値上げ交渉を乗り切った営業組織が次にすべきこと

営業

帝国データバンクは今年8月、自社の商品・サービスのコスト上昇に対して、『多少なりとも価格転嫁ができている』企業は7割を超え、7割を下回っていた前回調査(2022年12月に実施)から5.3ポイント改善し、価格上昇に対する各企業の認知や理解が進んでいることを発表しました。

多くの営業組織に関わる私の肌感覚でも、値上げ交渉をあらゆる営業活動に優先して行わなければならない状況は、春先をピークに徐々に落ち着いてきていると感じています。

値上げに対する認知・理解は、営業の努力の集積

各企業の認知や理解は、世の空気に乗っただけで作られるものではありません。

紛れもなく、営業一人一人の粘り強い交渉、その集積ではないでしょうか。

結果、今期の業績、特に利益が大きく改善した、という話も良く伺います。

これまで提供してきた価値を改めて示し、お客様に認められ利益改善、業績も良い形で今期は終われそう、めでたしめでたし…では、当然終わりませんよね。

では来期、そしてその先、更に業績を上げていくための手を皆さんの営業組織は打てていますか。

値上げ交渉を乗り切った後にどう動くか

目標達成しない営業組織の場合

とかく「値上げ交渉」というものは、目標とする金額と期限、そして対象も具体化しやすく、交渉の論拠も十分に準備して臨むものです。

実は営業組織にとって、その「わかりやすさ」から営業パーソンは動きやすく、営業マネージャーにとっても動かしやすい。

値上げ交渉は、誰も喜んではやりませんが、極めて追いかけやすく、動き出せばある種の熱狂をともなう組織として盛り上がりやすい取り組みなのです。

このような短期的な成果を求める取り組みは、総じてそれが終わった後、組織は息切れします。

そして、蓋を開ければ、何だか数字も良さそうなので「やれやれ、何とかやり切ったよね」と一息ついてしまいます。

これが目標達成しない営業組織で良く見られる光景です。

目標達成する営業組織の場合

では、目標達成する営業組織は何が違うのか。

値上げ交渉を乗り切った営業組織は、次にどのような手を打つのでしょう。

皆さんの会社でもそうだと思いますが、多くの企業でこの値上げ交渉の間、新たに名刺交換する機会が増えたのではないでしょうか。

しかも、その名刺は普段の営業活動では、あまり接点の持てなかった立場の「上の方」であることが少なくないと思います。

「なるほど、(値上げの)ご用件はわかりましたが、次回『上の者』も同席させますので、改めてそこで、この上昇分の根拠をご説明願えないでしょうか」

この台詞が飛び出す背景は、先方担当者それぞれの思惑があるものですが、理由はどうであれ、値上げ交渉の最前線、営業の現場ではこの期間、散々飛び交った台詞です。

お客様も上司が出てくるとなれば、こちらも相応の準備、場合によってはこちらも上司に同行をお願いし、話をまとめようと奮闘します。

「ラインコントロール」とは

ここまでは、どの企業もやっています。しかし、目標達成する営業組織は、ここからが違います。

皆さんは「ラインコントロール」という手法をご存じでしょうか。

企業において、ほとんどの場合、窓口担当者には決裁権限がなく、決裁権限を有するのは、職責上位者です。

窓口担当→課長→部長といった線形の指揮命令系統(ライン)を把握し、対象組織のラインに能動的に働きかけるコミュニケーションを「ラインコントロール」と言い、当社が提唱する営業マネジメント手法「予材管理」において最も重要な要素のひとつです。

相手の引き合いに対応するだけで、相手との関係を能動的に作り上げようとしない受け身の営業組織や提案の良し悪しだけに拘り、継続的なやり取りの中でお客様の意思決定の流れを把握しようとしない営業組織は線(ライン)ではなく、点(ポイント)でしかお客様と接点をつくらないため、組織ぐるみで関係を構築する、という思考がありません。

目標達成する営業組織は、会社のネームバリューや商品力ではなく、この「ラインコントロール」を徹底する、強い組織営業力を持っています。

最後に

値上げ交渉は、お客様に承諾いただくことがゴールではなくお客様との新たな組織ぐるみの関係構築をはじめるスタート。

目標達成する営業組織は、値上げ交渉の結果得られた「上の方」との関係構築に向けまさに今、走り回っています。

皆さんの営業は、次にやるべきことを理解していますか。

是非この機会に、値上げ交渉の次にやるべきことについて組織で話し合っていただければと思います。

筆者紹介

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 取締役副社長 桑原 賢一
1999年 同志社大学卒。大手化粧品メーカーにて、経営指導から現場販売員の指導育成に携わり、延べ100名以上のトップセールスの育成実績をもつ。アタックス参画後は、上場企業の営業戦略構築、小規模企業の営業組織に対しての直接指導、営業職の個別指導等にあたっている。コンサルティング支援における行動変革率は100%を誇る。
桑原賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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