経営の成功確率を高める「予算管理制度」とは?

会計

予算管理制度とは

管理会計の代表的な制度として、予算管理制度があります。

予算管理制度とは、予算を達成するために、期初の計画と期末の実績を比較・分析し、改善などの適切な対応をしていくことです。

自社の将来の経営をより良くしていくことを目的として、多くの中堅中小企業が導入しています。

この予算管理制度の歴史は古く、1920年世界的に有名なコンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーの創業者であるマッキンゼー氏がシカゴ大学で「管理会計」の講座をスタートしたのが始まりと言われており、今年は100年目にあたります。

100年という長い歴史があるのにも関わらず、中堅中小企業に導入されている「予算管理制度」は、経営者から見て十分に満足できるレベルになっていない場合が多いようです。

その理由は、主に、以下の3点にあります。

理由① 制度導入の目的が経営者・経営幹部間で不統一である

長年、予算管理制度を運用している会社でも、「我が社には、なぜ予算が必要なのか?」といった問いかけに対して、経営者・経営幹部全員が同じ回答をするのを聞いたことはありません。

特に、経営幹部においては、「今までやってきたから」「社長が作れというから」という回答が多く聞かれます。

残念ながら、儀式として策定された予算によって将来の経営が継続的によくなることは困難であると考えます。

また、予算策定において、経営者は「自社のポテンシャルを最大限に発揮するためにできるだけ高い目標としたい」と考えるのに対し、部門長は「自部門の評価を最大限にするため、できるだけ達成可能な低い目標としたい」と考える、というように同じ考えで予算策定に向き合っていないことが多いです。

したがって、予算管理の目的を明確にし、予算に関わる全員を同じ目線にする必要があります。

理由② 予算策定の方法が雑である

予算は「作って終わり」ではなく、実績との差異を分析し、「この結果を受けて次に何をするのか?」という改善活動が最も重要となります。

その改善活動を行うにあたって、例えば、「売上高を前年度よりも10%成長させる」という予算のみでは、効果的な活動は行えません。

全ての商品・得意先が一律で10%成長することは想定しづらく、前年よりも下がるところもあれば、10%超の成長をするところもあり、結果として10%成長ということになるのが一般的だからです。

従って、商品・得意先などの切り口で、詳細に予算を策定する必要があります。

また、売上高は「単価×数量」で計算することができ、「単価を増やす戦略」と「数量を増やす戦略」は両立することが困難な場合が多く、これも分類して策定する必要があります。

したがって、分析可能な詳細かつ多面的なレベルで予算策定を行う必要があります。

理由③ 資金予算が策定されていない

多くの企業では、利益を中心とした損益予算は策定されていますが、特に、自己資本が十分ではなく、主に借入金で資金調達をしている企業においては、返済資金を確保するための資金予算も必要となります。

よくある経営者の要望として、「経営者感覚を持った経営幹部を育成したい」ということがあります。

経営者感覚で重要なのは、利益よりも資金であり、ほとんどの中堅中小企業において、お金で本当に苦労する人は、経営者のみです。

したがって、損益予算のみならず資金予算を作ることで、「販売代金の回収を早めることはできないのか?」「設備投資金額をもう少し減らすことはできないのか?」等の経営全般の目標を作ることが可能となります。

また、資金予算の策定に経営幹部が関与することで、彼らの経営者感覚も向上することが可能となります。

予算管理制度の取り組み方

翌期末のあるべき姿を明確にした予算数値を毎年確実に達成することができる会社が倒産の危機に陥ることはまず考えられません。

従って、長期的に繁栄する企業において、予算管理制度は極めて有用なツールと言えます。

しかしながら、この予算管理制度は、一旦構築したら終わりではなく、時代と共に変化させていくべきものです。常により良い状態にしておくことに留意すべきです。

したがって、予算管理制度は、「より良い予算をつくること」と「予算を達成すること」の2つの側面から、毎年レベルアップすることを前提に、長期的な視点で取り組む必要があります。
 

管理会計導入

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役 錦見 直樹
1987年 富山大学卒。月次決算制度を中心とした業績管理制度の構築や経理に関する業務改善指導を中心としたコンサルティング業務に従事。グループ7社を有す中小企業の経理・経営企画部門出向中に培った豊富な経理実務経験を武器に、経営者、経理責任者の参謀役として活躍中。
錦見直樹の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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