営業パーソンに対する上司の評価
私が所属するアタックス・セールス・アソシエイツは、「絶対達成する会社を一社でも増やす」を会社の理念として掲げ、営業組織の売上や利益目標を達成させるために、現場に入り指導しています。
支援先にお伺いすると、現場の営業パーソンは目標達成を目指し、お客様への定期接触・受注獲得に向けた見積・提案に加え価格交渉や納期交渉で日々忙しく活動しています。
営業部長と話をしても、「皆よく頑張っていますよ。」と営業パーソンの活動を評価しています。
しかしながら、同時に必ずと言っていいほど聞く言葉が「まだまだ物足りないですけどね。」という一言です。
「頑張っていない」とは思っていないが、「物足りなさ」を感じている。
私は、この「物足りなさ」があることは良いことだと思っています。
経営者や営業管理職が感じる「物足りない」部分は、営業現場に伸びしろがあるということだからです。
注意すべき「物足りなさ」とは?
気を付けなければならないのは、経営者や管理職がこの物足りなさを「なんとなく」感じている場合です。
明確に足りない部分を把握しており、今の状態に物足りなさを感じているのあれば、営業現場に適切な指示・指導をすることができます。
しかし「なんとなく感じる物足りなさ」は正体を明らかにしなければなりません。
この「なんか足りない」状態で部下に接してしまうと、部下は何を・どうすれば良いか分からなくなってしまいます。
この「なんとなく」を無くすために、強い営業組織が必ずやっている3つの共通点をお伝えします。
質問1:当社は、どこを目指しているのか?
「なんか物足りない」「なんとなく違う気がする」を解消していくには、その中身を1つ1つ言語化し、営業現場と認識を揃えていかなければなりません。
そこで、最初に揃えておくべきことは、「当社はどこを目指しているのか?」の認識です。
毎年の売上や利益目標を達成させるための活動は、どこを目指した活動なのか・何のための活動なのかを現場の営業パーソンは分かっているでしょうか?
企業経営をする上で、売上や利益目標は企業を存続させるための指標にすぎません。
まずもって、
- そもそも当社は社会に対してどのような存在価値があるのか?
- なにで世の中に貢献しようとしているのか?
をフロントに立つ営業パーソンが分かっていないと、お客様に「当社」を分かってもらうことはできません。
期首や年始に社長からそうした理念やビジョンが発信されている会社も多数ありますが、営業現場で支援に入り一人一人に尋ねてみると、意外と現場の社員は語れないものです。
つまり、日々の営業活動が「与えられたから」「言われたから」やっているという状態になってしまっているのです。
組織戦で勝ち抜いていくために、まずは営業パーソン一人一人が「当社」を語れるまで、「どこを目指しているのか?」を繰り返し伝えていきましょう。
企業経営の目的が明確に落とし込まれているとマネジメントをする上で、動機づけもしやすくなります。
質問2:当社は、どこで闘っていくのか?
次に、2つ目は何かというと「どこで闘っていくのか?」の認識を揃えることです。
言い換えると、どの市場・どの顧客と付き合っていくのか(狙っていくのか)という対象先が定められており、かつ、営業パーソンが分かっていること。
現在お付き合いしているお客様の対応はもちろん大切なことですが、忙しくしている営業パーソンは、目先の活動に追われています。
そのような状態で、真に狙うべき対象先が分かっているでしょうか?
そして、その対象先に時間を費やせているでしょうか?
過去の延長線で今までのお客様と対峙している営業組織で意外とズレやすいのは、この「狙うべき先」です。
現場支援の際に感じることは、日々の活動で余裕がなく、個人任せになってしまっている企業が本当に多いということです。
経営者・管理職の皆さんが、営業パーソンの活動面で「物足りなさ」を感じる1つには、自分たちが考えている「狙うべき対象先に向いて活動していない」ことから生じているのかもしれません。
この狙うべき対象先を部員に考えさせることもトレーニングとしては大切ですが、組織営業が出来ている企業は、例外なく基準を設けて狙うべき対象先を定めています。
質問3:当社は、何を解決しているのか?
最後3つ目は、「お客様の何を解決しているのか?」の認識合わせです。
目の前のお客様に対峙していると、求められる製品・サービスを提供することだけに焦点が合いやすくなります。
特にこの傾向は引合いの多い会社で顕著に現れます。
支援先の営業パーソンと話をしても、自社製品・サービスの仕様や機能・効果については説明ができますが、お客様は何がしたくてこの商材が欲しいのか?が説明できません。
営業会議の場でも、「なんでこっちの商材は提案しないの?」「このグレードではダメなの?」という話をよく耳にしますが、このやり取りは提供価値が“モノ”なのか、“問題解決”なのかその視点の違いから生じているのです。
長年の習慣により、現場の営業パーソンは製品やサービスに焦点があたってしまっているのですが、本当に訴求していくべきことは、自社の製品・サービスを用いてお客様(消費者・使用者)がどのような価値を得られるか(顧客への提供価値)です。
商品力で勝てる局面であれば機能面の説明でも通用しますが、本当に強い営業組織では、全員が「お客様が得たい価値とは何か?」を追求し、訴求しています。
営業パーソンの活動内容において「なんか物足りない」を感じたときには、我々は「お客様の何に貢献しているのか?」の認識がズレていないか、組織内で確認することをお勧めします。
まとめ
自社の営業組織に対して「何か物足りないんだよね!」と感じている経営者や営業部長の皆さま。
「ココが足りていない」が分かっていれば、少なくとも改善に着手はしているものです。
厄介なのは「なんとなく」感じており、言葉に出来ない状態でいることです。
「なんとなく物足りない」を感じ言語化できていないときは、「目的の認識が揃っているか」「対象先の認識が揃っているか」「顧客提供価値の認識が揃っているか」から確認していきましょう。
この3つが浸透している営業組織は営業パーソン一人一人がこれらの問いを語ることができます。
その上で、マネジメントルールに沿った活動をすることで、成果につながるのです。
営業組織の「物足りなさ」を解消するためにぜひ、参考にしてください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・セールス・アソシエイツコンサルタント 小嶋 武志
- 1986年生まれ 福井県出身。前職では大手人材派遣会社の営業部隊に所属。マネジャーとして、支店の営業利益を2倍とし、西日本エリア1位を獲得。個人の営業活動では、年間4,000件の新規訪問活動を展開マッチング精度とフォローアップにも定評があり、リピートオーダーも多数獲得。アタックスでは、「全ては信頼関係から」をモットーに経営者や担当者との関係性を構築し、納得して選んでいただけるコンサルタントとしてクライアントの支援に従事している。
- 小嶋武志の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。