機能していない会社も少なくないのではないでしょうか。

今回は、筆者が実際のコンサル現場においてよく遭遇する問題点を踏まえて、予算管理を経営管理ツールとして機能させるためのポイントを解説します。

予算管理を機能させるポイント

予算管理を機能させるポイントは、以下の3点です。

1.中長期経営計画に基づき、単年度の必要な利益を明確にする
2.蓋然性の高さと頑張れば達成できると思える予算を策定する
3.予算を月次レベルに落とし込み、毎月その進捗をチェックする

以下、これらのポイントについて説明していきます。

中長期経営計画に基づき、単年度の必要な利益を明確にする

この目的には、中長期的な経営目標を達成するという視点と従業員に能力を最大限に発揮させるという2つの視点があります。

(1)中長期的な経営目標を達成するという視点

経営における中長期的な目標(例えば、〇〇年後に借入金をいくら減らす、○〇年後にいくらの設備投資資金を確保する等)を達成するためにはどの程度の利益を出さなければいけないのかという1年間のゴールを明確にすることで、中長期的な目標の実現性を高められます。

(2)従業員に能力を最大限に発揮させるという視点

例えば長距離走をする場合、ゴールが明確になっておらずただ走れと言われただけだとしたら自分の持っている力を最大限発揮できるでしょうか?

来期はいくらの利益を上げなければならないというゴールを明確にすることで、従業員にその目標を達成するまでの努力を動機づけることができます。

その際に重要なことは、従業員が頑張れば手の届く絶妙な範囲の目標を設定することです。

簡単な目標であれば従業員の持っている能力を十分に引き出せません。一方、明らかに達成が不可能と従業員が思う目標では予算統制が機能しません。

蓋然性の高さと頑張れば達成できると思える予算を策定する

予算策定において重要なことは、蓋然性の高さと従業員に頑張れば達成できると思わせることの2点です。

(1)蓋然性の高さ

予算が実績と乖離をし、それをカバーすることが不可能になっていくと、従業員は予算を死守しなければいけないという意識が薄れていき、予算による統制は機能しなくなります。

そのため、予算と実績の乖離が大きくならないある程度蓋然性の高い予算を策定する必要があります。

(2)従業員が頑張れば達成できると思える予算

期初からこの予算は達成できないと従業員が思っていては、予算統制は機能しません。

従業員から出てきた積み上げ予算が会社の必要利益に達していない際に「あと○○円、なんとかしろ!」という指示のみを出しているケースを見かけます。

しかし、それでは予算が形骸化してしまいます。そう言う場合は、具体的な方法論を指示して売上予算を上げるか経費予算を下げるかすることにより、従業員に頑張れば達成できると思わせる予算とすることが重要です。

予算を月次レベルに落とし込み、毎月その進捗をチェックする

現実は予算どおりにいかないことが多々起こります。そのため、年度予算を月次単位に落とし込み、毎月進捗をチェックすることが重要です。

そして、その差異発生要因を明確にし、対応策を早めに打っていくことが必要になります。

これにより、決算数値が1年経過して初めてわかる(これを「なりゆき経営」と呼んでいます)のではなく、期初に立てた想定決算数値にもっていく経営(これを「計画経営」と呼んでいます)に転換することが可能になります。
 

中期経営計画策定

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 中小企業診断士 伊原 和也
1996年 武蔵大学卒。大手ノンバンクを経てアタックス入社。中堅中小企業を中心に企業再生支援、M&A支援、中期経営計画策定支援および株式公開支援等を中心にプロジェクトマネージャーとして活躍中。
伊原和也の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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