「会社を辞めた若手社員の労働時間、2割超が週60時間以上」
21~33歳の若手社員が会社を辞める直前、週平均で60時間以上働いていた人は23.8%に上ることが、労働政策研究・研修機構の調査で分かった、という記事が5月に報道されました。
長時間労働が離職につながる、非常に深刻な問題であることは間違いありません。しかし、実際の営業現場にいるものとしては、営業が達成すべき「あるべき姿」がないまま、業務時間の問題に取り組むことに強い違和感があります。
働き方改革時代の営業パーソンのあるべき姿
営業の「あるべき姿」は、経営目標から分解された成果「目標予算の達成」にあります。あらゆる外部環境の変化に対しても達成から逆算して能動的に活動し、目標予算を達成させなければなりません。 この「あるべき姿」が置き去りにされたままで「業務時間の削減」の議論が先行するために、多くの営業が「業務時間の削減」に対して本気に取り組まないのではないでしょうか。
「目標予算の達成」と「業務時間の削減」、二つの切り口に同時にアプローチするためには、営業活動を「どこにどれだけ時間を使うべきか」を具体化することをお勧めします。
「目標予算の達成」にむけて「どこでどれだけ時間を使う」のかを検討するためには、お客様の「潜在的なポテンシャル(今の売上だけでなく、これから拡大する余地)」を見極める必要があります。
しかし、実際の営業現場では、多くの営業パーソンが習慣的に与えられた商材を売り込むことに終始し、お客様の「潜在的なポテンシャル」をあまり真剣に考えていないことが少なくありません。
残念な営業パーソンがしがちなパターン
長年の現場経験から、営業パーソンがお客様の「潜在的なポテンシャル」を考えないのは大きく3つのこと(1.焦り、2.習慣、3.思い込み)が強く影響していると私は感じています。
1.焦り(目の前の商材ばかりを追ってしまっている状態)
お客様との関係構築や売り手のスタンス、あるいは会社としてお役にたてることを知っていただく前に、とにかく目の前のものを売ることに必死になっている状態です。 このように書くと経験の浅い新人営業パーソンだけのように思われるかもしれませんが、経験があっても商材ありきの姿勢の営業パーソンや営業組織は比較的陥りやすい状態です。
2.習慣(目の前の「見える」商機だけを拾う状態)
お客様の引き合いや要望など、具体化し「見える」状態になったものだけを扱っている状態です。これはお客様に対し能動的に攻める習慣がなく、下請けや特定顧客のみを対象とした待ちの姿勢で営業活動をしている組織に良く見られる状態です。
3.思い込み(自らの過去体験で商材・サービスの幅を狭めている状態)
自らの過去体験の範囲にない商材・サービスを自分自身が認知できなくなっている状態です。お客様のお役にたつか否か、という次元ではなく「ウチにそんなサービス、あったっけ?」という状態です。
上記1.2.3.はいずれもお客様の「潜在的なポテンシャル」ではなく、目先の売れるものから積み上げる形で営業活動されていることがお分かりになるかと思います。
目先の売れることに集中し、そこに時間を充てている営業パーソンと話しをしていると、
「俺は売上のために、こんなに頑張っている」
「今以上の時間の使い方などない」
「だから、人を増やすしかないのです」
などと、時間の使い方の話が、なぜか人員不足の話にすり替わることも・・・。
いかに少ない投資で最大のリターンを得られるか四苦八苦されている経営者の皆さんにとって、営業パーソンのこのような反応はとても残念なのではないでしょうか。
限られた人員、限られた時間の中で、「目標予算の達成」にむけ「どこでどれだけ時間を使う」かを、焦り、習慣、思い込みを排してお客様の「潜在的なポテンシャル」を考えたうえで検討されてみることも営業パーソンの「働き方改革」につながりうるのではないでしょうか。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 取締役 桑原 賢一
- 1999年 同志社大学卒。大手化粧品メーカーにて、経営指導から現場販売員の指導育成に携わり、延べ100名以上のトップセールスの育成実績をもつ。アタックス参画後は、上場企業の営業戦略構築、小規模企業の営業組織に対しての直接指導、営業職の個別指導等にあたっている。コンサルティング支援における行動変革率は100%を誇る。
- 桑原賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。