営業3つの“あたりまえ”できてますか?~経営者が知らない営業の実態

営業

日々、営業組織の目標達成に向けた指導・教育をしている中で、経営陣が当然「やっているでしょ!」「できているでしょ!」と思っていることでも、実は現場の営業パーソンに足りていない部分を目にすることが多々あります。

もちろん製造や開発、技術部門でも同様のケースがあるかもしれませんが、今回は私の専門である「営業」にフォーカスしてお伝えいたします。

注意すべきは“あたりまえ”という思い込み

冒頭でも触れましたが、経営陣および営業部長が“それはあたりまえにやっているでしょ”ということが往々にして現場では実践されていません。

そのことに気がつけば改善の余地もありますが、残念ながら“あたりまえ”だと思っていることに気づくというのは簡単ではありません。

では、経営陣や営業部長が“あたりまえ”だと思っていて、現場で実践できていないこととは何なのか3つあげて解説いたします。

1.否決権者(決裁ルール)の確認
2.当社(当社のサービス)が選ばれる理由
3.営業活動の「目的」

1.否決権者(決裁ルール)の確認

まず1つ目は、「否決権」についてです。

SFA(Sales Force Automation/営業支援システム)を導入している企業では、営業プロセスのフェーズ管理において、BANT条件(※)がヒアリング出来ていることをフェーズアップの要件にすることが一般的です。

※BANT条件とは、ヒアリングの際に必要な4つの要素である、Budget(予算)・Authority(決裁権)・Needs(必要性)・Time frame(導入時期)の頭文字をとってできた言葉

もちろん営業に携わっている方であれば、絶対に知りたい情報ですね。

ここで押さえていただきたいポイントは、「Authority(決裁者)」の考え方です。

自社の商品・サービスをご購入いただくには、この「決裁者」「キーマン」と言われる方々と繋がり、課題をヒアリングしてご提案する。

これが、営業パーソンがすべきことですが、「否決権」を持っている人は誰なのか?を確認することが意外と抜けがちなのです。

なぜ、営業パーソンが「否決権者」の確認を忘れてしまうかというと、決裁者=否決権者だという思い込みがあるからです。

一方、経営陣・営業部長からすると“原則、決裁権は持っている。でも、他の方の意見を聞いて判断することもある。”というご経験をお持ちではないでしょうか。

つまり、必ずしも決裁者=否決権者にはならないことを経験として分かってしまっているのです。

人は過去の経験から分かっていることは“あたりまえ”だと感じてしまう傾向にあるため、営業パーソンが「否決権者を把握する」ことに意識が向いていないこと・ヒアリングができていないことに気づかないものなのです。

※ちなみに、実際に私が携わっている企業様では、案件によって「役員会の多数決で決議する」という会社もあります。

2.当社(当社のサービス)が選ばれる理由

2つ目は「当社が選ばれる理由」を営業が語れないということです。

弊社アタックス・セールス・アソシエイツは「予材管理」という営業マネジメント手法を用いてコンサルティング支援を行っていますが、必ず言語化していただくことは「なぜ、当社(当社のサービス)が選ばれるのか?」です。

このことを営業パーソンに伺うと、「昨年もご購入いただいているから」「これまでの取引実績」「お客様が~~のサービスを要望している」等の理由を答えていただくのですが、経営者にお伺いすると、「当社商品・サービスをご利用いただくことで、お客様の○○の課題を解決できるだけはなく、~~の面でお役立ちできるから」という答えが返ってきます。

前者は、「過去の延長」や「要望への回答」により期待に応えられると思い込んでいることに対して、後者は、「お客様が感じている我が社の価値」を明確に認識しています。

実は、この認識の違いさえも自覚していないのが、実際の営業現場です。

SFAや自前の営業管理資料を活用していても、「なぜこのお客様に提案するの?」という“当社がお客様を選ぶ理由”は記載させたとしても「お客様から、なぜ当社を選んでいただけるの?」という“お客様から選ばれる理由”を記載する項目自体がないからです。

商品・サービスに独自性があれば商品力で受注をいただけるかもしれませんが、コモディティ化している商品・サービスでは営業が価値を訴求できるか否かで、お客様からの信頼・共感に大きな差がでます。

適切に価値を訴求しようとしているのか、それともご要望に回答すれば100点と考えてしまっているのかは、ぜひチェックしてみましょう。

3.営業活動の「目的」

最後は、実際の営業活動に着目していきます。

営業が受注を獲得するためには、ファーストアプローチから繰り返しお客様との接触を通じて関係構築を図っていくことが多いのではないでしょうか。

ここで押さえておきたいことは、1回1回のアプローチにおける「目的」についてです。

現場では“何を目的に訪問するの?”“このアポイントの目的は?”というやり取りをされている企業様は見受けられるのですが、皆さんの会社でこの質問を投げたときに営業パーソンからはどのような返答がありますか?

おそらく“関係構築のためです”“商品説明に行きます”“課題をヒアリングするためです”などではないでしょうか?

営業が大切にしなければいけないことは、これらのアプローチを通じてお客様に「どう思っていただきたいのか?」「どのような行動を起こしていただきたいのか?」を描いた上でアプローチをすることです。

つまり、営業活動におけるアプローチの「目的」は、何かしらの「リターン」であるべきです。

初回面談であれば「名前を覚えてもらう」「事業内容を知ってもらう」で構いませんが、そのための準備をしてアプローチしているのかはご確認ください。

まとめ

経営者が各営業担当のお客様一社一社への対応や日々の業務に目を光らせることは、あまり現実的ではありませんし健全ではありません。

だからこそ、この記事をお読みいただいた“今”のタイミングで下記3点については確認をしてみてください(貴社が狙っている重要案件のみで構いません)。

1.否決権者(決裁ルール)は抑えられているのか?
2.当社(当社のサービス)を選んでもらえる理由は答えられるか?
3.営業活動の「目的」は、得るべきリターンを想定できているのか?

時流解説をご覧いただいている皆さまも聞きなじみのある「予材管理」は、2倍の材料を予め定めることに目が向きがちですが、根底は営業の思考と行動の習慣を仕組みとして見える化しているものです。

自社の営業組織に目を向けていただき、経営者・営業部長の皆さまが“あたりまえ”だと思っていたことができていないようであれば、ぜひこの機会に“あたりまえ”を言語化してみてはいかがでしょうか。

もちろんお問合せいただければ、無料で言語化や思考の整理のお手伝いもできますので、お気軽にご相談くださいませ

(参考)どのような会社に予材管理は効果的か?

筆者紹介

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ コンサルタント 小嶋 武志
1986年生まれ 福井県出身。前職では大手人材派遣会社の営業部隊に所属。マネジャーとして、支店の営業利益を2倍とし、西日本エリア1位を獲得。個人の営業活動では、年間4,000件の新規訪問活動を展開マッチング精度とフォローアップにも定評があり、リピートオーダーも多数獲得。アタックスでは、「全ては信頼関係から」をモットーに経営者や担当者との関係性を構築し、納得して選んでいただけるコンサルタントとしてクライアントの支援に従事している。
小嶋武志の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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